慢性疲労症候群の診断基準はご存知ですか?
普通の疲れとの違いを解説

常に身体が怠く、疲労感があり、休日にたっぷり休養をとっても回復しない状態が長期で続く場合、慢性疲労症候群である可能性があります。

慢性疲労症候群は疾病のため、市販薬で対処することはできません。

しかし、日常的な疲労と見分けることが難しく、判断が付きにくいのも事実です。

今回は、医師が慢性疲労症候群の具体的症状、また慢性疲労症候群の診断基準等を解説します。

<監修>
田中奏多

福島県立医科大学卒業
ハーバード大学TMSコース終了、マサチューセッツ大学MBAコース在学。
「働く人の薬に頼らない心の治療」を行うBESLI CLINICを2014年共同開設した。産業医の側面からも「生産性」を上げる健康を臨床でサポートしている。

市販薬では解決できない慢性疲労症候群とは?
原因・症状を解説

慢性疲労症候群とは、日常生活が著しく損なわれるほどの強い全身倦怠感、慢性的な疲労感が休養しても回復せず6ヶ月以上の長期にわたって続く状態です。

同時に発熱、リンパ節腫大、咽頭痛などの感染症様症状、頭痛、筋肉痛、関節痛、脱力感などの膠原病様症状、睡眠障害、思考力低下、抑うつ、不安などの精神・神経症様症状などの多彩な症状も現れます。

慢性疲労症候群は筋痛症性脳脊髄炎とも呼ばれ、CDC(米国疾病対策センター)により 1988年に慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome:CFS)と提唱された疾患概念です。

一方,同様の病態が英国・カナダなどでは ME (Myalgic Encephalomyelitis:筋痛性脳脊髄炎)と されており,近年は ME/CFS と併記されることが多いです。

原因・病態は明らかになっておらず、一般的な血液検査、尿検査、画像検査では分かりません。
そのため、”市販薬では対処することができません。”

慢性臓器不全、慢性感染症、慢性炎症性疾患、主な神経性及び代謝・内分泌疾患、双極性障害・統合失調症・精神病性うつ病などの器質的疾患・ 病態を除外された上で、上記の症状がある場合、慢性疲労症候群と診断されます。

出典:
・厚生労働省(慢性疲労症候群患者の日常生活困難度調査事業)
・日本における現状と診断・治療 倉恒弘彦 難病と在宅ケア 24(6): 5-11, 2018.

慢性疲労症候群になりやすい人の特徴

慢性疲労症候群になりやすい人には、特徴的な心理特性があるという報告もあります。

TEG(Tokyo University Egogram:東大式エゴグラム)検査におけるFC(free child=自由奔放な子供であるという分類基準)、AC(adapted child=従順な子供であるという分類基準)は、慢性疲労症候群の心理状態、身体状態に影響があるようです。

具体的には、FC(free child)は、直感力、創造性、自由奔放さ、好奇心、表現力などを表します。

表現力が豊かで、周囲に温かさや明るさを感じさせるような特徴があります。

AC(adapted child)は、協調性、忍耐力、奥ゆかしさ、礼儀正しさ、などを表します。

従順で協調性が高く、受身的で絶えず周囲に気兼ねし、その期待に応えようと努力する特徴があります。

出典:慢性疲労症候群患者における心身の相互作用 - 構造方程式モデリングを用いた解析 野口敬蔵ほか 心身医学 57(6): 680-680, 2017.

普通の疲れとの違いとは?
慢性疲労症候群の診断基準とは

普通の疲れは、質のいい睡眠やバランスのよい食事など十分な休養を取ったり、不足している栄養素を補給したりすることで回復する疲労です。

慢性疲労症候群の疲労は、十分な休養をとっても回復しない疲労になります。

米国の国立衛生研究所(NIH)や医学研究所(10M)が、2015年2月に慢性疲労症候群に対する新たな疾病概念として全身性労作不耐疾患(SEID:Systemic Exertion Intolerance Disease)を提唱しました。

SEIDにおける慢性疲労症候群の診断基準では、以下の3つの症状が必須条件としてあげられています。

1. 発症時期が明確な慢性的な疲労に伴い、病前の就労、学歴、社会的、個人的な活動レベルから大幅な低下を6ケ月以上継続してみとめる

2. 労作後に増悪する極度の倦怠感

3. 睡眠障害(熟睡感、回復感を伴わない睡眠)

また、以下の2つの症状のうち、いずれかの症状を認めることも診断基準になります。

1. 認知機能の低下

2. 起立不耐症(起立性調整障害)

ただ、SEIDは除外基準の記載がされておらず、有病率が高くでてしまうことから、さらに項目を加え臨床診断基準を定める場合もあります。

慢性疲労症候群の治療法

現時点では慢性疲労症候群の治療法は確立されていませんが、以下のような治療が考慮されます。

・抗酸化療法(多量のビタミンC、CoQ10など)
・免疫賦活療法(漢方薬など)、
・向精神薬(SSRI、抗うつ薬、抗不安薬など)
・精神療法(認知行動療法など)
・運動療法

近年では新しくうつ病の治療として、2019年6月に認証されたTMS治療(経頭蓋磁気刺激法)が慢性疲労症候群の治療の一つとして研究が進んでいます。

出典:ME / CSFに対する集学的治療  佐藤元紀
名古屋大学医学部附属病院総合診療科 講師 難病と在宅ケア 24(6): 12-16, 2018.

慢性疲労症候群を予防するために

慢性疲労症候群の原因はまだわかっておらず、予防法も確立していません。

しかしながら、高いストレスの状態が続くと心身の疲労は蓄積します。

慢性的な疲労状態に陥ると免疫力は低下し、心身の不調が引き起こされやすくなります。

疲労を感じた時は、こまめに休養を取るように心がけましょう。

まとめ

普通の疲労とは異なるのが「慢性疲労症候群」です。病状も多岐にわたります。

長期的な疲労や倦怠感が続き、十分な休養をとってもなかなか改善しない場合は、医療機関で受診しましょう。

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