1967年、愛媛県生まれ。
東京大学大学院理学系研究科鉱物学教室で博士(理学)取得。惑星地質学、鉱物学、火山学専門。ブレイズ・パスカル大学(フランス)、秋田大学、大阪大学を経て、現在、立命館大学教授。
JAXA月探査「かぐや」プロジェクトの地形地質カメラグループ共同研究員。2023年度打ち上げ予定の小型月着陸実証機SLIM計画に搭載されるマルチバンドカメラ(MBC)開発リーダーや、2024年度以降打ち上げをめざしている月極域探査機LUPEX計画の氷資源探査車に搭載される近赤外画像分光カメラ(ALIS)開発リーダーを務めるなど、複数の将来月探査プロジェクトに参加している。
著書:『世界はなぜ月をめざすのか』(講談社ブルーバックス)、『月はぼくらの宇宙港』(新日本出版社)(2017年度の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(中学校の部))、『月はすごい - 資源・開発・移住』(中公新書)
1967年、愛媛県生まれ。
東京大学大学院理学系研究科鉱物学教室で博士(理学)取得。惑星地質学、鉱物学、火山学専門。ブレイズ・パスカル大学(フランス)、秋田大学、大阪大学を経て、現在、立命館大学教授。
JAXA月探査「かぐや」プロジェクトの地形地質カメラグループ共同研究員。2023年度打ち上げ予定の小型月着陸実証機SLIM計画に搭載されるマルチバンドカメラ(MBC)開発リーダーや、2024年度以降打ち上げをめざしている月極域探査機LUPEX計画の氷資源探査車に搭載される近赤外画像分光カメラ(ALIS)開発リーダーを務めるなど、複数の将来月探査プロジェクトに参加している。
著書:『世界はなぜ月をめざすのか』(講談社ブルーバックス)、『月はぼくらの宇宙港』(新日本出版社)(2017年度の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(中学校の部))、『月はすごい - 資源・開発・移住』(中公新書)
2023.6.15
2023.6.15
■月や宇宙に興味を抱くようになったきっかけや、エピソードを教えてください。
私は子どもの頃から未知の世界を探検するのが好きでした。幼稚園の頃には、川を流れていた大根を追いかけて海まで行って、帰ってみたら家にパトカーが来ていたということもありました。
探検好きだったので、次第に「地球なんてみんな行き尽くしているじゃないか」なんて思ったりしました。
そんな中、小・中学生の頃は、パイオニアやボイジャーといった、太陽系の未知の世界を探査するミッションが盛んでした。それらの成果を紹介する『COSMOS』という本やそのテレビ番組に夢中になりました。大学に入って、そういった惑星探査を実は惑星地球の研究者が行っているということを知り、地質・鉱物学の研究室に行きました。
■月や宇宙に興味を抱くようになったきっかけや、エピソードを教えてください。
私は子どもの頃から未知の世界を探検するのが好きでした。幼稚園の頃には、川を流れていた大根を追いかけて海まで行って、帰ってみたら家にパトカーが来ていたということもありました。
探検好きだったので、次第に「地球なんてみんな行き尽くしているじゃないか」なんて思ったりしました。
そんな中、小・中学生の頃は、パイオニアやボイジャーといった、太陽系の未知の世界を探査するミッションが盛んでした。それらの成果を紹介する『COSMOS』という本やそのテレビ番組に夢中になりました。大学に入って、そういった惑星探査を実は惑星地球の研究者が行っているということを知り、地質・鉱物学の研究室に行きました。
湖水爆発災害のあったカメルーンの火山湖ニオス湖の調査風景
湖水爆発災害のあったカメルーンの火山湖ニオス湖の調査風景
■いま、世界が月を目指している理由や動向をお教えください。また、長く月探査に関られている中で、どのような思いを抱いていらっしゃいますでしょうか。
私自身もびっくりするくらい、月探査には追い風が吹いていますね。月の極地域にあるとされる水資源を起爆剤に、月での経済活動が始まろうとしています。
月では水がある場所が限られていますから、今後水資源のある場所をめぐる国際競争にもなるかもしれません。ですので、私たちも早く行かなければならないのです。
■月着陸計画「SLIM」(スリム)はどのような計画で、どのようなミッションを行うのでしょうか?
SLIMは月面にピンポイントで狙った場所に着陸することを目指すミッションです。精度の高い着陸技術は水資源利用の側面からも、宇宙開発、月探査で世界の先頭集団にいるためにも重要なミッションとなるのです。
私は、このSLIMに搭載されるマルチバンドカメラの開発を担当しました。このカメラを使って日本の月探査機「かぐや」で見つけた、月のマントル物質の組成を調べていきます。
■いま、世界が月を目指している理由や動向をお教えください。また、長く月探査に関られている中で、どのような思いを抱いていらっしゃいますでしょうか。
私自身もびっくりするくらい、月探査には追い風が吹いていますね。月の極地域にあるとされる水資源を起爆剤に、月での経済活動が始まろうとしています。
月では水がある場所が限られていますから、今後水資源のある場所をめぐる国際競争にもなるかもしれません。ですので、私たちも早く行かなければならないのです。
■月着陸計画「SLIM」(スリム)はどのような計画で、どのようなミッションを行うのでしょうか?
SLIMは月面にピンポイントで狙った場所に着陸することを目指すミッションです。精度の高い着陸技術は水資源利用の側面からも、宇宙開発、月探査で世界の先頭集団にいるためにも重要なミッションとなるのです。
私は、このSLIMに搭載されるマルチバンドカメラの開発を担当しました。このカメラを使って日本の月探査機「かぐや」で見つけた、月のマントル物質の組成を調べていきます。
SLIM搭載のマルチバンドカメラ
SLIM搭載のマルチバンドカメラ
■「SLIM」計画のこれまでの苦労や、興味深いエピソードなどはありますでしょうか。
SLIM搭載マルチバンドカメラの開発では試験につきっきりになっていました。そこで感じたのが、「仕様書がものすごく大事」ということですね。最初に仕様書をきっかりと作っていないとあとから大変なことになります。ドラマでは、探査機開発の現場は情熱で回っているようなところがありますが、実際のところは工数管理に追加予算など、頭の痛いことだらけです。
不具合があると、追試験で夜中まで、さらには徹夜で取り組むこともあります。つらいんですが、携わっている人の目がみんなキラキラしているんですよね。原因究明に一致団結して取り組むところなど「みんな理系なんだな」と思うこともあります。
■「SLIM」計画のこれまでの苦労や、興味深いエピソードなどはありますでしょうか。
SLIM搭載マルチバンドカメラの開発では試験につきっきりになっていました。そこで感じたのが、「仕様書がものすごく大事」ということですね。最初に仕様書をきっかりと作っていないとあとから大変なことになります。ドラマでは、探査機開発の現場は情熱で回っているようなところがありますが、実際のところは工数管理に追加予算など、頭の痛いことだらけです。
不具合があると、追試験で夜中まで、さらには徹夜で取り組むこともあります。つらいんですが、携わっている人の目がみんなキラキラしているんですよね。原因究明に一致団結して取り組むところなど「みんな理系なんだな」と思うこともあります。
SLIM搭載のマルチバンドカメラの性能試験風景
SLIM搭載のマルチバンドカメラの性能試験風景
■小型月着陸実証機「SLIM」打上げへの意気込みと、将来成し遂げたいと思っていることを教えてください。
月への追い風を弱めないよう一つ一つの探査を成功させねばなりません。
新大陸での石油の発見が現代文明を築く基礎となりました。宇宙資源の開発は、人類文明に同じようなターニングポイントをもたらすでしょう。
惑星地質学者として、私は世界中のフィールドをたくさん回ってきました。フィールドの空気感を知っている人材を結集することが次の世界を開く鍵だと考えています。月や火星の探査に、そういったフィールドの空気感を活かしていきたいですね。
■「SLIM」を応援している人たちへのメッセージをお願いいたします。
月探査はまさに今、ターニングポイントにあります。その流れの中にSLIMがあります。
これから先、皆さんの周りの人たちが月に行く、そんなことが当たり前になるかもしれません。月探査は決して他人事ではありません。今そうではないとしても、20〜30年後には確実に世の中が変わっていくことでしょう。
ぜひSLIMをそういった視野でみていただければと思います。
■最後に、日本科学未来館で現在開催されている「NEO月でくらす展」を監修された思いと、来場される方へのメッセージをお願いいたします。
この特別展は、2040年に月面に1000人が常駐し、1万人が月を訪れているという、確固とした世界観に基づいて作られています。
こういった展示では、科学的に間違ったところがあるとすぐ興ざめになってしまいます。そのため、科学的な部分にはとことんまでこだわりました。世界観の「裏設定」も実はかなり作り込んでいるので、マニアな部分もぜひ楽しんで欲しいですね。
■小型月着陸実証機「SLIM」打上げへの意気込みと、将来成し遂げたいと思っていることを教えてください。
月への追い風を弱めないよう一つ一つの探査を成功させねばなりません。
新大陸での石油の発見が現代文明を築く基礎となりました。宇宙資源の開発は、人類文明に同じようなターニングポイントをもたらすでしょう。
惑星地質学者として、私は世界中のフィールドをたくさん回ってきました。フィールドの空気感を知っている人材を結集することが次の世界を開く鍵だと考えています。月や火星の探査に、そういったフィールドの空気感を活かしていきたいですね。
■「SLIM」を応援している人たちへのメッセージをお願いいたします。
月探査はまさに今、ターニングポイントにあります。その流れの中にSLIMがあります。
これから先、皆さんの周りの人たちが月に行く、そんなことが当たり前になるかもしれません。月探査は決して他人事ではありません。今そうではないとしても、20〜30年後には確実に世の中が変わっていくことでしょう。
ぜひSLIMをそういった視野でみていただければと思います。
■最後に、日本科学未来館で現在開催されている「NEO月でくらす展」を監修された思いと、来場される方へのメッセージをお願いいたします。
この特別展は、2040年に月面に1000人が常駐し、1万人が月を訪れているという、確固とした世界観に基づいて作られています。
こういった展示では、科学的に間違ったところがあるとすぐ興ざめになってしまいます。そのため、科学的な部分にはとことんまでこだわりました。世界観の「裏設定」も実はかなり作り込んでいるので、マニアな部分もぜひ楽しんで欲しいですね。
<編集長からの一言>
佐伯さん、実は私とものすごくよく似た研究者人生を歩んでいます。この世界に入るきっかけが『COSMOS』だったことをはじめ、地質分野から宇宙に入ってこられたこと、月探査に長年関わっていらっしゃることなど、本当にびっくりするほど重なっています(実は年齢も一緒です)。
いよいよ私たちの時代が来た!という思いと同時に、ご苦労も多かったと思います。でも、SLIM、その先の月探査に向け、いよいよ月をフィールドにするときがやってきました。佐伯さんがハンマーを手に月面を調査している、そんな姿を想像してわくわくしています。
<編集長からの一言>
佐伯さん、実は私とものすごくよく似た研究者人生を歩んでいます。この世界に入るきっかけが『COSMOS』だったことをはじめ、地質分野から宇宙に入ってこられたこと、月探査に長年関わっていらっしゃることなど、本当にびっくりするほど重なっています(実は年齢も一緒です)。
いよいよ私たちの時代が来た!という思いと同時に、ご苦労も多かったと思います。でも、SLIM、その先の月探査に向け、いよいよ月をフィールドにするときがやってきました。佐伯さんがハンマーを手に月面を調査している、そんな姿を想像してわくわくしています。