俗にいう「いぼ痔(痔核:じかく)」や「切れ痔(裂肛:れっこう)」に比べると、「あな痔(痔瘻:じろう)」は聞いたことがない人もいるかもしれません。痔瘻は痔の代表的な種類の1つで、どちらかというと男性に多いですが、女性でもなることがあります。今回は、痔瘻の主な原因や症状から、痔瘻になりやすい人の特徴など、痔瘻について分かりやすく解説します。
俗にいう「いぼ痔(痔核:じかく)」や「切れ痔(裂肛:れっこう)」に比べると、「あな痔(痔瘻:じろう)」は聞いたことがない人もいるかもしれません。痔瘻は痔の代表的な種類の1つで、どちらかというと男性に多いですが、女性でもなることがあります。今回は、痔瘻の主な原因や症状から、痔瘻になりやすい人の特徴など、痔瘻について分かりやすく解説します。
<監修>
<監修>
馬場真木子先生
日本橋レディースクリニック院長
馬場真木子先生
日本橋レディースクリニック院長
ばば・まきこ
杏林大学医学部卒業後、同大学病院第一外科入局。松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長などを経て、現職。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医、臨床肛門病学会技能指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医など。
ばば・まきこ
杏林大学医学部卒業後、同大学病院第一外科入局。松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長などを経て、現職。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医、臨床肛門病学会技能指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医など。
痔瘻(じろう)は、おしりに膿のトンネルができて化膿を繰り返す病気です。おしりに穴ができることから、「あな痔」とも呼ばれます。まずは痔瘻(じろう)がどのように発症するのか見ていきましょう。
痔瘻(じろう)は、おしりに膿のトンネルができて化膿を繰り返す病気です。おしりに穴ができることから、「あな痔」とも呼ばれます。まずは痔瘻(じろう)がどのように発症するのか見ていきましょう。
肛門と直腸の境目である歯状線(しじょうせん)には「肛門陰窩(こうもんいんか)」と呼ばれる小さなくぼみがあり、粘液を出す「肛門腺」とつながっています。小さなくぼみなので、通常はここに便が入り込むことはありませんが、下痢で水のような便が出た時などに入り込み、肛門腺が大腸菌などの細菌に感染してしまうことがあります。
肛門と直腸の境目である歯状線(しじょうせん)には「肛門陰窩(こうもんいんか)」と呼ばれる小さなくぼみがあり、粘液を出す「肛門腺」とつながっています。小さなくぼみなので、通常はここに便が入り込むことはありませんが、下痢で水のような便が出た時などに入り込み、肛門腺が大腸菌などの細菌に感染してしまうことがあります。
体の抵抗力が低下していたり、ストレスで免疫力が落ちていたりすると、感染から炎症を起こし、化膿して肛門腺に膿がたまり、痔瘻(じろう)の前段階である、肛門周囲膿瘍(のうよう)を発症します。
体の抵抗力が低下していたり、ストレスで免疫力が落ちていたりすると、感染から炎症を起こし、化膿して肛門腺に膿がたまり、痔瘻(じろう)の前段階である、肛門周囲膿瘍(のうよう)を発症します。
この症状が繰り返されると、膿が皮膚を破って排出する出口(2次口)ができてしまい、細菌の入口と膿の出口が1本のトンネルのように貫通してしまいます。このような膿のトンネルができるのが痔瘻(じろう)です。膿のトンネルを瘻管(ろうかん)といいます。瘻管はおしりの中に残り続けるため、何度も細菌が侵入しては膿が出る……という状態を繰り返してしまうことになるのです。
この症状が繰り返されると、膿が皮膚を破って排出する出口(2次口)ができてしまい、細菌の入口と膿の出口が1本のトンネルのように貫通してしまいます。このような膿のトンネルができるのが痔瘻(じろう)です。膿のトンネルを瘻管(ろうかん)といいます。瘻管はおしりの中に残り続けるため、何度も細菌が侵入しては膿が出る……という状態を繰り返してしまうことになるのです。
痔瘻(じろう)は繰り返す下痢が原因になることが多いと考えられています。また、切れ痔(れっこう)の傷から菌が入り込んで細菌感染を起こすこともあります。そのため、痔瘻(じろう)になりやすいのは、頻繁に下痢をする人、切れ痔(裂肛)の傷が深くなっている人などです。以下に心当たりのある人は気をつけましょう。
痔瘻(じろう)は繰り返す下痢が原因になることが多いと考えられています。また、切れ痔(れっこう)の傷から菌が入り込んで細菌感染を起こすこともあります。そのため、痔瘻(じろう)になりやすいのは、頻繁に下痢をする人、切れ痔(裂肛)の傷が深くなっている人などです。以下に心当たりのある人は気をつけましょう。
痔瘻(じろう)は下痢気味の人に起こりやすい傾向があり、どちらかというと男性に多い疾患といわれています。しかし、日頃から下痢をしやすい人は女性も注意が必要です。また、便秘が慢性化している女性の中には、刺激性の下剤を服用し続けて下痢になっている人も少なくないでしょう。このような場合も、注意が必要です。
痔瘻(じろう)は下痢気味の人に起こりやすい傾向があり、どちらかというと男性に多い疾患といわれています。しかし、日頃から下痢をしやすい人は女性も注意が必要です。また、便秘が慢性化している女性の中には、刺激性の下剤を服用し続けて下痢になっている人も少なくないでしょう。このような場合も、注意が必要です。
一時的な切れ痔(急性裂肛)では、傷ができているのは肛門の皮膚(肛門上皮)だけで、その下の筋肉(肛門括約筋)には傷がないことが多いのですが、肛門は毎日便が通るため、本来ならば治るはずの傷がふさがらず、慢性化することがあります。
特に便秘がちで、切れ痔(裂肛)を繰り返している人は、傷が深くなって潰瘍になってしまうことも。深い傷がいつまでも治らないと、そこから菌が入り込み、痔瘻(じろう)に発展してしまうことがあります。そのため、切れ痔(裂肛)が慢性化し、傷が深くなっている人も痔瘻に気をつけなくてはなりません。
一時的な切れ痔(急性裂肛)では、傷ができているのは肛門の皮膚(肛門上皮)だけで、その下の筋肉(肛門括約筋)には傷がないことが多いのですが、肛門は毎日便が通るため、本来ならば治るはずの傷がふさがらず、慢性化することがあります。
特に便秘がちで、切れ痔(裂肛)を繰り返している人は、傷が深くなって潰瘍になってしまうことも。深い傷がいつまでも治らないと、そこから菌が入り込み、痔瘻(じろう)に発展してしまうことがあります。そのため、切れ痔(裂肛)が慢性化し、傷が深くなっている人も痔瘻に気をつけなくてはなりません。
過度な飲酒は下痢を誘発しますから、下痢気味の人は、お酒は適量を心がけましょう。また、ストレスによる免疫力の低下は、膿傷(のうよう)を形成しやすい状態をつくることに……。日頃からストレス解消に努め、ストレスと上手につき合うことも痔瘻(じろう)の予防につながります。
過度な飲酒は下痢を誘発しますから、下痢気味の人は、お酒は適量を心がけましょう。また、ストレスによる免疫力の低下は、膿傷(のうよう)を形成しやすい状態をつくることに……。日頃からストレス解消に努め、ストレスと上手につき合うことも痔瘻(じろう)の予防につながります。
痔瘻(じろう)の前段階である肛門周囲膿瘍(のうよう)は、肛門周辺の皮膚が腫れて激しい痛みを伴います。痛みはズキンズキンという一定のリズムがあり、触れるとさらに痛みが増します。膿が原因で発熱することもあります。腫れている部分が自然に破れて膿が出ることもありますが、ほとんどは医療機関で腫れた部分の皮膚を切開して膿を出します。膿が出ると痛みはなくなります。
痔瘻(じろう)の前段階である肛門周囲膿瘍(のうよう)は、肛門周辺の皮膚が腫れて激しい痛みを伴います。痛みはズキンズキンという一定のリズムがあり、触れるとさらに痛みが増します。膿が原因で発熱することもあります。腫れている部分が自然に破れて膿が出ることもありますが、ほとんどは医療機関で腫れた部分の皮膚を切開して膿を出します。膿が出ると痛みはなくなります。
痔瘻(じろう)を繰り返すと瘻管ができてしまい、炎症が継続すると膿の出口(2次口)から絶えず膿や分泌物が出て、下着を汚すようになります。また、おしりに違和感があったり、しこりが気になったりします。
なお、瘻管(ろうかん)のできかたは様々で、できる場所によって痔瘻は次の4つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を知っておきましょう。
痔瘻(じろう)を繰り返すと瘻管ができてしまい、炎症が継続すると膿の出口(2次口)から絶えず膿や分泌物が出て、下着を汚すようになります。また、おしりに違和感があったり、しこりが気になったりします。
なお、瘻管(ろうかん)のできかたは様々で、できる場所によって痔瘻は次の4つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を知っておきましょう。
痔瘻(じろう)を繰り返すと瘻管ができてしまい、炎症が継続すると膿の出口(2次口)から絶えず膿や分泌物が出て、下着を汚すようになります。また、おしりに違和感があったり、しこりが気になったりします。
なお、瘻管(ろうかん)のできかたは様々で、できる場所によって痔瘻は次の4つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を知っておきましょう。
痔瘻(じろう)を繰り返すと瘻管ができてしまい、炎症が継続すると膿の出口(2次口)から絶えず膿や分泌物が出て、下着を汚すようになります。また、おしりに違和感があったり、しこりが気になったりします。
なお、瘻管(ろうかん)のできかたは様々で、できる場所によって痔瘻は次の4つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を知っておきましょう。
瘻管(ろうかん)と呼ばれる膿のトンネルが肛門上皮の下にあり、筋肉は貫いていない痔瘻(じろう)です。「皮下痔瘻」「粘膜下痔瘻」とも呼ばれます。切れ痔(裂肛)の裂け目に便が詰まることで起きるケースが多く、他の痔瘻(じろう)と違い、肛門腺とは関係のない場所にできます。
瘻管(ろうかん)と呼ばれる膿のトンネルが肛門上皮の下にあり、筋肉は貫いていない痔瘻(じろう)です。「皮下痔瘻」「粘膜下痔瘻」とも呼ばれます。切れ痔(裂肛)の裂け目に便が詰まることで起きるケースが多く、他の痔瘻(じろう)と違い、肛門腺とは関係のない場所にできます。
内肛門括約筋と外肛門括約筋という2つの筋肉の間を瘻管(膿のトンネル)が走るタイプの痔瘻(じろう)です。筋間痔瘻(きんかんじろう)とも呼ばれ、痔瘻(じろう)の中で最も多いのがこのタイプです。瘻管の深さによって、歯状線より上にできるものを「高位筋間痔瘻」、下にできるものを「低位筋間痔瘻」といいます。
低位筋間痔瘻は膿がたまると自然におしりの皮膚に膿の出口(2次口)ができて、膿が排出されることがあります。一方、高位筋間痔瘻は、膿のトンネルが下ではなく上にある直腸に向かって伸びていきます。膿のトンネルが体の奥へ向かっていくため、膿の出口が皮膚側に自然にできることはありません。そのため、肛門の奥に違和感や痛みを生じる場合があります。
内肛門括約筋と外肛門括約筋という2つの筋肉の間を瘻管(膿のトンネル)が走るタイプの痔瘻(じろう)です。筋間痔瘻(きんかんじろう)とも呼ばれ、痔瘻(じろう)の中で最も多いのがこのタイプです。瘻管の深さによって、歯状線より上にできるものを「高位筋間痔瘻」、下にできるものを「低位筋間痔瘻」といいます。
低位筋間痔瘻は膿がたまると自然におしりの皮膚に膿の出口(2次口)ができて、膿が排出されることがあります。一方、高位筋間痔瘻は、膿のトンネルが下ではなく上にある直腸に向かって伸びていきます。膿のトンネルが体の奥へ向かっていくため、膿の出口が皮膚側に自然にできることはありません。そのため、肛門の奥に違和感や痛みを生じる場合があります。
瘻管(膿のトンネル)が外肛門括約筋を越えて伸びていきます。坐骨直腸窩痔瘻(ざこつちょくちょうかじろう)とも呼ばれます。Ⅱ型痔瘻に次いで頻度の多い痔瘻(じろう)です。
瘻管(膿のトンネル)が外肛門括約筋を越えて伸びていきます。坐骨直腸窩痔瘻(ざこつちょくちょうかじろう)とも呼ばれます。Ⅱ型痔瘻に次いで頻度の多い痔瘻(じろう)です。
膿のトンネルが外肛門括約筋の奥にある肛門挙筋(こうもんきょきん)を貫いて進行します。骨盤直腸窩痔瘻(こつばんちょくちょうかじろう)とも呼ばれます。発生はまれです。
膿のトンネルが外肛門括約筋の奥にある肛門挙筋(こうもんきょきん)を貫いて進行します。骨盤直腸窩痔瘻(こつばんちょくちょうかじろう)とも呼ばれます。発生はまれです。
一度、痔瘻(じろう)になってしまうと、残念ながら自然には治らないため、手術が必要になります。膿のトンネルである瘻管をなくす手術をしないことには、何度でも繰り返してしまうからです。10年以上といった長期間にわたり、複雑で炎症を繰り返す痔瘻を放置してしまうと、ごくまれに「痔瘻がん」に発展するリスクもあります。なるべく早い段階で肛門科を受診して、専門医の治療を受けるようにしましょう。
一度、痔瘻(じろう)になってしまうと、残念ながら自然には治らないため、手術が必要になります。膿のトンネルである瘻管をなくす手術をしないことには、何度でも繰り返してしまうからです。10年以上といった長期間にわたり、複雑で炎症を繰り返す痔瘻を放置してしまうと、ごくまれに「痔瘻がん」に発展するリスクもあります。なるべく早い段階で肛門科を受診して、専門医の治療を受けるようにしましょう。
痔瘻(じろう)は慢性下痢症の人は特に注意が必要な疾患です。比較的男性に多いですが、下痢気味の女性や、切れ痔(裂肛)を放置している人もかかる可能性があるので注意しましょう。下着に薄黄色や茶褐色のベタベタした汁のようなものが頻繁についているようなら、痔瘻(じろう)ができている可能性があります。思い当たる場合は、早めに受診することが大切です。
痔瘻(じろう)は慢性下痢症の人は特に注意が必要な疾患です。比較的男性に多いですが、下痢気味の女性や、切れ痔(裂肛)を放置している人もかかる可能性があるので注意しましょう。下着に薄黄色や茶褐色のベタベタした汁のようなものが頻繁についているようなら、痔瘻(じろう)ができている可能性があります。思い当たる場合は、早めに受診することが大切です。