いぼ痔(痔核)の原因

いぼ痔(痔核)の原因

痔とは、肛門や肛門周辺にできる病気の総称です。「痔核(じかく=いぼ痔)」「裂肛(れっこう=切れ痔)」「痔瘻(じろう=あな痔)」が三大疾患といわれており、その中でもいぼ痔(痔核)は、最も多い疾患です。便秘がちで排便の際に強くいきんだり、長時間同じ姿勢をとり続けて肛門に負担がかかったりすることで生じるといわれています。 いぼ痔(痔核)ができると、出血や残便感、いぼが肛門から出る脱出などが起こり、日常生活に支障を来すこともあります。この記事では、いぼ痔(痔核)の原因や主な症状、内痔核と外痔核の違いについて解説します。

痔とは、肛門や肛門周辺にできる病気の総称です。「痔核(じかく=いぼ痔)」「裂肛(れっこう=切れ痔)」「痔瘻(じろう=あな痔)」が三大疾患といわれており、その中でもいぼ痔(痔核)は、最も多い疾患です。便秘がちで排便の際に強くいきんだり、長時間同じ姿勢をとり続けて肛門に負担がかかったりすることで生じるといわれています。 いぼ痔(痔核)ができると、出血や残便感、いぼが肛門から出る脱出などが起こり、日常生活に支障を来すこともあります。この記事では、いぼ痔(痔核)の原因や主な症状、内痔核と外痔核の違いについて解説します。

<監修>

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馬場真木子先生 日本橋レディースクリニック院長 馬場真木子先生 日本橋レディースクリニック院長

馬場真木子先生
日本橋レディースクリニック院長

馬場真木子先生
日本橋レディースクリニック院長

ばば・まきこ
杏林大学医学部卒業後、同大学病院第一外科入局。松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長などを経て、現職。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医、臨床肛門病学会技能指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医など。

ばば・まきこ
杏林大学医学部卒業後、同大学病院第一外科入局。松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長などを経て、現職。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医、臨床肛門病学会技能指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医など。

いぼ痔(痔核)とは?

いぼ痔(痔核)とは?

いぼ痔(痔核)とは? いぼ痔(痔核)とは?

「おしりに違和感があったので触ってみたら、出っ張りがあった」――その症状はもしかしたら「いぼ痔」かもしれません。

痔は大きく3つのタイプに分けられます。一般的に「いぼ痔」と呼ばれる痔核(じかく)、「切れ痔」と呼ばれる裂肛(れっこう)、そして「あな痔」と呼ばれる痔瘻(じろう)の3つです。この中で患者数が最も多いのが、いぼ痔=痔核です。男女問わず、最もなりやすいタイプの痔といえます。

「おしりに違和感があったので触ってみたら、出っ張りがあった」――その症状はもしかしたら「いぼ痔」かもしれません。

痔は大きく3つのタイプに分けられます。一般的に「いぼ痔」と呼ばれる痔核(じかく)、「切れ痔」と呼ばれる裂肛(れっこう)、そして「あな痔」と呼ばれる痔瘻(じろう)の3つです。この中で患者数が最も多いのが、いぼ痔=痔核です。男女問わず、最もなりやすいタイプの痔といえます。

いぼ痔(痔核)は、「肛門のクッション」がうっ血してできる

いぼ痔(痔核)は、「肛門のクッション」がうっ血してできる

痔核ができるのはおしりの穴、すなわち肛門です。肛門は、普段は肛門括約筋(かつやくきん)という筋肉の力によって閉じられていて、便やガスをもらさないようになっています。ただし、肛門括約筋の力だけでは、ほんの少しすき間があいてしまいます。そのすき間を埋めているのが、「肛門クッション」と呼ばれる組織です。

痔核ができるのはおしりの穴、すなわち肛門です。肛門は、普段は肛門括約筋(かつやくきん)という筋肉の力によって閉じられていて、便やガスをもらさないようになっています。ただし、肛門括約筋の力だけでは、ほんの少しすき間があいてしまいます。そのすき間を埋めているのが、「肛門クッション」と呼ばれる組織です。

肛門クッションは、肛門括約筋(かつやくきん)と、粘膜と皮膚(直腸粘膜・肛門上皮(じょうひ))との間にある、結合組織や筋組織、動脈や静脈の血管が網の目のように集まった部分 肛門クッションは、肛門括約筋(かつやくきん)と、粘膜と皮膚(直腸粘膜・肛門上皮(じょうひ))との間にある、結合組織や筋組織、動脈や静脈の血管が網の目のように集まった部分

肛門クッションは、肛門括約筋(かつやくきん)と、粘膜と皮膚(直腸粘膜・肛門上皮(じょうひ))との間にある、結合組織や筋組織、動脈や静脈の血管が網の目のように集まった部分です。この肛門のクッションの一部が、うっ血して膨らんだり、腫れたりしてしまうと、痔核になります。

肛門クッションは、肛門括約筋(かつやくきん)と、粘膜と皮膚(直腸粘膜・肛門上皮(じょうひ))との間にある、結合組織や筋組織、動脈や静脈の血管が網の目のように集まった部分です。この肛門のクッションの一部が、うっ血して膨らんだり、腫れたりしてしまうと、痔核になります。

いぼ痔(痔核)になってしまう、主な原因は?

いぼ痔(痔核)になってしまう、主な原因は?

いぼ痔ができる原因には、生活習慣や食生活が関係しています。女性の場合は、妊娠や出産、月経が原因でできることもあります。詳しくみていきましょう。

いぼ痔ができる原因には、生活習慣や食生活が関係しています。女性の場合は、妊娠や出産、月経が原因でできることもあります。詳しくみていきましょう。

●いぼ痔(痔核)の原因①……便秘で強くいきむ、トイレの時間が長い

●いぼ痔(痔核)の原因①……便秘で強くいきむ、トイレの時間が長い

いぼ痔(痔核)の原因①……便秘で強くいきむ、トイレの時間が長い いぼ痔(痔核)の原因①……便秘で強くいきむ、トイレの時間が長い

便秘は痔を発症させる最大の原因です。便秘が続き、トイレでいきむ時間が長くなると、いぼ痔(痔核)ができやすくなります。いきむと腹部にかかる圧力(腹圧)が高まり、肛門のクッションがうっ血し大きくなり、肛門から飛び出すようになります。

便秘は痔を発症させる最大の原因です。便秘が続き、トイレでいきむ時間が長くなると、いぼ痔(痔核)ができやすくなります。いきむと腹部にかかる圧力(腹圧)が高まり、肛門のクッションがうっ血し大きくなり、肛門から飛び出すようになります。

●いぼ痔(痔核)の原因②……長時間座りっぱなし

●いぼ痔(痔核)の原因②……長時間座りっぱなし

長時間、同じ姿勢――特に座りっぱなしの状態が続くと、下半身の血行が悪くなり、肛門クッションの血管がうっ血して痔核ができやすくなります。立ちっぱなしや座りっぱなしなど、長時間同じ姿勢をとり続ける職業や環境は、痔核になりやすいと言えます。

長時間、同じ姿勢――特に座りっぱなしの状態が続くと、下半身の血行が悪くなり、肛門クッションの血管がうっ血して痔核ができやすくなります。立ちっぱなしや座りっぱなしなど、長時間同じ姿勢をとり続ける職業や環境は、痔核になりやすいと言えます。

●いぼ痔(痔核)の原因③……月経前後の便通の変化

●いぼ痔(痔核)の原因③……月経前後の便通の変化

女性は、女性ホルモンの影響で月経前になると便秘がちになります。月経前に多く分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)という女性ホルモンの一種が、腸のぜん動運動を抑える働きをするため、便秘になることが多いのです。便秘で硬くなった便を排出する時にいきんだりすることで、いぼ痔(痔核)が発生しやすくなります。

女性は、女性ホルモンの影響で月経前になると便秘がちになります。月経前に多く分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)という女性ホルモンの一種が、腸のぜん動運動を抑える働きをするため、便秘になることが多いのです。便秘で硬くなった便を排出する時にいきんだりすることで、いぼ痔(痔核)が発生しやすくなります。

●いぼ痔(痔核)の原因④……妊娠・出産

●いぼ痔(痔核)の原因④……妊娠・出産

いぼ痔(痔核)の原因④……妊娠・出産 いぼ痔(痔核)の原因④……妊娠・出産

妊娠すると子宮が大きくなって、周囲の臓器や血管を圧迫します。肛門付近の血管も圧迫されてしまうため、うっ血して痔核ができやすくなります。また、出産の際は強くいきむので腹圧がかかり、肛門付近の血管がうっ血して痔核を招きます。

妊娠すると子宮が大きくなって、周囲の臓器や血管を圧迫します。肛門付近の血管も圧迫されてしまうため、うっ血して痔核ができやすくなります。また、出産の際は強くいきむので腹圧がかかり、肛門付近の血管がうっ血して痔核を招きます。

●いぼ痔(痔核)の原因⑤……冷え

●いぼ痔(痔核)の原因⑤……冷え

意外かもしれませんが、冷えも痔核の原因になります。冷えにより血流が低下すると、肛門周辺の血流も滞り、うっ血しやすくなります。特に、肛門の外側にできる血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)は、血流の低下によって発生することもあるので、寒い時はカイロを使うなど、おしりの周りを温めるようにしましょう。

意外かもしれませんが、冷えも痔核の原因になります。冷えにより血流が低下すると、肛門周辺の血流も滞り、うっ血しやすくなります。特に、肛門の外側にできる血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)は、血流の低下によって発生することもあるので、寒い時はカイロを使うなど、おしりの周りを温めるようにしましょう。

●いぼ痔(痔核)の原因⑥……腹圧がかかるスポーツ等をしている

●いぼ痔(痔核)の原因⑥……腹圧がかかるスポーツ等をしている

自転車や乗馬、ゴルフ、ウエイトリフティング、金管楽器の演奏など、いきんだりお腹にグッと力を入れたりして腹圧がかかるスポーツや趣味のある人は、どうしても痔核ができやすい傾向にあります。

自転車や乗馬、ゴルフ、ウエイトリフティング、金管楽器の演奏など、いきんだりお腹にグッと力を入れたりして腹圧がかかるスポーツや趣味のある人は、どうしても痔核ができやすい傾向にあります。

●いぼ痔(痔核)の原因⑦……アルコールや香辛料の摂り過ぎ

●いぼ痔(痔核)の原因⑦……アルコールや香辛料の摂り過ぎ

いぼ痔(痔核)の原因⑦……アルコールや香辛料の摂り過ぎ いぼ痔(痔核)の原因⑦……アルコールや香辛料の摂り過ぎ

アルコールはとりすぎると下痢を起こしやすくなります。また、唐辛子、こしょう、わさびなどの香辛料は胃の中で消化されず、便の中に成分が残り、肛門を刺激して痛みや出血を招く元になります。特に痔の急性期には、からい刺激のある食事は控えたほうがよいでしょう。普段から刺激物を摂り過ぎないことも大事です。

アルコールはとりすぎると下痢を起こしやすくなります。また、唐辛子、こしょう、わさびなどの香辛料は胃の中で消化されず、便の中に成分が残り、肛門を刺激して痛みや出血を招く元になります。特に痔の急性期には、からい刺激のある食事は控えたほうがよいでしょう。普段から刺激物を摂り過ぎないことも大事です。

いぼ痔(痔核)はできる場所によって症状が違う

いぼ痔(痔核)はできる場所によって症状が違う

いぼ痔(痔核)は、できる位置によって内痔核(ないじかく)と外痔核(がいじかく)に分かれます。肛門の縁から1.5cmほどのところにある直腸と肛門の境目「歯状線(しじょうせん)」よりも内側の直腸にできたものを「内痔核」、外側にできたものを「外痔核」といいます。内痔核は直腸の粘膜側にできるため、痛みを感じません。対して外痔核の中でも、血栓性外痔核は痛覚のある皮膚の下にできるので痛みを感じます。

いぼ痔(痔核)は、できる位置によって内痔核(ないじかく)と外痔核(がいじかく)に分かれます。肛門の縁から1.5cmほどのところにある直腸と肛門の境目「歯状線(しじょうせん)」よりも内側の直腸にできたものを「内痔核」、外側にできたものを「外痔核」といいます。内痔核は直腸の粘膜側にできるため、痛みを感じません。対して外痔核の中でも、血栓性外痔核は痛覚のある皮膚の下にできるので痛みを感じます。

内痔核の症状は?

内痔核の症状は?

内痔核の症状は? 内痔核の症状は?

内痔核の症状は進行の度合いによって、Ⅰ度~Ⅳ度に分かれています。それぞれの症状は以下の通りです。

内痔核の症状は進行の度合いによって、Ⅰ度~Ⅳ度に分かれています。それぞれの症状は以下の通りです。

内痔核の症状は進行の度合いによって、Ⅰ度~Ⅳ度に分かれています。 内痔核の症状は進行の度合いによって、Ⅰ度~Ⅳ度に分かれています。

症状が進むごとにいぼ(内痔核)の脱出が進み、肛門の外側へと飛び出してきます。Ⅳ度になると、常にいぼ(内痔核)が肛門から飛び出た状態になるため、粘液が染み出して下着を汚し、ストレスになることも多々あります。

Ⅰ度の場合でもいぼ(内痔核)を便だと思ってしまい、いつまでも便が残っているような感覚(残便感)にとらわれることがあります。残便感があることでいきんでしまうこともあり、さらに痔核を悪化させるきっかけにもなってしまいます。

症状が進むごとにいぼ(内痔核)の脱出が進み、肛門の外側へと飛び出してきます。Ⅳ度になると、常にいぼ(内痔核)が肛門から飛び出た状態になるため、粘液が染み出して下着を汚し、ストレスになることも多々あります。

Ⅰ度の場合でもいぼ(内痔核)を便だと思ってしまい、いつまでも便が残っているような感覚(残便感)にとらわれることがあります。残便感があることでいきんでしまうこともあり、さらに痔核を悪化させるきっかけにもなってしまいます。

外痔核(血栓性外痔核)の症状は?

外痔核(血栓性外痔核)の症状は?

外痔核(血栓性外痔核)の症状は? 外痔核(血栓性外痔核)の症状は?

直腸と肛門の境目である「歯状線(しじょうせん)」よりも外側にできた痔核を外痔核といいます。中でも、歯状線より外側にある肛門クッションの血管に血栓(血のかたまり)ができたものは、血栓性外痔核といいます。

血栓性外痔核の特徴的な症状として挙げられるのが、激しい痛みです。これまで痔の症状がなかったのに突然、肛門周囲に硬いしこりができて、おしりが痛み出すようなことがあれば、血栓性外痔核の疑いがあります。

直腸と肛門の境目である「歯状線(しじょうせん)」よりも外側にできた痔核を外痔核といいます。中でも、歯状線より外側にある肛門クッションの血管に血栓(血のかたまり)ができたものは、血栓性外痔核といいます。

血栓性外痔核の特徴的な症状として挙げられるのが、激しい痛みです。これまで痔の症状がなかったのに突然、肛門周囲に硬いしこりができて、おしりが痛み出すようなことがあれば、血栓性外痔核の疑いがあります。

まとめ

まとめ

内痔核や外痔核にならないためには、便秘を防ぐことが何よりの予防になります。生活習慣や食生活に気を付けて、まずは予防や悪化させないことを心がけましょう。

また、もしもなってしまったとしても、恥ずかしがらずに治療をしていくことが大切です。痔は男女問わず、誰もがなる病気です。むしろ、女性のほうが月経や妊娠・出産などの影響で、痔になりやすい機会は多いかもしれません。積極的に言わないだけで、痔主(じぬし:痔の持ち主)の人は意外にいるものです。恥ずかしく思わず、適切にケアをしていきましょう。

内痔核や外痔核にならないためには、便秘を防ぐことが何よりの予防になります。生活習慣や食生活に気を付けて、まずは予防や悪化させないことを心がけましょう。

また、もしもなってしまったとしても、恥ずかしがらずに治療をしていくことが大切です。痔は男女問わず、誰もがなる病気です。むしろ、女性のほうが月経や妊娠・出産などの影響で、痔になりやすい機会は多いかもしれません。積極的に言わないだけで、痔主(じぬし:痔の持ち主)の人は意外にいるものです。恥ずかしく思わず、適切にケアをしていきましょう。