コラーゲンとは、私たちのからだをつくる大切な栄養素である「タンパク質」の一種です。からだをつくるタンパク質は、古いものは壊され、新しいものがつくられる「代謝」を繰り返しています。タンパク質の一種であるコラーゲンも同じです。骨格や筋肉がつくられていく成長期には、コラーゲンの量もどんどん増えていきます。しかし、20歳頃から代謝のスピードが落ちていき、S L. SchniderとR. R. Kohnの研究によると、50代になると20代の70％に減少するといわれています。

問題は量だけではありません。若い頃には代謝によってつくられていたフレッシュなコラーゲンが多くありますがそれが減少し、「古びた」コラーゲンの量が増えることで、わたしたちのからだや肌などに、様々なトラブルを引き起こします。

コラーゲンとは何か、また、「古びた」コラーゲンによるトラブルを解消するために、どのようにしていけばよいのかをご紹介していきましょう。

「コラーゲン」という言葉はよく耳にしても、それが一体何なのか、きちんと理解している人は少ないのではないでしょうか。人間の体重の約20％はタンパク質で、そのうちの30％がコラーゲンです。例えば、体重50kgの人ならタンパク質は10 kg、うちコラーゲンは３kgという計算になります。

人間のからだの中で最もコラーゲンが多い組織は皮膚で、全コラーゲンの約40％を占めるといわれています。コラーゲンには細胞と細胞をつなぐ作用がある他、からだの細胞や組織を「支える」「外との境界をつくる」という役割も果たしています。家でいうなら土台や柱などの「基盤」であり、人間のからだが形づくられるのはコラーゲンのおかげと言っても過言ではありません。

コラーゲンの特徴は、3重らせん構造であること。他のタンパク質には見られないこの構造こそが、コラーゲンが伸縮性やしなやかさに富んでいる理由なのです。コラーゲンの3重らせんをつくっている鎖1本1本は約1000個ものアミノ酸がつながってできています。コラーゲンはさらに強度を高めるため、分子と分子の間を様々な化合物で橋かけしており、らせんが容易にほどけないようになっています。この橋かけ構造のことを、「架橋」と言います。

さきほど、コラーゲンは加齢で減少する、とお伝えしましたが、今、美容や健康に高い関心を持つ人たちから注目されているのが「食べるコラーゲン」です。サプリメントやドリンク、粉末など様々な商品が販売されています。同じコラーゲンでも形によって消化吸収力に差があることを知っておきましょう。

●コラーゲン

コラーゲンは肉や魚の骨、皮などに多く含まれています。生の状態のコラーゲンの分子量は3本の鎖の合計で約30万にも及びます。そのため、消化されにくく、熱にも溶けにくいのが特徴です。「トリプトファン」という必須アミノ酸が含まれておらず、含まれているアミノ酸に偏りがあるため、かつては栄養学的には良質なタンパク質とはいえないとされていました。しかし、近年はからだに入ってから、ホルモンやビタミンのような機能を発揮するのではないか、と期待され研究が進んでいます。

●ゼラチン

ゼラチンは、生のコラーゲンを加熱して抽出、精製したものです。魚のアラや手羽先など骨付きの肉を煮ると、骨や皮が熱によって変性し、コラーゲンが溶け出てきます。それが冷えてゼリーのように固まる「煮こごり」などがゼラチンで、生のコラーゲンよりも消化されやすくなります。

●コラーゲンペプチド

食品からコラーゲンを抽出して、酵素（タンパク質分解酵素）を使って分解、精製して水に溶けやすくしたものがコラーゲンペプチドです。生のコラーゲンやゼラチンよりも手軽にたくさん摂取することができます。低分子化されているので、消化吸収速度が優れていることが大きな特徴です。市販されている「コラーゲン入り」のサプリメントの多くは、コラーゲンペプチドが使われています。

さて、加齢で減少するコラーゲンの話に戻しましょう。老化による健康トラブルの原因としてよく知られているのが「酸化」です。からだの中の活性酸素が細胞を傷つけてしまうもので、「からだがサビる」などと表現されることもあります。鉄が酸素で錆びて、ボロボロになるのと同じような現象がからだの中でも起きているのです。

加えて、近年注目されている「糖化」も老化の主な原因の一つです。糖化とは、毎日の食事から取り入れる糖の一部がからだの中でタンパク質中のアミノ酸と反応して、AGEs（エージーイーズ: 終末糖化産物）と呼ばれる老化物質が増えることです。新陳代謝の活発な若い世代ならAGEsは自然に排泄されますが、年齢を重ねると共にその機能も徐々に低下してしまいます。

先ほど、コラーゲンを補強するために「架橋」というパーツが必要という話をしました。糖化でその架橋にAGEsが付くと、「悪い架橋」になってしまいます。悪い架橋が付いたコラーゲンはゆがんだり壊れたりして、コラーゲンの量だけでなく、質も低下してしまいます。また、分解されにくくなり、代謝がスムーズに行われにくくなります。

酸化と糖化は全身の老化に関係します。もちろん、お肌も例外ではありません。

皮膚は最も外側にある「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つの層に分かれています。中でも、ハリのある肌をキープするためには真皮が健康でなければなりません。真皮は水をたっぷり含んだスポンジのようなもので、真皮の成分の70％をコラーゲンが占めています。肌のハリの決め手であるコラーゲンの量が減少し、古くなると弾力性や柔軟性を失って硬くなるため、肌が全体的にたるみ、頬や口角が下がっていきます。

また、年齢と共に目尻や目の下、眉間にしわができたり、口元のほうれい線が深くなっていったりするのも、コラーゲンの量が減少し、古くなってしまうことが深く関係しています。

コラーゲンの劣化の大きな原因は、加齢による代謝スピードの低下です。‟新陳代謝”というと、新しいものをつくると考えがちですが、代謝は「壊す」「つくる」のサイクルで行われます。つまり、古いものを壊すという事も大切なのです。この「壊す」「つくる」のサイクルをターンオーバーと呼びます。

年齢を重ねると、この「壊す」工程がスムーズにいかなくなります。錆びついてしまったネジが回らないのと同様に、糖化や酸化によって古びたコラーゲンは、分解されず古いまま体内に残ります。本来、古びたコラーゲンは代謝によってどんどん壊されなければいけないのに、壊されずに古いまま残っているため、肌のつややハリがなくなり、しわが増えていくというわけです。

肌の老化をストップするためには、古くなったコラーゲンを「壊す」「つくる」のループに再び入れてあげることが大切です。肌の古いコラーゲンを壊し、新しく産生しているのが線維芽（せんいが）細胞ですが、実はコラーゲンペプチドは体に吸収されやすいだけではなく、この線維芽細胞にシグナル（命令）を出して活性化し、コラーゲン代謝を促進する働きがあることが分かっています。そのため、コラーゲンペプチドを外から摂ることが重要なのです。

代謝スピードが落ちて、からだの中で「壊す」作業が行われないなら、外から働きかけて代謝を促進する命令を出せるようにすればよい……その役割を担っているのがコラーゲンペプチドですが、近年の研究では、コラーゲンペプチドの命令によって、ヒアルロン酸の合成も促している可能性があることも分かってきました。また、肌のハリだけでなく、隠れシミやもろい爪の改善、髪にコシが出る、毛髪の太さが増すなどの効果があったという研究報告もあります。

コラーゲンペプチドを1日5g以上、4週間以上摂取すると、潤いとハリのある肌状態が得られるといわれています。大切なのは毎日細胞に命令を出してコラーゲン代謝を活発にし続けることです。普段の食事では不足しがちなコラーゲンペプチドはサプリメントで賢く補いましょう。

残念ながら、加齢による代謝サイクルの低下は避けられません。しかし、細胞に命令を与えて活性化させる作用があるコラーゲンペプチドを摂取することで、再びうまく回り出す可能性があります。肌のたるみやハリのなさが気になる人は、コラーゲンペプチドの摂取を毎日の習慣にすることから始めてみてはいかがでしょうか。