1967年 神奈川県生まれ。東北大学大学院電気及通信工学専攻修士課程修了。
1991年 NASDA入社。地球観測衛星「みどりII」、月周回衛星「かぐや」の開発・運用に携わった後、国際水星探査計画「Bepi Colombo」のサブマネージャーを務める。宇宙科学プログラム室長を経て、2018年より現職。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科博士課程修了。博士(システムズエンジニアリング学)。
1967年 神奈川県生まれ。東北大学大学院電気及通信工学専攻修士課程修了。
1991年 NASDA入社。地球観測衛星「みどりII」、月周回衛星「かぐや」の開発・運用に携わった後、国際水星探査計画「Bepi Colombo」のサブマネージャーを務める。宇宙科学プログラム室長を経て、2018年より現職。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科博士課程修了。博士(システムズエンジニアリング学)。
2024.2.29
2024.2.29
■宇宙に興味を抱くようになったきっかけを教えてください。
小学校3年生のとき、年上のいとこに天体望遠鏡で見せてもらった月の姿に衝撃を受けました。そして、小6から中1くらいのときでしょうか、テレビ番組のCOSMOS(コスモス)に夢中になり、宇宙に携わる仕事をしたいと思うようになりました。
大学では通信工学を専攻していましたが、その通信工学を宇宙で活かせる場所として宇宙開発事業団(NASDA/ JAXAの前身)を選びました。その後は地球観測衛星や月周回衛星「かぐや」、国際水星探査計画「Bepi Colombo(ベピ・コロンボ)」などのプロジェクトに関わってきました。
■XRISM(クリズム)はどのような計画で、どのようなミッションを行うのでしょうか?
また、衛星の特長を教えてください。
XRISMは、2023年に打ち上げられました。2016年に短期間で運用を終了したX線天文衛星「ひとみ」のミッションをもう一度実施するためです。X線という人間に見えない光の波長で宇宙を観測する衛星で、基本的に「ひとみ」と同じものを短期間で確実に作っていくことを目指したのですが、より安全性・安定性を高めた設計で作られました。「ひとみ」自身が極めて高い性能を持っていたので、XRISMも高性能な衛星になっています。
■宇宙に興味を抱くようになったきっかけを教えてください。
小学校3年生のとき、年上のいとこに天体望遠鏡で見せてもらった月の姿に衝撃を受けました。そして、小6から中1くらいのときでしょうか、テレビ番組のCOSMOS(コスモス)に夢中になり、宇宙に携わる仕事をしたいと思うようになりました。
大学では通信工学を専攻していましたが、その通信工学を宇宙で活かせる場所として宇宙開発事業団(NASDA/ JAXAの前身)を選びました。その後は地球観測衛星や月周回衛星「かぐや」、国際水星探査計画「Bepi Colombo(ベピ・コロンボ)」などのプロジェクトに関わってきました。
■XRISM(クリズム)はどのような計画で、どのようなミッションを行うのでしょうか?
また、衛星の特長を教えてください。
XRISMは、2023年に打ち上げられました。2016年に短期間で運用を終了したX線天文衛星「ひとみ」のミッションをもう一度実施するためです。X線という人間に見えない光の波長で宇宙を観測する衛星で、基本的に「ひとみ」と同じものを短期間で確実に作っていくことを目指したのですが、より安全性・安定性を高めた設計で作られました。「ひとみ」自身が極めて高い性能を持っていたので、XRISMも高性能な衛星になっています。
■XRISMの開発にあたって、苦労したことを教えてください。
XRISMはNASAとJAXAの共同プロジェクトです。対等なパートナーとしてのNASAとのやり取りの中で、NASAのシステムエンジニアリングの思想を全面的に取り入れました。ただ、私から見て「そこまでやるのか!」という部分が結構ありましたね。また、プロジェクト立ち上げ時には、協力体制を協議するため毎月1回アメリカに行く忙しさや、時差から生活のリズムが崩れるなどで苦労しました。
■先日XRISMのファーストライト(望遠鏡での最初の撮影)の写真が公開されましたが、初めてこの写真を見たとき、どのようにお感じになりましたか?
「かぐや」に関わっていたときは、運用室でリアルタイムでデータを見ていましたが、天体からのX線は微弱なため、約10日間かけて露光したデータに高度な処理を行いました。その辺の感覚が少し違いましたね。ただ、想像を越えるすごいデータが出てきました。前身のX線天文衛星「すざく」とはまさに、レベルが違うデータです。科学者たちの想像を超えるデータが出てきたので、彼らはデータの解釈にものすごく議論しています。現在もデータは鋭意解析中ですので、ぜひ今後の成果に期待してください。
■XRISMの開発にあたって、苦労したことを教えてください。
XRISMはNASAとJAXAの共同プロジェクトです。対等なパートナーとしてのNASAとのやり取りの中で、NASAのシステムエンジニアリングの思想を全面的に取り入れました。ただ、私から見て「そこまでやるのか!」という部分が結構ありましたね。また、プロジェクト立ち上げ時には、協力体制を協議するため毎月1回アメリカに行く忙しさや、時差から生活のリズムが崩れるなどで苦労しました。
■先日XRISMのファーストライト(望遠鏡での最初の撮影)の写真が公開されましたが、初めてこの写真を見たとき、どのようにお感じになりましたか?
「かぐや」に関わっていたときは、運用室でリアルタイムでデータを見ていましたが、天体からのX線は微弱なため、約10日間かけて露光したデータに高度な処理を行いました。その辺の感覚が少し違いましたね。ただ、想像を越えるすごいデータが出てきました。前身のX線天文衛星「すざく」とはまさに、レベルが違うデータです。科学者たちの想像を超えるデータが出てきたので、彼らはデータの解釈にものすごく議論しています。現在もデータは鋭意解析中ですので、ぜひ今後の成果に期待してください。
■将来、チャレンジしたい、成し遂げたいと思っていることを教えてください。
今はXRISMに全力投入していて、将来がなかなか思い浮かばないのですが、将来的には、私が行ってきたプロジェクトマネージメントや、システム工学(システムエンジニアリング)の大切さを、後進にうまく伝えていきたいと思っています。こういったことはやってみないとよくわからないことが多いですね。英語でいうところの「システムズエンジニア」をしっかり育てるようなことをしていければと思います。
■これから宇宙開発に携わりたいという方、特に若い方へのアドバイスやメッセージをお願いします。
宇宙開発は敷居が高いと思われがちですが、実は意外とそうでもなく、言ってみれば「何でもありの分野」です。宇宙開発は複雑ですが、そうであるからこそありとあらゆる「専門家の集合体」で成り立っています。「宇宙は好きだけど自分の好きなことと関わるだろうか」と心配している人は、ぜひ自分が好きなものをうまく宇宙開発に結びつけてくれればと思います。
■XRISMプロジェクトを応援している人たちへ、メッセージをお願いいたします。
XRISMは3月始めから定常運用に移行し、データ取得を精力的に続けています。夏からは世界中の研究者からの観測を受け付ける「公募観測」も始まります。そのすごい能力がいよいよ発揮される最先端のミッションです。ものすごい成果を、ぜひ期待していてください。
■将来、チャレンジしたい、成し遂げたいと思っていることを教えてください。
今はXRISMに全力投入していて、将来がなかなか思い浮かばないのですが、将来的には、私が行ってきたプロジェクトマネージメントや、システム工学(システムエンジニアリング)の大切さを、後進にうまく伝えていきたいと思っています。こういったことはやってみないとよくわからないことが多いですね。英語でいうところの「システムズエンジニア」をしっかり育てるようなことをしていければと思います。
■これから宇宙開発に携わりたいという方、特に若い方へのアドバイスやメッセージをお願いします。
宇宙開発は敷居が高いと思われがちですが、実は意外とそうでもなく、言ってみれば「何でもありの分野」です。宇宙開発は複雑ですが、そうであるからこそありとあらゆる「専門家の集合体」で成り立っています。「宇宙は好きだけど自分の好きなことと関わるだろうか」と心配している人は、ぜひ自分が好きなものをうまく宇宙開発に結びつけてくれればと思います。
■XRISMプロジェクトを応援している人たちへ、メッセージをお願いいたします。
XRISMは3月始めから定常運用に移行し、データ取得を精力的に続けています。夏からは世界中の研究者からの観測を受け付ける「公募観測」も始まります。そのすごい能力がいよいよ発揮される最先端のミッションです。ものすごい成果を、ぜひ期待していてください。
<編集長からの一言>
いやー、驚きました。COSMOSがきっかけで宇宙に入ったことは私と全く同じですし、かつて「かぐや」のプロジェクトにも入られていたとお伺いしてこれまたびっくりです。私自身は「かぐや」では研究や事務的支援が主で、プロジェクト管理とはあまりつながっていなかったのですが、インタビューの間、まるで自分を振り返っているようでした。XRISM、とにかく「すごいやつ」です。世界に冠たる日本のX線天文学、XRISMでのさらなる飛躍を心から祈っています。
<編集長からの一言>
いやー、驚きました。COSMOSがきっかけで宇宙に入ったことは私と全く同じですし、かつて「かぐや」のプロジェクトにも入られていたとお伺いしてこれまたびっくりです。私自身は「かぐや」では研究や事務的支援が主で、プロジェクト管理とはあまりつながっていなかったのですが、インタビューの間、まるで自分を振り返っているようでした。XRISM、とにかく「すごいやつ」です。世界に冠たる日本のX線天文学、XRISMでのさらなる飛躍を心から祈っています。