1989年、東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修士課程修了。2010年、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科より博士(システムエンジニアリング学)の学位を取得。旧宇宙開発事業団(NASDA)角田ロケット開発センター、種子島宇宙センター(ロケットエンジン開発試験担当)、H-IIAプロジェクトチーム等で液体ロケット開発に携わったのち、システムズエンジニアリングや宇宙輸送系計画の担当を経て、2015年4月より現職。
1989年、東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修士課程修了。2010年、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科より博士(システムエンジニアリング学)の学位を取得。旧宇宙開発事業団(NASDA)角田ロケット開発センター、種子島宇宙センター(ロケットエンジン開発試験担当)、H-IIAプロジェクトチーム等で液体ロケット開発に携わったのち、システムズエンジニアリングや宇宙輸送系計画の担当を経て、2015年4月より現職。
2023.2.9
2023.2.9
──宇宙開発、あるいはロケットに興味を持ったのはいつ頃でしょうか?
実は、よく覚えています。
15歳のとき、アポロ宇宙船の打ち上げの記録映像をみていたとき、ロケットの周囲から白い塊がこぼれ落ちるのをみたのです。素直に「これは一体なんだろう?」と思いました。そこから、ロケットについて勉強してみたいと思ったのです。
もともと小学校の頃、ノートの隙間にテレビ番組「サンダーバード」の秘密基地の図面を引いていたりしました。小さい頃からシステムの中身を知りたいという思いがあったのでしょうね。
それ以来、システム、そしてロケットに興味を持ち続けて45年、いまに至っています。
──H3ロケットの特徴や注目して欲しいところを教えてください。
H3ロケットは、いわば「H-IIAロケットのフルモデルチェンジ版」であり、日本がこれからも活発に宇宙利用を行っていくためになくてはならないロケットです。日本がこれまで得意としてきた技術と、トレンドの技術を盛り込み、満を持して送り出すロケットです。
ロケットは、宇宙にものを輸送する手段です。ものを運ぶ点で重要なのは信頼性、価格、そしてサービスです。H3は、この輸送の本質を徹底的に突き詰めて、かつシンプルに考えることで設計・開発しています。
技術的には、日本のロケット開発の集大成だと思っています。H-II、H-IIAと、先輩技術者たちが積み上げてきた技術基盤を大切に、3Dプリンターでの部品製造といった最新技術を盛り込みながら、その先を目指していきます。
──宇宙開発、あるいはロケットに興味を持ったのはいつ頃でしょうか?
実は、よく覚えています。
15歳のとき、アポロ宇宙船の打ち上げの記録映像をみていたとき、ロケットの周囲から白い塊がこぼれ落ちるのをみたのです。素直に「これは一体なんだろう?」と思いました。そこから、ロケットについて勉強してみたいと思ったのです。
もともと小学校の頃、ノートの隙間にテレビ番組「サンダーバード」の秘密基地の図面を引いていたりしました。小さい頃からシステムの中身を知りたいという思いがあったのでしょうね。
それ以来、システム、そしてロケットに興味を持ち続けて45年、いまに至っています。
──H3ロケットの特徴や注目して欲しいところを教えてください。
H3ロケットは、いわば「H-IIAロケットのフルモデルチェンジ版」であり、日本がこれからも活発に宇宙利用を行っていくためになくてはならないロケットです。日本がこれまで得意としてきた技術と、トレンドの技術を盛り込み、満を持して送り出すロケットです。
ロケットは、宇宙にものを輸送する手段です。ものを運ぶ点で重要なのは信頼性、価格、そしてサービスです。H3は、この輸送の本質を徹底的に突き詰めて、かつシンプルに考えることで設計・開発しています。
技術的には、日本のロケット開発の集大成だと思っています。H-II、H-IIAと、先輩技術者たちが積み上げてきた技術基盤を大切に、3Dプリンターでの部品製造といった最新技術を盛り込みながら、その先を目指していきます。
H3ロケット試験機1号機極低温点検(F-0)機体移動の様子 [提供:JAXA]
H3ロケット試験機1号機極低温点検(F-0)機体移動の様子 [提供:JAXA]
──プロジェクトマネージャとしてどのようなことを心がけているのですか?
「プロジェクトは独りにしてならず」ですね。
プロジェクトは決して独りではできません。自分の役割は、外の方とコミュニケーションを取ることだと思っています。プロジェクトメンバーにも、「自分たちだけで仕事をしているわけではない。プロジェクトチームを越え、JAXA内外の多くの方々と共にひとつのゴールを目指していることを忘れないように」と伝えています。
プロジェクトマネージャという立場で心がけているのは、よく聞く耳、よく聞こえる耳を持つことです。さらにいえば、聞こえてきたことの中から本質を見つけ、大事なことを汲み取っていく。そしてそれを周りに伝える。プロジェクトマネージャとして、それをずっとやってきています。
──これまでご苦労されてきたことはどんなことですか?
いろいろな苦労はありましたが、眠れないほど苦しんだことは2つですね。
1つは基本設計段階。最初はバラ色の夢を描くわけですが、いざ設計へ落とし込んでいくと、システムが成り立たず、描いた夢の実現が難しいことがだんだんと分かってきました。「とんでもないことに手を出してしまった」という恐怖感がのしかかってきました。それを乗り越えられたのは、実現させたいという強い思いです。たくさんの方々と協力して知恵を絞り、試行錯誤をし、その結果、H3ロケットの設計を完成させることができました。
2つ目は2020年5月、LE-9(H3ロケットの第1段エンジン)のトラブルのときです。最終的に、見通しがつくまでに2年を要しました。次々に課題が出てくる状態で、トンネルの出口すらみえないような精神的に辛い状態でした。そんな中でも、エンジニアたちは粘り強く対応してくれました。エンジニアは「課題がみえてくると燃える」という本性があるのでしょうか。そのがんばりに自分も助けられました。
──プロジェクトマネージャとしてどのようなことを心がけているのですか?
「プロジェクトは独りにしてならず」ですね。
プロジェクトは決して独りではできません。自分の役割は、外の方とコミュニケーションを取ることだと思っています。プロジェクトメンバーにも、「自分たちだけで仕事をしているわけではない。プロジェクトチームを越え、JAXA内外の多くの方々と共にひとつのゴールを目指していることを忘れないように」と伝えています。
プロジェクトマネージャという立場で心がけているのは、よく聞く耳、よく聞こえる耳を持つことです。さらにいえば、聞こえてきたことの中から本質を見つけ、大事なことを汲み取っていく。そしてそれを周りに伝える。プロジェクトマネージャとして、それをずっとやってきています。
──これまでご苦労されてきたことはどんなことですか?
いろいろな苦労はありましたが、眠れないほど苦しんだことは2つですね。
1つは基本設計段階。最初はバラ色の夢を描くわけですが、いざ設計へ落とし込んでいくと、システムが成り立たず、描いた夢の実現が難しいことがだんだんと分かってきました。「とんでもないことに手を出してしまった」という恐怖感がのしかかってきました。それを乗り越えられたのは、実現させたいという強い思いです。たくさんの方々と協力して知恵を絞り、試行錯誤をし、その結果、H3ロケットの設計を完成させることができました。
2つ目は2020年5月、LE-9(H3ロケットの第1段エンジン)のトラブルのときです。最終的に、見通しがつくまでに2年を要しました。次々に課題が出てくる状態で、トンネルの出口すらみえないような精神的に辛い状態でした。そんな中でも、エンジニアたちは粘り強く対応してくれました。エンジニアは「課題がみえてくると燃える」という本性があるのでしょうか。そのがんばりに自分も助けられました。
2014/3/17に三菱重工業秋田県田代試験場において実施されたLE-9原型エンジン燃焼器単体短秒時燃焼試験時の制御室内の様子。[提供:JAXA]
2014/3/17に三菱重工業秋田県田代試験場において実施されたLE-9原型エンジン燃焼器単体短秒時燃焼試験時の制御室内の様子。[提供:JAXA]
2014/3/17に三菱重工業秋田県田代試験場において実施されたLE-9原型エンジン燃焼器単体短秒時燃焼試験後の供試体の様子。[提供:JAXA]
2014/3/17に三菱重工業秋田県田代試験場において実施されたLE-9原型エンジン燃焼器単体短秒時燃焼試験後の供試体の様子。[提供:JAXA]
──ロケットが大好きで、ロケット開発に携わりたい!と思っている子どもたちに向けて、どんなこと、どんな勉強をすればいいのか、アドバイスをいただけますか?
まずはいろいろなことに興味を持つことですね。宇宙開発は理系といわれる学問だけではなくて、勉強すべき分野はたくさんあります。そして「これは何だろう」と思ったら、その理由を突き詰めて考えてみること。そういう習慣をつけることだと思います。また、一路始めたことはできるだけ続けていく努力も大切です。
2つ目は、周囲と力を合わせて何かを成し遂げることを目指して欲しいと思います。独りでできることには限界があります。みんなと一緒に何かを達成していくことが重要です。
そして3つ目は、「いちばん大事なことは何か」を考えることですね。本質を見抜く力です。世の中は複雑です。そして入ってくる情報の量はどんどん増えています。その中から重要なものを見抜く力が重要です。
──H3ロケットを応援している方々へのメッセージをお願いします。
長い長い道のりでしたが、ようやく、日本の未来を下支えするようなロケットが完成しつつあります。打上げ成功を実現できるよう、最後の最後の瞬間まで、がんばります。応援していてください。
──ロケットが大好きで、ロケット開発に携わりたい!と思っている子どもたちに向けて、どんなこと、どんな勉強をすればいいのか、アドバイスをいただけますか?
まずはいろいろなことに興味を持つことですね。宇宙開発は理系といわれる学問だけではなくて、勉強すべき分野はたくさんあります。そして「これは何だろう」と思ったら、その理由を突き詰めて考えてみること。そういう習慣をつけることだと思います。また、一路始めたことはできるだけ続けていく努力も大切です。
2つ目は、周囲と力を合わせて何かを成し遂げることを目指して欲しいと思います。独りでできることには限界があります。みんなと一緒に何かを達成していくことが重要です。
そして3つ目は、「いちばん大事なことは何か」を考えることですね。本質を見抜く力です。世の中は複雑です。そして入ってくる情報の量はどんどん増えています。その中から重要なものを見抜く力が重要です。
──H3ロケットを応援している方々へのメッセージをお願いします。
長い長い道のりでしたが、ようやく、日本の未来を下支えするようなロケットが完成しつつあります。打上げ成功を実現できるよう、最後の最後の瞬間まで、がんばります。応援していてください。
H3ロケット試験機1号機飛翔イメージ [提供:JAXA]
H3ロケット試験機1号機飛翔イメージ [提供:JAXA]
インタビュアー 寺薗淳也編集長
インタビュアー 寺薗淳也編集長
<編集長からの一言>
穏やかで、でも芯が強い。
岡田さんと話していると、その2つの点をものすごく強く感じます。
インタビューでもおっしゃっていましたが、人とのコミュニケーション、そして困難なプロジェクトを進める上で、この2点はものすごく重要なことだと思います。
大変なときもあった。でも心折れず、前を向いて進む。仕事の大きさに関わらず、何か私たちにとって重要なことを、優しく、力強く教えていただいたように思います。
みんなの汗と努力の結晶が力強く空に羽ばたいていく姿を、私もしっかりと自分の目に焼き付けたいと思います。Go! H3!
<編集長からの一言>
穏やかで、でも芯が強い。
岡田さんと話していると、その2つの点をものすごく強く感じます。
インタビューでもおっしゃっていましたが、人とのコミュニケーション、そして困難なプロジェクトを進める上で、この2点はものすごく重要なことだと思います。
大変なときもあった。でも心折れず、前を向いて進む。仕事の大きさに関わらず、何か私たちにとって重要なことを、優しく、力強く教えていただいたように思います。
みんなの汗と努力の結晶が力強く空に羽ばたいていく姿を、私もしっかりと自分の目に焼き付けたいと思います。Go! H3!