「中性脂肪」や「内臓脂肪」「皮下脂肪」など、「○○脂肪」と名前がつくものはいくつかありますが、その違いをしっかり理解できていますか?
例えば、健診などで指摘される「中性脂肪」は体を動かすエネルギー源として、人間には欠かせない脂肪ですが、増えすぎると動脈硬化のリスクを高めます。また、「内臓脂肪」はメタボリックシンドロームを引き起こすといわれています。今回は、よく耳にする「中性脂肪」と「内臓脂肪」を中心に、脂肪の種類と体への影響を詳しく解説します。
「中性脂肪」や「内臓脂肪」「皮下脂肪」など、「○○脂肪」と名前がつくものはいくつかありますが、その違いをしっかり理解できていますか?
例えば、健診などで指摘される「中性脂肪」は体を動かすエネルギー源として、人間には欠かせない脂肪ですが、増えすぎると動脈硬化のリスクを高めます。また、「内臓脂肪」はメタボリックシンドロームを引き起こすといわれています。今回は、よく耳にする「中性脂肪」と「内臓脂肪」を中心に、脂肪の種類と体への影響を詳しく解説します。
監修
監修
結核予防会 総合健診推進センター所長
宮崎 滋 先生(みやざき・しげる)
結核予防会 総合健診推進センター所長
宮崎 滋 先生(みやざき・しげる)
1971年東京医科歯科大学医学部卒業。医学博士。糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの治療に従事。東京医科歯科大学医学部臨床教授、東京逓信病院外来統括部長・内科部長・副院長を経て2015年より現職。日本内科学会認定医・指導医、日本肥満学会副理事長・評議員など。編著書は『ダイエットの方程式』(主婦と生活社)、『肥満症教室』(新興医学出版社)など多数。
1971年東京医科歯科大学医学部卒業。医学博士。糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの治療に従事。東京医科歯科大学医学部臨床教授、東京逓信病院外来統括部長・内科部長・副院長を経て2015年より現職。日本内科学会認定医・指導医、日本肥満学会副理事長・評議員など。編著書は『ダイエットの方程式』(主婦と生活社)、『肥満症教室』(新興医学出版社)など多数。
私たちが食事で摂ったエネルギーが消費されずに余ると、肝臓で「中性脂肪」が合成されます。この中性脂肪は血液中を流れて、「体脂肪」を構成する脂肪細胞(白色脂肪細胞)の中に蓄えられていきます。
体脂肪とは体に蓄えられた脂肪の総称で、1つひとつの脂肪細胞の中身のほとんどは、「中性脂肪」なのです。
私たちが食事で摂ったエネルギーが消費されずに余ると、肝臓で「中性脂肪」が合成されます。この中性脂肪は血液中を流れて、「体脂肪」を構成する脂肪細胞(白色脂肪細胞)の中に蓄えられていきます。
体脂肪とは体に蓄えられた脂肪の総称で、1つひとつの脂肪細胞の中身のほとんどは、「中性脂肪」なのです。
中性脂肪を蓄える「体脂肪」は、つく場所によって「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けられます。
実は、脂肪細胞は全身に均等に存在しているわけではなく、偏って分布しています。脂肪細胞が多く分布している場所は、皮膚の下と内臓の周りです。体脂肪のうち、内臓の周りの脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪を「内臓脂肪」、皮膚の下の脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪を「皮下脂肪」と呼んでいます。
健康診断の血液検査で測定している「中性脂肪」とは、「血液中を移動している中性脂肪」を指します。この数値が高いということは、エネルギーが過剰状態だということ。肝臓から脂肪細胞への脂肪の供給量が増えているということです。
また、メジャーで腹囲(おへそ周り)を測るのは、「内臓脂肪量」を推測するためです。男性は腹囲が85cm、女性は90cmあると、内臓脂肪の断面積が100cm2に相当します。内臓脂肪の断面積が100cm2を超えると、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病を招くことが分かっているため、これが基準となっているのです。
中性脂肪と内臓脂肪が健診で重視される理由は、健康への影響が大きい脂肪のためです。それぞれの脂肪の役割とリスクについて、詳しく見ていきましょう。
中性脂肪を蓄える「体脂肪」は、つく場所によって「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けられます。
実は、脂肪細胞は全身に均等に存在しているわけではなく、偏って分布しています。脂肪細胞が多く分布している場所は、皮膚の下と内臓の周りです。体脂肪のうち、内臓の周りの脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪を「内臓脂肪」、皮膚の下の脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪を「皮下脂肪」と呼んでいます。
健康診断の血液検査で測定している「中性脂肪」とは、「血液中を移動している中性脂肪」を指します。この数値が高いということは、エネルギーが過剰状態だということ。肝臓から脂肪細胞への脂肪の供給量が増えているということです。
また、メジャーで腹囲(おへそ周り)を測るのは、「内臓脂肪量」を推測するためです。男性は腹囲が85cm、女性は90cmあると、内臓脂肪の断面積が100cm2に相当します。内臓脂肪の断面積が100cm2を超えると、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病を招くことが分かっているため、これが基準となっているのです。
中性脂肪と内臓脂肪が健診で重視される理由は、健康への影響が大きい脂肪のためです。それぞれの脂肪の役割とリスクについて、詳しく見ていきましょう。
中性脂肪は「トリグリセリド」ともいい、略してTGと表記されることもあります。食事から摂取される他、肝臓でも合成され、血液によって全身に運ばれて臓器や筋肉が動くためのエネルギー源として使われています。
私たちが体を動かす時は、まず筋肉内のエネルギーが使われ、次に血液中の糖質が使われます。糖質が不足すると、蓄えられていた中性脂肪が分解されて血液中に放出され、細胞や筋肉、心臓などの組織でエネルギーとして使用されます。
中性脂肪はこの他にも、体温の維持、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収、内臓の保護・固定など、大切な役割を果たしています。
肥満の原因である「中性脂肪」は、とかく悪者扱いされがちですが、私たちの体を動かすエネルギー源で、なくてはならないものです。問題は、エネルギーとして使われずに余った分が、「内臓脂肪」や「皮下脂肪」として蓄えられることにあります。
中性脂肪は「トリグリセリド」ともいい、略してTGと表記されることもあります。食事から摂取される他、肝臓でも合成され、血液によって全身に運ばれて臓器や筋肉が動くためのエネルギー源として使われています。
私たちが体を動かす時は、まず筋肉内のエネルギーが使われ、次に血液中の糖質が使われます。糖質が不足すると、蓄えられていた中性脂肪が分解されて血液中に放出され、細胞や筋肉、心臓などの組織でエネルギーとして使用されます。
中性脂肪はこの他にも、体温の維持、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収、内臓の保護・固定など、大切な役割を果たしています。
肥満の原因である「中性脂肪」は、とかく悪者扱いされがちですが、私たちの体を動かすエネルギー源で、なくてはならないものです。問題は、エネルギーとして使われずに余った分が、「内臓脂肪」や「皮下脂肪」として蓄えられることにあります。
内臓脂肪は腹筋の内側で、胃や腸などの消化器のほとんどが収まっているお腹内部の空洞「腹腔(ふくくう)」の内部につく脂肪のことです。内臓脂肪は、男性や閉経後の女性につきやすい傾向があります。
内臓脂肪の脂肪細胞は、ただ中性脂肪をため込むだけではなく、脂肪細胞から様々な生理活性物質(ホルモンに似た物質)を分泌しています。内臓脂肪が増えすぎると、この分泌バランスが崩れ、生活習慣病を招く物質が増え、防ぐ物質が減ってしまいます。そのため、内臓脂肪が増えると生活習慣病を招きやすいのです。
しかし、内臓脂肪はつきやすい反面、エネルギーとして燃焼しやすく、減りやすいという特徴があります。そのため、少しのダイエットでも減少が期待できます。
内臓脂肪は腹筋の内側で、胃や腸などの消化器のほとんどが収まっているお腹内部の空洞「腹腔(ふくくう)」の内部につく脂肪のことです。内臓脂肪は、男性や閉経後の女性につきやすい傾向があります。
内臓脂肪の脂肪細胞は、ただ中性脂肪をため込むだけではなく、脂肪細胞から様々な生理活性物質(ホルモンに似た物質)を分泌しています。内臓脂肪が増えすぎると、この分泌バランスが崩れ、生活習慣病を招く物質が増え、防ぐ物質が減ってしまいます。そのため、内臓脂肪が増えると生活習慣病を招きやすいのです。
しかし、内臓脂肪はつきやすい反面、エネルギーとして燃焼しやすく、減りやすいという特徴があります。そのため、少しのダイエットでも減少が期待できます。
皮膚の下にある皮下組織につく脂肪のことです。皮下脂肪は、生理のある女性や子どもにつきやすい傾向があります。
皮下脂肪は、エネルギーを貯蔵し、外からの衝撃に対するクッションの役割を果たします。特に脂肪がつきやすいのが、お尻や太もも、腰回りです。脂肪が燃焼しにくいため、一度ついてしまうと減りにくいという特徴があります。
皮膚の下にある皮下組織につく脂肪のことです。皮下脂肪は、生理のある女性や子どもにつきやすい傾向があります。
皮下脂肪は、エネルギーを貯蔵し、外からの衝撃に対するクッションの役割を果たします。特に脂肪がつきやすいのが、お尻や太もも、腰回りです。脂肪が燃焼しにくいため、一度ついてしまうと減りにくいという特徴があります。
脂肪は、私たちの体に欠かすことのできないものですが、過剰に蓄積されると、様々な病気を引き起こします。3種類の脂肪について、その体への影響と危険性を解説します。
① 中性脂肪が増えすぎると……
中性脂肪の基準値は50~149mg/dL。この数値を超えると、高トリグリセリド血症という「脂質異常症」と診断されます。
脂質異常症は、高血圧や高血糖、喫煙などと重なると動脈硬化を加速させ、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など、主要な血管の閉塞につながります。
② 内臓脂肪が増えすぎると……
内臓脂肪が増えると、高血圧、糖尿病、脂質異常症など「生活習慣病」の原因となります。
内臓脂肪の過剰な蓄積をきっかけに生活習慣病が起こり、やがては心臓病や脳卒中といった命の危険すらある怖い病気を引き起こしかねません。また、がんや認知症にも内臓脂肪がかかわっていることが分かってきました。
③ 皮下脂肪が増えすぎると……
皮下脂肪は、多少増えても、内臓脂肪のように命にかかわる病気を引き起こすリスクは少ないものの、皮下脂肪の重みで膝や股関節、背骨などに負担がかかり、関節の疾患を招く恐れがあります。
また、首周りについた脂肪によって気道が圧迫され、睡眠中に一時的に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を引き起こすこともあります。
内臓脂肪に比べると減らしにくい脂肪のため、ゆっくり時間かけて、長期戦で体重を減らすダイエットを心がけましょう。
脂肪は、私たちの体に欠かすことのできないものですが、過剰に蓄積されると、様々な病気を引き起こします。3種類の脂肪について、その体への影響と危険性を解説します。
① 中性脂肪が増えすぎると……
中性脂肪の基準値は50~149mg/dL。この数値を超えると、高トリグリセリド血症という「脂質異常症」と診断されます。
脂質異常症は、高血圧や高血糖、喫煙などと重なると動脈硬化を加速させ、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など、主要な血管の閉塞につながります。
② 内臓脂肪が増えすぎると……
内臓脂肪が増えると、高血圧、糖尿病、脂質異常症など「生活習慣病」の原因となります。
内臓脂肪の過剰な蓄積をきっかけに生活習慣病が起こり、やがては心臓病や脳卒中といった命の危険すらある怖い病気を引き起こしかねません。また、がんや認知症にも内臓脂肪がかかわっていることが分かってきました。
③ 皮下脂肪が増えすぎると……
皮下脂肪は、多少増えても、内臓脂肪のように命にかかわる病気を引き起こすリスクは少ないものの、皮下脂肪の重みで膝や股関節、背骨などに負担がかかり、関節の疾患を招く恐れがあります。
また、首周りについた脂肪によって気道が圧迫され、睡眠中に一時的に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を引き起こすこともあります。
内臓脂肪に比べると減らしにくい脂肪のため、ゆっくり時間かけて、長期戦で体重を減らすダイエットを心がけましょう。
食事で摂ったエネルギーが余ると、最初に増えるのが、血中の「中性脂肪」です。次に「内臓脂肪」、最後に「皮下脂肪」という順で増えていきます(ただし、生理がある女性は、女性ホルモンの働きで、中性脂肪が皮下脂肪としてたまりやすいという特徴があります)。
一方、エネルギーとして使われる時も、同様の順番で燃焼していきます。中性脂肪や内臓脂肪がつきやすく、減らしやすい脂肪といわれるのはこのためです。
中性脂肪や内臓脂肪は、摂取するエネルギー量を少し減らせば、比較的簡単に減らせます。体重の3%を減らすだけで、糖尿病や高血圧、脂質異常症の数値に改善が見られる※ことも分かっています。
食事で摂ったエネルギーが余ると、最初に増えるのが、血中の「中性脂肪」です。次に「内臓脂肪」、最後に「皮下脂肪」という順で増えていきます(ただし、生理がある女性は、女性ホルモンの働きで、中性脂肪が皮下脂肪としてたまりやすいという特徴があります)。
一方、エネルギーとして使われる時も、同様の順番で燃焼していきます。中性脂肪や内臓脂肪がつきやすく、減らしやすい脂肪といわれるのはこのためです。
中性脂肪や内臓脂肪は、摂取するエネルギー量を少し減らせば、比較的簡単に減らせます。体重の3%を減らすだけで、糖尿病や高血圧、脂質異常症の数値に改善が見られる※ことも分かっています。
※出典:厚生労働科学研究「生活習慣病予防活動・疾病管理による健康指標に及ぼす影響と医療費適正化効果に関する研究」
※出典:厚生労働科学研究「生活習慣病予防活動・疾病管理による健康指標に及ぼす影響と医療費適正化効果に関する研究」
脂肪は蓄積される場所によって、健康へのリスクや、エネルギーとして燃焼する順番が違います。特に、中性脂肪や内臓脂肪は生活習慣病の元になり、やがては命にかかわる危険のある脂肪ですが、真っ先に使われる脂肪でもあります。どちらも「つきやすく、減らしやすい」脂肪ですから、生活習慣改善を始めて、健康な体を取り戻しましょう。
脂肪は蓄積される場所によって、健康へのリスクや、エネルギーとして燃焼する順番が違います。特に、中性脂肪や内臓脂肪は生活習慣病の元になり、やがては命にかかわる危険のある脂肪ですが、真っ先に使われる脂肪でもあります。どちらも「つきやすく、減らしやすい」脂肪ですから、生活習慣改善を始めて、健康な体を取り戻しましょう。