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国立天文台水沢VLBI観測所 所長 本間希樹 国立天文台水沢VLBI観測所 所長 本間希樹

Challenger ㉒

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UFO少年から、小さき宇宙の謎を追う研究者へ

UFO少年から、小さき宇宙の謎を追う研究者へ

日本大学理工学部航空宇宙工学科 准教授 阿部新助

日本大学理工学部航空宇宙工学科 准教授 阿部新助

天文学者、学際的アーティスト。流星体の大気圏突入現象や月面衝突閃光現象、小惑星・彗星などの地上観測や探査、カメラ・分光器開発などが専門。

2001年 総合研究大学院大学数物科学研究科天文科学専攻(国立天文台) 修了、博士(理学)
2001年 宇宙科学研究所 固体惑星研究系 MUSES-C(はやぶさ) COE研究員
2003年 日本学術振興会海外特別研究員(チェコ共和国オンドジェヨフ天文台)
2005年 神戸大学大学院自然科学研究科 COE研究員
2007年 神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻 助教
2008年 台湾 國立中央大學天文研究所 助教
2013年より現職

SNS(X) → https://twitter.com/AvellSky

天文学者、学際的アーティスト。流星体の大気圏突入現象や月面衝突閃光現象、小惑星・彗星などの地上観測や探査、カメラ・分光器開発などが専門。

2001年 総合研究大学院大学数物科学研究科天文科学専攻(国立天文台) 修了、博士(理学)
2001年 宇宙科学研究所 固体惑星研究系 MUSES-C(はやぶさ) COE研究員
2003年 日本学術振興会海外特別研究員(チェコ共和国オンドジェヨフ天文台)
2005年 神戸大学大学院自然科学研究科 COE研究員
2007年 神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻 助教
2008年 台湾 國立中央大學天文研究所 助教
2013年より現職

SNS(X) → https://twitter.com/AvellSky

2023.8.31

2023.8.31

2023.8.31

2023.8.31

■月や宇宙に興味を抱くようになったきっかけや、エピソードを教えてください。

意外かも知れませんが、私が宇宙に目を向けたきっかけは、幼少期にテレビで流行っていたUFO番組でした。小さい頃はUFOの存在を信じていましたし、よく調べたりもしていました。UFO探知機を作ったこともあるんですよ。

中学生になった頃、買ってもらったパソコンで軌道計算のプログラムを組んだりしました。三角関数を自分で勉強してプログラムを組んだのです。大学に入るときに、天文学者か宇宙飛行士(パイロット)になろうと思っていて、入ったのが今の航空宇宙工学科(日本大学 理工学部)でした。

■宇宙空間にある塵(ダスト)を研究されているそうですが、この研究にはどういうきっかけで入られたのでしょうか。

大学に入ってから天文サークルに入り、大学天文連盟(関東地区8大学の天文サークル連合体)の第29代事務局長を仰せつかりました。その中の流星分科会に主に所属していたのですが、1992年に『ペルセウス座流星群』の大出現があり、日大理工の八海山セミナーハウスで観測していました。大火球の跡に長時間残る流星痕(永続痕)を見て、「何だこれは!」と思いましたね。

そこから流星のもととなる流星体(メテオロイド)に興味を持ちました。そして、流星や流星痕の発光物理や発光組成にさらに興味を持ったのですが、これを調べるためには分光器というものが必要でした。若かったからでしょうか、いきなり国立天文台に手紙を書いて、「(当時開発中であったフーリエ分光器を)貸してくれ!」とお願いしたんですね。その手紙にていねいにお返事を下さったのが、後に博士課程の指導教官と共同研究者になる渡部潤一さん(現・国立天文台上席教授)と海老塚昇さん(現・理化学研究所研究員)でした。

これまで数多くのミッションや観測に関わってこられたそうですが、印象的なエピソードなどがありましたら教えてください。

1999年〜2002年に『しし座流星群』の大出現があったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。そんなとき、我々が開発した(紫外線)超高感度分光カメラに興味を持った組織がありました。NASAです。

1999年(博士課程2年)の11月、分光カメラとNHKの超高感度ハイビジョンカメラを持ち込み、NASA・米空軍の航空機で世界を半周しながら流星観測をしました。1999年11月18日深夜、地中海上空13kmを飛ぶ我々の目の前に嵐のような流星雨を見ることができました。流星雨ではなく、1時間に4千個を超える流星嵐。我々は世界ではじめて、記録絵や版画でしか残されていなかった流星嵐を動画として観測できたんですね。

『流星と流星痕の分光学的研究』で博士号を取得したことがきっかけとなり、初代「はやぶさ(MUSES-C)」搭載の近赤外線分光器の開発に携わり、打ち上げから小惑星イトカワ探査、2010年の地球帰還カプセル回収隊にも地上光学班として参加し、はやぶさとカプセルの地球帰還映像を「はやぶさ!おかえりーーー」の雄叫びと共に記録できました。

2022年11月にNASAアルテミス計画1の相乗りで打ち上げられた超小型月探査機「EQUULEUS」(エクレウス)についてお聞かせください。

エクレウスは、月というよりは地球-月系のラグランジュ第2点(EML2)を超小型ではじめて目指す東大・JAXAの探査機です。超小型でも深宇宙にも行けて、さらに第一級のサイエンス観測ができることを実証することが目的です。

極端紫外線で地球プラズマ圏を撮像するカメラ、探査機に衝突するミクロンサイズの塵を測定するダストセンサーを挟み込んだ多層断熱材(MLI)、そして、私が主担当として開発させて頂いた、cmサイズの流星体が月面に超高速衝突する際の閃光を捉える月面衝突閃光観測カメラ『デルフィヌス』も搭載しています。これらのサイエンス観測により、地球-月系周辺(シスルナ)環境の探査を目指しています。

残念ながら2023年5月末に通信途絶となっていますが、これまでに取得された科学データからミッションの大半は成功していて、大型探査機の数十分の一の予算で深宇宙探査を実証しましたので、同様の超小型ミッションを継続実施いくことが重要です。

■阿部先生は学生さんの指導に大変熱心だそうですが、どのようなことを心がけたり、大切にしていますか?

学生が、「先生、〇〇について教えて下さい」と解答を聞いてきたりしますが、私は決して教えません。答えがないからです。その代わり、それを解決するために必要であろう知識やその調べ方、ツールの使い方などは教えます。

研究とは、自身が学んだ知識と経験をベースに、自分で考え出していくものです。知を生み出すための知『メタ知識』を養うのが大学での研究教育の役割です。だから、学生たちに知の最前線に取り組める機会を提供することが指導教員の役目だと思っています。

■月や宇宙に興味を抱くようになったきっかけや、エピソードを教えてください。

意外かも知れませんが、私が宇宙に目を向けたきっかけは、幼少期にテレビで流行っていたUFO番組でした。小さい頃はUFOの存在を信じていましたし、よく調べたりもしていました。UFO探知機を作ったこともあるんですよ。

中学生になった頃、買ってもらったパソコンで軌道計算のプログラムを組んだりしました。三角関数を自分で勉強してプログラムを組んだのです。大学に入るときに、天文学者か宇宙飛行士(パイロット)になろうと思っていて、入ったのが今の航空宇宙工学科(日本大学 理工学部)でした。

■宇宙空間にある塵(ダスト)を研究されているそうですが、この研究にはどういうきっかけで入られたのでしょうか。

大学に入ってから天文サークルに入り、大学天文連盟(関東地区8大学の天文サークル連合体)の第29代事務局長を仰せつかりました。その中の流星分科会に主に所属していたのですが、1992年に『ペルセウス座流星群』の大出現があり、日大理工の八海山セミナーハウスで観測していました。大火球の跡に長時間残る流星痕(永続痕)を見て、「何だこれは!」と思いましたね。

そこから流星のもととなる流星体(メテオロイド)に興味を持ちました。そして、流星や流星痕の発光物理や発光組成にさらに興味を持ったのですが、これを調べるためには分光器というものが必要でした。若かったからでしょうか、いきなり国立天文台に手紙を書いて、「(当時開発中であったフーリエ分光器を)貸してくれ!」とお願いしたんですね。その手紙にていねいにお返事を下さったのが、後に博士課程の指導教官と共同研究者になる渡部潤一さん(現・国立天文台上席教授)と海老塚昇さん(現・理化学研究所研究員)でした。

これまで数多くのミッションや観測に関わってこられたそうですが、印象的なエピソードなどがありましたら教えてください。

1999年〜2002年に『しし座流星群』の大出現があったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。そんなとき、我々が開発した(紫外線)超高感度分光カメラに興味を持った組織がありました。NASAです。

1999年(博士課程2年)の11月、分光カメラとNHKの超高感度ハイビジョンカメラを持ち込み、NASA・米空軍の航空機で世界を半周しながら流星観測をしました。1999年11月18日深夜、地中海上空13kmを飛ぶ我々の目の前に嵐のような流星雨を見ることができました。流星雨ではなく、1時間に4千個を超える流星嵐。我々は世界ではじめて、記録絵や版画でしか残されていなかった流星嵐を動画として観測できたんですね。

『流星と流星痕の分光学的研究』で博士号を取得したことがきっかけとなり、初代「はやぶさ(MUSES-C)」搭載の近赤外線分光器の開発に携わり、打ち上げから小惑星イトカワ探査、2010年の地球帰還カプセル回収隊にも地上光学班として参加し、はやぶさとカプセルの地球帰還映像を「はやぶさ!おかえりーーー」の雄叫びと共に記録できました。

2022年11月にNASAアルテミス計画1の相乗りで打ち上げられた超小型月探査機「EQUULEUS」(エクレウス)についてお聞かせください。

エクレウスは、月というよりは地球-月系のラグランジュ第2点(EML2)を超小型ではじめて目指す東大・JAXAの探査機です。超小型でも深宇宙にも行けて、さらに第一級のサイエンス観測ができることを実証することが目的です。

極端紫外線で地球プラズマ圏を撮像するカメラ、探査機に衝突するミクロンサイズの塵を測定するダストセンサーを挟み込んだ多層断熱材(MLI)、そして、私が主担当として開発させて頂いた、cmサイズの流星体が月面に超高速衝突する際の閃光を捉える月面衝突閃光観測カメラ『デルフィヌス』も搭載しています。これらのサイエンス観測により、地球-月系周辺(シスルナ)環境の探査を目指しています。

残念ながら2023年5月末に通信途絶となっていますが、これまでに取得された科学データからミッションの大半は成功していて、大型探査機の数十分の一の予算で深宇宙探査を実証しましたので、同様の超小型ミッションを継続実施いくことが重要です。

■阿部先生は学生さんの指導に大変熱心だそうですが、どのようなことを心がけたり、大切にしていますか?

学生が、「先生、〇〇について教えて下さい」と解答を聞いてきたりしますが、私は決して教えません。答えがないからです。その代わり、それを解決するために必要であろう知識やその調べ方、ツールの使い方などは教えます。

研究とは、自身が学んだ知識と経験をベースに、自分で考え出していくものです。知を生み出すための知『メタ知識』を養うのが大学での研究教育の役割です。だから、学生たちに知の最前線に取り組める機会を提供することが指導教員の役目だと思っています。

阿部研究室 暑気払い 阿部研究室 暑気払い

■今後、成し遂げたいと思っていること、これからも探求していきたいテーマなどございましたら、お聞かせください。

意外かも知れませんが、いま仲間達と関わり始めたプロジェクトは「街作り」です。

学生を主体にした街作りの機会を活用して、センシング技術を組み込んだ手のひらサイズの小型天文台や小型衛星をコンステレーション的にAIで繋げていく計画を進めています。このような取り組みから宇宙人材が生まれてくることも期待しています。

地球大気は、宇宙から地球に突入する塵の巨大な検出器だし、上層にある電離層は、地震先行現象である電離層擾乱も発生させているはずなんです。最新の技術とアイデアのセレンディピティーから未解明現象に挑んでいきたいですね。

■今後、成し遂げたいと思っていること、これからも探求していきたいテーマなどございましたら、お聞かせください。

意外かも知れませんが、いま仲間達と関わり始めたプロジェクトは「街作り」です。

学生を主体にした街作りの機会を活用して、センシング技術を組み込んだ手のひらサイズの小型天文台や小型衛星をコンステレーション的にAIで繋げていく計画を進めています。このような取り組みから宇宙人材が生まれてくることも期待しています。

地球大気は、宇宙から地球に突入する塵の巨大な検出器だし、上層にある電離層は、地震先行現象である電離層擾乱も発生させているはずなんです。最新の技術とアイデアのセレンディピティーから未解明現象に挑んでいきたいですね。

阿部研究室 夏合宿 八海山天文台 阿部研究室 夏合宿 八海山天文台

■宇宙に関心を持っている方、その道に進みたいと思っている方々に、メッセージやアドバイスをお願いいたします。

特に若い人にお伝えしたいのですが、高校までは基本をしっかりと勉強することですね。その上で豊かなアイディアを生み出すためには、美的直感が必要だと思っています。「美的直観とは、これまでは無関係と思われていたものの間に関係を見出すこと」、これは数学者ポアンカレの言葉ですが、分野を問わず、たくさんの知識の中からアイディアを出すためには、幅広い知識と経験が必要です。そのようなアイディアを見出すことこそが人間の面白さだ、と私は思っています。

■宇宙に関心を持っている方、その道に進みたいと思っている方々に、メッセージやアドバイスをお願いいたします。

特に若い人にお伝えしたいのですが、高校までは基本をしっかりと勉強することですね。その上で豊かなアイディアを生み出すためには、美的直感が必要だと思っています。「美的直観とは、これまでは無関係と思われていたものの間に関係を見出すこと」、これは数学者ポアンカレの言葉ですが、分野を問わず、たくさんの知識の中からアイディアを出すためには、幅広い知識と経験が必要です。そのようなアイディアを見出すことこそが人間の面白さだ、と私は思っています。

左_日本大学理工学部航空宇宙工学科 准教授 阿部新助先生、インタビュアー寺園編集長 左_日本大学理工学部航空宇宙工学科 准教授 阿部新助先生、インタビュアー寺園編集長

<編集長からの一言>

このインタビューに出てくる人の恒例かも知れませんが、原稿では「阿部先生」と書いていても、実際声をかけるときには「阿部くん」になってしまうほど、私とはずっとずっと親しい仲です。でも、小さい頃UFO番組に心を踊らせていたとか(実は…私もそうだったりします)、渡部潤一先生(私も師と仰ぐ天文の大家です)との経緯とか、はじめて聞く話ばかりでした。また一つ、彼との楽しい話の種が増えた感じです。

<編集長からの一言>

このインタビューに出てくる人の恒例かも知れませんが、原稿では「阿部先生」と書いていても、実際声をかけるときには「阿部くん」になってしまうほど、私とはずっとずっと親しい仲です。でも、小さい頃UFO番組に心を踊らせていたとか(実は…私もそうだったりします)、渡部潤一先生(私も師と仰ぐ天文の大家です)との経緯とか、はじめて聞く話ばかりでした。また一つ、彼との楽しい話の種が増えた感じです。

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