免疫力を高めるには、「自律神経」と「腸内環境」を整えよう

免疫力を高めるには、「自律神経」と「腸内環境」を整えよう 免疫力を高めるには、「自律神経」と「腸内環境」を整えよう

ウイルスや細菌などの病原体から体を守る“免疫”の働きは、私たちに備わった自然の防御システム。その免疫力を高めるには、最大の免疫器官といわれる腸の環境をよくすることが大切です。併せて、腸の働きをコントロールしている自律神経を整えることもポイントとなります。「自律神経」と「腸内環境」の両面からアプローチして、免疫力を高め病気に負けない体をつくりましょう。

<監修>
小林弘幸先生
順天堂大学医学部・大学院 医学研究科教授

小林弘幸先生 順天堂大学医学部・大学院 医学研究科教授 小林弘幸先生 順天堂大学医学部・大学院 医学研究科教授

こばやし・ひろゆき 1960年埼玉県生まれ。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者としてプロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。また、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト"でもある。著書に「腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割」(プレジデント社)、「病気知らずの医者がやっている 免疫力を高める最高の方法」(宝島社)、「医者が考案した『長生きみそ汁』」(アスコム)など多数。

(1)免疫力アップに欠かせない「自律神経」とは?

●腸と自律神経の深い関係

腸と自律神経の深い関係 腸と自律神経の深い関係

緊張や不安など精神的ストレスがかかった時に、お腹が痛くなったり便秘になったりしたことはありませんか?そんなお腹の不調は、腸と自律神経が深い関係にあるために起こると考えられています。

脳と腸は自律神経やホルモンを介してお互いに情報交換をしています。そのため脳が緊張や不安などのストレスを受けると、その情報が腸に伝えられ、結果的に腹痛や下痢、便秘などを引き起こすことになります。

逆に、腸内環境が悪化すると、その情報が脳に伝わって自律神経が乱れ、様々な心身の不調が起こりやすくなります。ですので、免疫力を高めるには、自律神経を整えることも大切なのです。

このように腸は脳からの一方的な指令で動いているわけではなく、双方向的に影響を及ぼし合っています。こうした脳と腸の関係は「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼ばれています。

●活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」

活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」 活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」

自律神経は意思とは関係なく血管や内臓の働きをコントロールする神経です。自律神経には、昼間や緊張・ストレスを感じた時に働く「交感神経」と、夜間や睡眠中、リラックスした時に働く「副交感神経」の2つがあります。

交感神経…心身を活発に導く緊張・興奮の神経。交感神経が優位になると、血管が収縮、血圧が上昇、心拍数が増加、筋肉が緊張、腸のぜん動運動が抑制、発汗が促進される。

副交感神経…心身を休息に導くリラックスの神経。副交感神経が優位になると、血管が拡張、血圧が下降、心拍数が減少、筋肉が弛緩、腸のぜん動運動が促進、発汗が抑制される。

この2つの神経は、シーソーのように交互に優位になることで、心身のバランスを保っています。

●自律神経が整うと腸の働きが整う

自律神経が整うと腸の働きが整う 自律神経が整うと腸の働きが整う

腸は収縮・弛緩を繰り返すことで消化した食べ物を移動させ、体外へ排出します。この腸の収縮・弛緩運動を「ぜん動運動」と呼んでいます。

ぜん動運動は副交感神経が優位の時に起きるので、緊張やストレスが強い交感神経が優位の時は腸が動きにくく、お腹の不調が起こりやすくなります。

一方、交感神経と副交感神経のバランスがうまくとれていると、腸の動きが安定し、腸本来の働きができるようになります。腸の健康を保つには自律神経を整えることが大切といわれるのはこのためです。

(2)自律神経と腸、両面のアプローチで免疫力を高めよう!

自律神経と腸、両面のアプローチで免疫力を高めよう! 自律神経と腸、両面のアプローチで免疫力を高めよう!

●腸の健康と免疫力
免疫システムにかかわる免疫細胞の約7割は腸に生息し、腸内で細菌やウイルスなどの病原体と戦っています。免疫細胞はさらに血流にのって全身を巡り、いたるところで体を守るために戦うようになります。これが、腸が人体の最大の免疫器官といわれるゆえんです。

このため腸の健康は、免疫力にダイレクトに影響します。腸が健康なら高い免疫力を維持することができ、腸の健康が損なわれてしまうと、免疫力が低下し、健康に様々な悪影響が生じることになります。免疫力を高めるには、腸の健康を保つこと、腸が健康であることが重要です。


●免疫力を左右する腸内細菌とは
腸の健康を左右するカギとして、近年、注目されるようになったのが「腸内細菌」です。腸内細菌は文字通り腸にすむ細菌のことで、私たちの腸にはおよそ100兆個、1000種類以上の細菌が存在しています。これらの腸内細菌は腸壁の内側にグループごとに群れになって生息し、その様子が花畑に似ていることから「腸内フローラ」と呼ばれています。

免疫力を左右する腸内細菌とは 免疫力を左右する腸内細菌とは

腸内細菌はその働きにより、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の大きく3種類に分けられます。

善玉菌…腸のぜん動運動を促して消化・吸収をサポートしたり、免疫細胞を活性化させて免疫力を高めたりする。

悪玉菌…増えると腸内環境を悪化させたり、有害物質をつくり出したりして、病気や老化の原因となる。

日和見菌…善玉菌、悪玉菌のうち、優勢なほうに加勢する。

一見、体に有用な働きをするのが善玉菌、有害な働きをするのが悪玉菌、そのどちらにもなり得るのが日和見菌ですが、悪玉菌もビタミン合成などにかかわり、健康維持のために一定の役割をもっています。

大切なのはバランスで、腸内環境をよい状態に保つための理想的なバランスは、善玉菌:日和見菌:悪玉菌=2:7:1といわれています。

善玉菌、悪玉菌、日和見菌。腸内環境をよい状態に保つための理想的なバランス 善玉菌、悪玉菌、日和見菌。腸内環境をよい状態に保つための理想的なバランス

例えば便秘や下痢になると、このバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になります。すると日和見菌がこれに加勢して腸内環境がさらに悪化し、免疫力が低下してしまうことに。高い免疫力を維持するためには、腸内環境を善玉菌優勢の状態にすることがポイントです。


●自律神経の乱れと免疫力低下の悪循環を断ち切ろう
最初に述べたように、腸は自律神経と深い関係があります。いくら頑張って腸内環境を整えようとしても、ストレスなどで自律神経が乱れれば、ぜん動運動は滞り、腸と全身の血流も低下し、腸内環境が悪化して、結果的に免疫力の低下を招いてしまうことに。

また、免疫力が低下すれば、様々な体調不良や病気が現れ、それをきっかけにして自律神経がさらに乱れてしまうことになります。

この悪循環を断ち切って免疫力を高めるためには、自律神経と腸内環境の両方を改善していくことが大切なのです。

(3)今日から実践!免疫力を高める毎日のルーティーン

今日から実践!免疫力を高める毎日のルーティーン 今日から実践!免疫力を高める毎日のルーティーン

免疫力を高めるために、自律神経と腸内環境が重要であることをお伝えしてきました。では、実際にどのようにすればよいのでしょうか?
自律神経と腸内環境を整える、毎日実践したいルーティーンをご紹介します。

ストレスや夜更かしが多い現代人は、交感神経が優位になりがち。日頃の生活の中で副交感神経を優位にしていくことがポイントです。

食事では、腸の健康に役立つ食品を取り入れること。食べ方や食べるタイミングも大事です。
ルーティーンを実践して、免疫力を高めていきましょう。


①毎朝決まった時間に起きて、朝日を浴びる
私たちの体には1日の時間の流れに合わせて新陳代謝やホルモン分泌などを行う“体内時計”の機能が備わっています。この機能をしっかり働かせるために、規則正しい生活を心がけましょう。朝日を浴びることで副交感神経から交感神経への切り替わりもスムーズになり、自律神経が整いやすくなります。

②朝はまずコップ1杯の水を飲む

朝はまずコップ1杯の水を飲む 朝はまずコップ1杯の水を飲む

緊張している時に水を飲むとホッとするように、水を飲むという行為には胃腸の神経を適度に刺激して、副交感神経の働きを高める作用があります。同時に腸の働きが活発になり、スムーズな排便にもつながります。冷水でもかまいませんが、体を冷やしたくない人は常温の水や白湯がおすすめです。飲む時は少しずつではなく、コップ1杯を一気に飲んで体を目覚めさせましょう。

③朝食を必ず摂る
免疫力を維持するためには体内時計を正常に保つことが不可欠ですが、実は体内時計は24時間ピッタリではなく、微妙にずれています。このずれを修正して体内時計をリセットするには、朝日を浴びることと朝食を摂ることが大事です。いろいろな栄養素をバランスよく摂るのが望ましいですが、まずはバナナ1本から始めてもOKです。

④朝食後はトイレタイムをつくる
排便リズムの乱れが免疫力の低下を引き起こすこともあるので、朝食後は意識的にトイレタイムをつくりましょう。最初は便意を感じなくても、決まった時間に便座に座ることでだんだん排便習慣がついてきます。ただし、無理していきんだりすると交感神経が高まってしまうので、自然な流れに任せるようにしてください。

⑤食事メニューは食物繊維と発酵食品2種類以上を摂る

食事メニューは食物繊維と発酵食品2種類以上を摂る 食事メニューは食物繊維と発酵食品2種類以上を摂る

1日の食事を通して、食物繊維や発酵食品など腸内環境を整える食品を意識的に摂るようにしましょう。食物繊維は善玉菌のエサとなり、腸内細菌のバランスを整えます。食物繊維の中でも海藻、きな粉、切り干し大根、ラッキョウなどに多く含まれる「水溶性食物繊維」には、便を軟らかくしてスムーズな排便を促す効果もあります。

発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌はいずれも善玉菌に当たるため、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことができます。ヨーグルト、納豆、みそ、しょうゆ、酢、チーズ、ぬか漬けなど発酵食品にはいろいろありますが、できるだけたくさんの種類の発酵食品を摂り、腸内細菌の多様性を高めることが大事です。

⑥夕食は寝る3時間前までに済ませる
食べ物を噛んだり飲み込んだりする行為は交感神経がつかさどっているため、食事中は交感神経が優位になります。そのため夜遅くの食事で交感神経の働きが高まってしまうと、自律神経の混乱を招き、消化・吸収がうまく行われなくなって便秘になったり、睡眠の質が低下したりします。食事で摂ったものが胃で消化されるのには最低でも3時間はかかるので、就寝の3時間前までには夕食を済ませるようにしましょう。

⑦シャワーではなく入浴する

シャワーではなく入浴する シャワーではなく入浴する

39~40℃くらいの少しぬるめの湯に15分くらいかけてゆっくり浸かるのが理想です。それにより副交感神経の働きが高まり、血流がよくなってスムーズな睡眠に導かれやすくなり、腸の働きも整います。熱過ぎる湯は交感神経を急激に刺激し、自律神経の働きを乱してしまうので注意しましょう。

⑧寝る1時間前からスマホを見ない
スマホやパソコンのディスプレイから発せられるブルーライトは交感神経を刺激して睡眠の質を悪くし、腸の働きも低下させてしまいます。就寝前の1時間は睡眠の質を左右する大事な時間。できるだけ刺激を遠ざけ、リラックスして過ごすようにしましょう。副交感神経の働きがピークになるのは夜中の12時ごろなので、その前にはベッドに入ることも大切です。

(4)まとめ

自律神経と腸内環境を整えるルーティーンは、免疫力を高めるためだけでなく、心身の様々な不調を寄せつけないために、ぜひ実践していただきたい生活習慣です。無理せず、できることから始めてみましょう。