VRやゲーム、映画など、3D映像の画面を見続けているうちに、乗り物酔いと同じように、めまいや冷や汗、顔面蒼白、吐き気・嘔吐などが起こってしまうことがあります。このように3D画面を見続けることで起きてしまう、乗り物酔いによく似た症状を「3D酔い」と言い、バーチャルリアリティーの世界が身近になる中で、3D酔いに悩む人も増加しています。その原因とメカニズムを知り、対策をしていきましょう。
VRやゲーム、映画など、3D映像の画面を見続けているうちに、乗り物酔いと同じように、めまいや冷や汗、顔面蒼白、吐き気・嘔吐などが起こってしまうことがあります。このように3D画面を見続けることで起きてしまう、乗り物酔いによく似た症状を「3D酔い」と言い、バーチャルリアリティーの世界が身近になる中で、3D酔いに悩む人も増加しています。その原因とメカニズムを知り、対策をしていきましょう。
3D酔いには、私たちの体がもつ空間知覚のメカニズムが関わっています。
私たちの体の位置や動きは、3つの器官からの刺激の入力で感知されています。1つは目からの情報(視覚)、2つめは耳(内耳)の前庭器(ぜんていき:三半規管や耳石)で感じる加速や減速・揺れの情報。3つめは、立っている時は足の裏、座っている時はお尻や背中など、筋肉や関節から入ってくる揺れや振動の情報(固有知覚)です。
この3つで感知された情報が脳で統合され、これまで脳が学習し、蓄積していた空間知覚のパターンに当てはめて、自分の動きや位置を認識しています。私たちの脳は、これまでに経験した揺れやスピードを記憶しており、次に同様の経験をした時に姿勢を制御できるように備えているのです。
しかし3D映像では、視覚からは揺れや加速、傾きなどの刺激があるのに、内耳や筋肉、関節からはそれらの刺激が感じられない状態になるため、今までのパターンに当てはまらない加速や揺れの情報として脳に伝わります。すると脳が混乱し、不快な状態であると判断するのです。
その結果、脳の視床下部が混乱し、自律神経が乱れます。自律神経は、血圧や呼吸、胃腸の働きをつかさどるので、自律神経が乱れることで、吐き気や嘔吐、めまいなどの不快な3D酔いの症状が起こってしまうのです。
3D酔いには、私たちの体がもつ空間知覚のメカニズムが関わっています。
私たちの体の位置や動きは、3つの器官からの刺激の入力で感知されています。1つは目からの情報(視覚)、2つめは耳(内耳)の前庭器(ぜんていき:三半規管や耳石)で感じる加速や減速・揺れの情報。3つめは、立っている時は足の裏、座っている時はお尻や背中など、筋肉や関節から入ってくる揺れや振動の情報(固有知覚)です。
この3つで感知された情報が脳で統合され、これまで脳が学習し、蓄積していた空間知覚のパターンに当てはめて、自分の動きや位置を認識しています。私たちの脳は、これまでに経験した揺れやスピードを記憶しており、次に同様の経験をした時に姿勢を制御できるように備えているのです。
しかし3D映像では、視覚からは揺れや加速、傾きなどの刺激があるのに、内耳や筋肉、関節からはそれらの刺激が感じられない状態になるため、今までのパターンに当てはまらない加速や揺れの情報として脳に伝わります。すると脳が混乱し、不快な状態であると判断するのです。
その結果、脳の視床下部が混乱し、自律神経が乱れます。自律神経は、血圧や呼吸、胃腸の働きをつかさどるので、自律神経が乱れることで、吐き気や嘔吐、めまいなどの不快な3D酔いの症状が起こってしまうのです。
3D酔いとは、脳が3D映像の揺れや速度の情報を学習・適応する過程で起きる副反応であると言えます。例えば、初めて船に乗る人が船酔いしやすいのに対して、波の揺れに慣れた漁師さんが船酔いをしないのと同様に、同じ3D映像を何回も見るなどして映像に慣れてくると、やがて脳は3D映像の揺れや速度を新しいパターンとして学習し、徐々に酔わなくなっていきます。
3D酔いとは、脳が3D映像の揺れや速度の情報を学習・適応する過程で起きる副反応であると言えます。例えば、初めて船に乗る人が船酔いしやすいのに対して、波の揺れに慣れた漁師さんが船酔いをしないのと同様に、同じ3D映像を何回も見るなどして映像に慣れてくると、やがて脳は3D映像の揺れや速度を新しいパターンとして学習し、徐々に酔わなくなっていきます。
人間の網膜には、はっきり見える中心部の「中心視野」と、ぼんやり見える周辺の「周辺視野」があります。文字を読む時などは中心視野で知覚しますが、その周囲にも、動いている物がぼんやりと知覚できる周辺視野が広がっています。
人間の網膜には、はっきり見える中心部の「中心視野」と、ぼんやり見える周辺の「周辺視野」があります。文字を読む時などは中心視野で知覚しますが、その周囲にも、動いている物がぼんやりと知覚できる周辺視野が広がっています。
例えば、停車中の電車に乗っている時に目の前の電車が発車すると、あたかも自分が乗っている電車が逆方向に動き出したように感じられることがあります。これは周辺視野の大部分が一定方向に動くことで、自分が逆方向に動いたと錯覚するためです。
このように周辺視野の情報が多いと空間知覚とのミスマッチが起きやすくなり、結果的に3D酔いにもつながりやすくなります。そのため、大画面モニターやVRゴーグルなど、周辺視野の情報が多い状態で映像を見ている時ほど、3D酔いは起きやすくなります。
例えば、停車中の電車に乗っている時に目の前の電車が発車すると、あたかも自分が乗っている電車が逆方向に動き出したように感じられることがあります。これは周辺視野の大部分が一定方向に動くことで、自分が逆方向に動いたと錯覚するためです。
このように周辺視野の情報が多いと空間知覚とのミスマッチが起きやすくなり、結果的に3D酔いにもつながりやすくなります。そのため、大画面モニターやVRゴーグルなど、周辺視野の情報が多い状態で映像を見ている時ほど、3D酔いは起きやすくなります。
またVRゴーグルを装着して映像を見る場合、頭を動かすとゴーグル内の映像も動きますが、頭の動きと映像の動きにタイムラグがあることも多く、VR機器と頭の動きのタイミングがずれることでも、3D酔いは発生しやすくなります。
またVRゴーグルを装着して映像を見る場合、頭を動かすとゴーグル内の映像も動きますが、頭の動きと映像の動きにタイムラグがあることも多く、VR機器と頭の動きのタイミングがずれることでも、3D酔いは発生しやすくなります。
一般的な乗り物酔い(動揺病)の場合、三半規管の感受性と前庭小脳が発達し始める4歳くらいに始まり、9歳でピークに達します。20歳前後になると前庭小脳の老化が始まり、刺激への反応が鈍くなるうえに、年齢を重ねて揺れやスピードに対する経験値が増してくるため、大人は比較的乗り物酔いしにくいのです。また、男性よりも女性の方が2倍近く乗り物酔いしやすいと言われており、さらに片頭痛のある人は乗り物酔いしやすいというデータもあります。
しかし、「3D酔い」は乗り物酔いと違い、今まで経験したことのない新たな揺れの刺激で起きるため、大人でも経験のない3D映像を見ると酔いやすくなります。特に片頭痛のある人は気をつけた方がよいでしょう。
一般的な乗り物酔い(動揺病)の場合、三半規管の感受性と前庭小脳が発達し始める4歳くらいに始まり、9歳でピークに達します。20歳前後になると前庭小脳の老化が始まり、刺激への反応が鈍くなるうえに、年齢を重ねて揺れやスピードに対する経験値が増してくるため、大人は比較的乗り物酔いしにくいのです。また、男性よりも女性の方が2倍近く乗り物酔いしやすいと言われており、さらに片頭痛のある人は乗り物酔いしやすいというデータもあります。
しかし、「3D酔い」は乗り物酔いと違い、今まで経験したことのない新たな揺れの刺激で起きるため、大人でも経験のない3D映像を見ると酔いやすくなります。特に片頭痛のある人は気をつけた方がよいでしょう。
酔いやすい動きの周波数は、0.2Hz(ヘルツ)といわれています。0.2Hzは5秒に1回程度の周期でゆっくりゆらゆら動く速度です。船酔いなどは、ちょうどこの周波数に当てはまりやすく、比較的多くの人が船酔いを経験します。
人間の揺れや速度を感知する機能は、高速のものは内耳の前庭器が優先し、ゆっくりのものは視覚が優先します。しかし0.2Hzはちょうどその中間の速度に当たり、私たちの体は、前庭器か視覚か、どちらを優先して知覚してよいかわからず、混乱を引き起こしやすいのです。このため、3D映像の動きの速度によっても、酔いやすい映像とそうでない映像があります。
酔いやすい動きの周波数は、0.2Hz(ヘルツ)といわれています。0.2Hzは5秒に1回程度の周期でゆっくりゆらゆら動く速度です。船酔いなどは、ちょうどこの周波数に当てはまりやすく、比較的多くの人が船酔いを経験します。
人間の揺れや速度を感知する機能は、高速のものは内耳の前庭器が優先し、ゆっくりのものは視覚が優先します。しかし0.2Hzはちょうどその中間の速度に当たり、私たちの体は、前庭器か視覚か、どちらを優先して知覚してよいかわからず、混乱を引き起こしやすいのです。このため、3D映像の動きの速度によっても、酔いやすい映像とそうでない映像があります。
3D酔いを防ぐためには、どのような視聴環境に整えればよいのでしょうか。特に3D酔いをすることが多いゲームの環境と対策について後編でお伝えします。
「ゲーム酔い」はどうしたら防げる? >
3D酔いを防ぐためには、どのような視聴環境に整えればよいのでしょうか。特に3D酔いをすることが多いゲームの環境と対策について後編でお伝えします。
「ゲーム酔い」はどうしたら防げる? >
名古屋市立大学大学院 医学研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座教授
岩﨑 真一(いわさき・しんいち)先生
医学博士。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本耳鼻咽喉科学会専門研修指導医、臨床研修指導医、日本めまい平衡医学会専門会員・めまい相談医、日本耳科学会耳科手術暫定指導医。2010年、東京大学医学部附属病院准教授を経て、2019年より現職。
名古屋市立大学大学院 医学研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座教授
岩﨑 真一(いわさき・しんいち)先生
医学博士。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本耳鼻咽喉科学会専門研修指導医、臨床研修指導医、日本めまい平衡医学会専門会員・めまい相談医、日本耳科学会耳科手術暫定指導医。2010年、東京大学医学部附属病院准教授を経て、2019年より現職。