「排便でおしりが切れた……」「排便の後、おしりから何か飛び出している気がする……」など、実はおしりに違和感がある人は多いもの。しかし、おしりに異変を感じても、恥ずかしさから受診をためらう人は少なくありません。「痔」は、日本人の3人に1人がかかるといわれるほど身近な病気です。まずは正しい知識を身につけて、病気と向き合うことが大切です。代表的な3種類の痔とその原因、症状などを詳しく解説します。
「排便でおしりが切れた……」「排便の後、おしりから何か飛び出している気がする……」など、実はおしりに違和感がある人は多いもの。しかし、おしりに異変を感じても、恥ずかしさから受診をためらう人は少なくありません。「痔」は、日本人の3人に1人がかかるといわれるほど身近な病気です。まずは正しい知識を身につけて、病気と向き合うことが大切です。代表的な3種類の痔とその原因、症状などを詳しく解説します。
<監修>
<監修>
馬場真木子先生
日本橋レディースクリニック院長
馬場真木子先生
日本橋レディースクリニック院長
ばば・まきこ
杏林大学医学部卒業後、同大学病院第一外科入局。松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長などを経て、現職。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医、臨床肛門病学会技能指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医など。
ばば・まきこ
杏林大学医学部卒業後、同大学病院第一外科入局。松島病院大腸肛門病センター、松島ランドマーククリニック院長などを経て、現職。医学博士。日本大腸肛門病学会専門医・指導医、臨床肛門病学会技能指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医など。
痔とは、肛門や肛門周辺に起きる病気の総称のことです。日本人の3人に1人が痔主(じぬし:痔の持ち主)といわれるほど、私たちにとって身近な病気だといえます。
痔にはいくつかのタイプがあります。代表的なものは「痔核(じかく=いぼ痔)」「裂肛(れっこう=切れ痔)」「痔瘻(じろう=あな痔)」の3種類で、肛門の三大疾患と呼ばれています。
ここからは、各疾患の特徴を詳しく見ていきましょう。
痔とは、肛門や肛門周辺に起きる病気の総称のことです。日本人の3人に1人が痔主(じぬし:痔の持ち主)といわれるほど、私たちにとって身近な病気だといえます。
痔にはいくつかのタイプがあります。代表的なものは「痔核(じかく=いぼ痔)」「裂肛(れっこう=切れ痔)」「痔瘻(じろう=あな痔)」の3種類で、肛門の三大疾患と呼ばれています。
ここからは、各疾患の特徴を詳しく見ていきましょう。
痔核(いぼ痔)は男性、女性共に最も患者数が多い痔で、痔疾患の半数以上を占めます。
私たちの肛門は、肛門を締める筋肉の肛門括約筋(かつやくきん)と、粘膜と皮膚(直腸粘膜・肛門上皮(じょうひ))との間に、結合組織や筋組織、動脈や静脈の血管が網の目のように集まった部分があり、「肛門クッション」と呼ばれています。この「肛門クッション」があることで肛門がしっかり閉まり、便やガスが漏れることを防いでくれているのです。
痔核(いぼ痔)は男性、女性共に最も患者数が多い痔で、痔疾患の半数以上を占めます。
私たちの肛門は、肛門を締める筋肉の肛門括約筋(かつやくきん)と、粘膜と皮膚(直腸粘膜・肛門上皮(じょうひ))との間に、結合組織や筋組織、動脈や静脈の血管が網の目のように集まった部分があり、「肛門クッション」と呼ばれています。この「肛門クッション」があることで肛門がしっかり閉まり、便やガスが漏れることを防いでくれているのです。
痔核(いぼ痔)はこのクッション部分がうっ血して大きくなったものです。おしり周りの血行が悪く、うっ血することで起こります。痔核(いぼ痔)になると、クッションが緩んでしまい、出血、脱出などの症状を起こすようになります。
痔核(いぼ痔)はできる位置によって、「内痔核(ないじかく)」と「外痔核(がいじかく)」に分かれ、原因や症状も異なります。
痔核(いぼ痔)はこのクッション部分がうっ血して大きくなったものです。おしり周りの血行が悪く、うっ血することで起こります。痔核(いぼ痔)になると、クッションが緩んでしまい、出血、脱出などの症状を起こすようになります。
痔核(いぼ痔)はできる位置によって、「内痔核(ないじかく)」と「外痔核(がいじかく)」に分かれ、原因や症状も異なります。
直腸と肛門の境目である「歯状線(しじょうせん)」より内側にできたものを内痔核といいます。痔核(いぼ痔)の約8割は内痔核で、痔全体でも患者数が最も多い疾患です。
直腸と肛門の境目である「歯状線(しじょうせん)」より内側にできたものを内痔核といいます。痔核(いぼ痔)の約8割は内痔核で、痔全体でも患者数が最も多い疾患です。
内痔核の主な原因は、便秘や下痢などの排便異常です。便秘などでトイレの時間が長く、排便時に強くいきむことや、長時間同じ姿勢をとることや、妊娠や出産なども原因の1つとされています。また、腹部に圧力(腹圧)のかかるスポーツや、デスクワークなどで長時間座りっぱなしの生活をしたりすることも、内痔核を悪化させる原因になります。
内痔核の主な原因は、便秘や下痢などの排便異常です。便秘などでトイレの時間が長く、排便時に強くいきむことや、長時間同じ姿勢をとることや、妊娠や出産なども原因の1つとされています。また、腹部に圧力(腹圧)のかかるスポーツや、デスクワークなどで長時間座りっぱなしの生活をしたりすることも、内痔核を悪化させる原因になります。
内痔核の主な原因は、便秘や下痢などの排便異常です。便秘などでトイレの時間が長く、排便時に強くいきむことや、長時間同じ姿勢をとることや、妊娠や出産なども原因の1つとされています。また、腹部に圧力(腹圧)のかかるスポーツや、デスクワークなどで長時間座りっぱなしの生活をしたりすることも、内痔核を悪化させる原因になります。
内痔核の主な原因は、便秘や下痢などの排便異常です。便秘などでトイレの時間が長く、排便時に強くいきむことや、長時間同じ姿勢をとることや、妊娠や出産なども原因の1つとされています。また、腹部に圧力(腹圧)のかかるスポーツや、デスクワークなどで長時間座りっぱなしの生活をしたりすることも、内痔核を悪化させる原因になります。
内痔核ができる直腸の粘膜表面には痛覚などがないため、痛みはほとんどありません。排便時の出血や、肛門から脱出して初めて気づくケースが多く、他に残便感や違和感などの症状が現れます。
なお、痔核の脱出の程度によって、以下の4段階に分類されます。
内痔核ができる直腸の粘膜表面には痛覚などがないため、痛みはほとんどありません。排便時の出血や、肛門から脱出して初めて気づくケースが多く、他に残便感や違和感などの症状が現れます。
なお、痔核の脱出の程度によって、以下の4段階に分類されます。
直腸と肛門の境目である「歯状線(しじょうせん)」よりも外側にできた痔核を外痔核といいます。中でも歯状線より外側の肛門クッションに血栓(血のかたまり)ができたものは、「血栓性外痔核」といいます。
直腸と肛門の境目である「歯状線(しじょうせん)」よりも外側にできた痔核を外痔核といいます。中でも歯状線より外側の肛門クッションに血栓(血のかたまり)ができたものは、「血栓性外痔核」といいます。
便秘や下痢などの排便異常、アルコールや辛いものの摂り過ぎ、一日中座りっぱなしのことが多い、冷えや腹圧のかけ過ぎなどが原因になります。
便秘や下痢などの排便異常、アルコールや辛いものの摂り過ぎ、一日中座りっぱなしのことが多い、冷えや腹圧のかけ過ぎなどが原因になります。
血栓性外痔核は、突然、肛門周囲に硬いしこりができて、おしりに激しい痛みが生じます。皮膚が破れると出血することがあります。
血栓性外痔核は、突然、肛門周囲に硬いしこりができて、おしりに激しい痛みが生じます。皮膚が破れると出血することがあります。
裂肛(切れ痔)とは、便秘で硬くなった便を押し出したり、下痢などの刺激によって肛門の皮膚が切れたり、裂けたりした状態で、いわゆる「切れ痔」といわれるものです。痔核(いぼ痔)の次に多い疾患で、便秘気味の女性に多い疾患です。
裂肛(切れ痔)とは、便秘で硬くなった便を押し出したり、下痢などの刺激によって肛門の皮膚が切れたり、裂けたりした状態で、いわゆる「切れ痔」といわれるものです。痔核(いぼ痔)の次に多い疾患で、便秘気味の女性に多い疾患です。
裂肛(切れ痔)は、便秘で硬い便や太い便が出たり、下痢便が勢いよく出たりして、肛門上皮が切れることが主な原因になります。裂肛は男性よりも、便秘などの便通トラブルが多い女性に多く見られます。
裂肛(切れ痔)は、便秘で硬い便や太い便が出たり、下痢便が勢いよく出たりして、肛門上皮が切れることが主な原因になります。裂肛は男性よりも、便秘などの便通トラブルが多い女性に多く見られます。
裂肛(切れ痔)は傷つく部分が肛門上皮(痛みを感じる部分)に発生するので、排便時に激しい痛みを伴います。痛みが強いわりに、出血は紙に少し付着する程度ですが、時には流れ出ることもあります。痛みは排便後もしばらく続くことがあります。
慢性化すると、排便後の痛みが続くため、トイレに行くことが恐怖になってしまいます。排便のたびに痛みを伴うのが苦痛で、排便を我慢するため、ますます便秘になるという悪循環に……。
裂肛(切れ痔)は傷つく部分が肛門上皮(痛みを感じる部分)に発生するので、排便時に激しい痛みを伴います。痛みが強いわりに、出血は紙に少し付着する程度ですが、時には流れ出ることもあります。痛みは排便後もしばらく続くことがあります。
慢性化すると、排便後の痛みが続くため、トイレに行くことが恐怖になってしまいます。排便のたびに痛みを伴うのが苦痛で、排便を我慢するため、ますます便秘になるという悪循環に……。
この悪循環を繰り返すことで、傷は治癒しないまま深くなり、ただれた状態の潰瘍になってしまいます。すると、その部分で炎症が起こり、周囲の皮膚が盛り上がって、肛門の内側には「肛門ポリープ」、外側には「見張りいぼ」と呼ばれる膨らみができてきます。また、肛門が狭くなる「肛門狭窄(きょうさく)」などを引き起こすことがあります。
この悪循環を繰り返すことで、傷は治癒しないまま深くなり、ただれた状態の潰瘍になってしまいます。すると、その部分で炎症が起こり、周囲の皮膚が盛り上がって、肛門の内側には「肛門ポリープ」、外側には「見張りいぼ」と呼ばれる膨らみができてきます。また、肛門が狭くなる「肛門狭窄(きょうさく)」などを引き起こすことがあります。
このような悪循環に陥らないためにも、裂肛(切れ痔)はなるべく早めの診断、治療が必要です。
このような悪循環に陥らないためにも、裂肛(切れ痔)はなるべく早めの診断、治療が必要です。
痔瘻(じろう)は、「あな痔」とも呼ばれ、どちらかというと下痢気味な男性に多いといわれています。
痔瘻(じろう)は、「あな痔」とも呼ばれ、どちらかというと下痢気味な男性に多いといわれています。
痔瘻(じろう)は、直腸と肛門の境目である歯状線(しじょうせん)にある小さなくぼみ(肛門陰窩:こうもんいんか)から便が入り込むことで起こります。肛門陰窩は肛門腺とつながっているので、肛門腺に大腸菌などの細菌が感染してしまい、炎症を起こして化膿してしまうことがあります。膿(うみ)がたまった状態は痔瘻の前段階で、「肛門周囲膿瘍(のうよう)」といいます。この症状が繰り返されることによって、細菌の入り口(1次口)と膿が皮膚を破って流れ出る部分(2次口)まで、1本のトンネルのように貫通します。これが痔瘻です。
痔瘻(じろう)は、直腸と肛門の境目である歯状線(しじょうせん)にある小さなくぼみ(肛門陰窩:こうもんいんか)から便が入り込むことで起こります。肛門陰窩は肛門腺とつながっているので、肛門腺に大腸菌などの細菌が感染してしまい、炎症を起こして化膿してしまうことがあります。膿(うみ)がたまった状態は痔瘻の前段階で、「肛門周囲膿瘍(のうよう)」といいます。この症状が繰り返されることによって、細菌の入り口(1次口)と膿が皮膚を破って流れ出る部分(2次口)まで、1本のトンネルのように貫通します。これが痔瘻です。
下痢などによって肛門腺に細菌が入り込むことが痔瘻(じろう)の主な原因です。ストレスやアルコール摂取による下痢、体の抵抗力の低下なども原因になります。下痢気味の人に起りやすい傾向があるため、下痢をしやすい人は注意が必要です。
下痢などによって肛門腺に細菌が入り込むことが痔瘻(じろう)の主な原因です。ストレスやアルコール摂取による下痢、体の抵抗力の低下なども原因になります。下痢気味の人に起りやすい傾向があるため、下痢をしやすい人は注意が必要です。
肛門周囲膿瘍の段階では、肛門周辺の皮膚が腫れて痛みを伴い、熱が出ることもあります。38度を超える高熱が出ることもありますが、出口から膿が出てしまえば、痛みは取れ、熱も下がります。痔瘻ができて2次口から絶えず膿が出るようになると、下着が汚れることもあります。また、おしりに違和感があったり、しこりが気になったりします。
痔瘻(じろう)の治療は薬では難しく、手術が必要になります。まれですが、また、複雑な痔瘻(じろう)を10年以上放置すると、ごくまれにがんを発症するケースもあります。膿のトンネルができてしまった場合は、なるべく早いうちに手術を受けましょう。
肛門周囲膿瘍の段階では、肛門周辺の皮膚が腫れて痛みを伴い、熱が出ることもあります。38度を超える高熱が出ることもありますが、出口から膿が出てしまえば、痛みは取れ、熱も下がります。痔瘻ができて2次口から絶えず膿が出るようになると、下着が汚れることもあります。また、おしりに違和感があったり、しこりが気になったりします。
痔瘻(じろう)の治療は薬では難しく、手術が必要になります。まれですが、また、複雑な痔瘻(じろう)を10年以上放置すると、ごくまれにがんを発症するケースもあります。膿のトンネルができてしまった場合は、なるべく早いうちに手術を受けましょう。
あなたの痔はどのタイプでしょうか? 男女共に最も多い「痔核(いぼ痔)」、どちらかというと女性に多い「裂肛(切れ痔)」、どちらかというと男性に多い「痔瘻(あな痔)」など、それぞれ特徴や原因が異なります。この3タイプの痔はどれも良性の疾患ですが、症状が悪化すれば生活に大きな支障をきたします。たかが痔とあなどらず、早めの受診を心がけましょう。
あなたの痔はどのタイプでしょうか? 男女共に最も多い「痔核(いぼ痔)」、どちらかというと女性に多い「裂肛(切れ痔)」、どちらかというと男性に多い「痔瘻(あな痔)」など、それぞれ特徴や原因が異なります。この3タイプの痔はどれも良性の疾患ですが、症状が悪化すれば生活に大きな支障をきたします。たかが痔とあなどらず、早めの受診を心がけましょう。