中性脂肪とは?体の中での働きや基準値を知っておこう

中性脂肪とは?体の中での働きや基準値を知っておこう 中性脂肪とは?体の中での働きや基準値を知っておこう

中性脂肪は体内に存在する脂質の1つで、いわゆる「体脂肪」に多く含まれます。活動のエネルギー源となり、私たちが生きていく上で欠かせないものですが、増え過ぎると様々な健康上の問題を引き起こすため注意が必要です。今回は、中性脂肪について知っておきたい基本情報をお伝えします。

<監修>
帝京大学理事・名誉教授/臨床研究センター センター長
寺本民生先生

帝京大学理事・名誉教授/臨床研究センター センター長 寺本民生先生 帝京大学理事・名誉教授/臨床研究センター センター長 寺本民生先生

てらもと・たみお 1973年東京大学医学部卒業。東大第一内科入局。茨城県日立総合病院、東京日立病院で内科研修後、東大第一内科助手。米国シカゴ大学に留学後、東大第一内科医局長を経て、帝京大学内科教授・医学部長を歴任し、2013年より現職。同時に寺本内科歯科クリニック開業。内科学会理事長、動脈硬化学会理事長、医学会連合副会長、日本専門医機構理事長など歴任し、現職。

(1)中性脂肪って何?

血液中に溶け込んだ脂肪のことを「血中脂質」といい、主なものに「中性脂肪」「コレステロール」「リン脂質」「脂肪酸」の4つがある。 血液中に溶け込んだ脂肪のことを「血中脂質」といい、主なものに「中性脂肪」「コレステロール」「リン脂質」「脂肪酸」の4つがある。

血液中に溶け込んだ脂肪のことを「血中脂質」といい、主なものに「中性脂肪」、「コレステロール」、「リン脂質」、「脂肪酸」の4つがあります。その中で、中性脂肪は、活動のエネルギー源となるなど、生命維持に欠かせない大切なものです。

<血中脂質の主な4種類>

① 中性脂肪

中性脂肪は「トリグリセライド」ともいい、略してTGと表記されることもあります。

食事から摂取される他、肝臓でも合成され、血液によって全身に運ばれて臓器や筋肉が動くためのエネルギー源として使われますが、使われずに余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。こうして脂肪組織に蓄えられた中性脂肪のことを、一般に「体脂肪」と呼んでいます。

体を動かす時は血液中の糖質が使われ、糖質が不足すると、蓄えられていた中性脂肪が「遊離脂肪酸」という形に分解されて血液中に放出され、筋肉、心臓組織などの細胞でエネルギーとして使われます。

中性脂肪はこの他にも、体温の維持、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収、内臓の保護・固定などに大切な役割を果たしています。

中性脂肪の役割>
・生命維持活動に必要なエネルギーとなる
・脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収を助ける
・体を寒冷から守り、体温を維持する
・外部からの衝撃を和らげて臓器を守る
・臓器が動かないように一定の位置に保つ

② コレステロール

細胞膜や各種のホルモン、胆汁酸などの材料となる成分で、2~3割が食事から摂り入れられ、7~8割は糖や脂肪を使って肝臓などで合成されます。血液中では悪玉と呼ばれるLDLコレステロール、善玉と呼ばれるHDLコレステロールの2種類があり、両者が適正なバランスで存在することが大切とされています。

③ リン脂質

細胞膜を形成する主な成分です。水にも油脂にもなじみやすく、体内で脂質が使われたり蓄えられたりする時に、脂質とタンパク質を結びつける役割も担っています。

④ 脂肪酸

脂質を構成する主要な成分で、中性脂肪やコレステロール、リン脂質の構成要素でもあります。中性脂肪が分解されてできた遊離脂肪酸は、エネルギーとして使われます。

(2)中性脂肪の量の調べ方と基準値は?

中性脂肪の量の調べ方と基準値は? 中性脂肪の量の調べ方と基準値は?

中性脂肪の量は、血液検査によって調べることができます。一般的な健康診断や人間ドックの検査項目に含まれている他、最近では薬局などでも自己採血を受けることができるようになっています。

中性脂肪の基準値(正常値)は、空腹時30~149mg/dLです。中性脂肪値が空腹時150mg/dL以上、または非空腹時175mg/dL以上の場合、「高トリグリセライド血症」と診断されます。

・中性脂肪の基準値 : 空腹時30~149mg/dL
・高トリグリセライド血症の診断基準 : 150mg/dL以上(空腹時)※または175mg/dL以上(非空腹時)

※「空腹時」とは、水やお茶などカロリーのない水分摂取を除いた10時間以上の絶食を指します。これまで高トリグリセライド血症の診断における中性脂肪の基準は「空腹時150mg/dL以上」だけでしたが、2022年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」改訂によって「非空腹175mg/dL以上」という新基準が追加されました。

(3)なぜ中性脂肪値やコレステロール値を調べる必要があるの?

中性脂肪値やコレステロール値を調べる理由は? 中性脂肪値やコレステロール値を調べる理由は?

血中脂質の中で、特に健康上の影響が大きいのが中性脂肪とコレステロールです。中性脂肪が基準値より高い状態を「高トリグリセライド血症」と呼ぶのに対し、LDLコレステロールが基準値より高い状態を「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロールが基準値より低い状態を「低HDLコレステロール血症」と呼び、こうした血中脂質の量に異常が見られる状態をまとめて「脂質異常症」といいます。

脂質異常症が問題なのは、動脈硬化の大きな要因となるためです。血液中に中性脂肪やコレステロールが多い状態が続くと、余分な脂質が血管の壁に沈着して血管が狭くなり、動脈硬化を引き起こしてしまいます。

しかし、脂質異常症になったからといって、ほとんどの場合これといった自覚症状は現れません。そのため血液検査によって中性脂肪値やコレステロール値を調べ、異常があれば早い段階で対策をとることが大切なのです。

<脂質異常症の3つのタイプ>
・高LDLコレステロール血症 : LDLコレステロールが多いタイプ
・低HDLコレステロール血症 : HDLコレステロールが少ないタイプ
・高トリグリセライド血症 : 中性脂肪が多いタイプ

(4)中性脂肪が増えると、体にどんな影響があるの?

中性脂肪が増えると、体にどんな影響があるの? 中性脂肪が増えると、体にどんな影響があるの?

中性脂肪が増え過ぎた場合、次のようなリスクが高まります。

・肥満……消費エネルギーよりも摂取エネルギーが過剰な状態が続くと、中性脂肪が皮下や内臓周辺の脂肪細胞に蓄えられます。こうして体脂肪が必要以上に増えた状態が肥満です。

・メタボリックシンドローム……腹部の臓器の周辺に脂肪がつく「内臓脂肪型肥満」は、特に生活習慣病と関係が深いことが分かっています。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加え、高血圧、糖尿病、脂質異常症のうち2つ以上当てはまる状態をいい、動脈硬化を急速に進めてしまうことから注意が喚起されています。

・動脈硬化……動脈硬化自体は無症状のまま水面下で進行しますが、放置すれば、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など命にかかわる疾患を引き起こすリスクも高まります。

・異所性脂肪……肝臓や筋肉、心臓の筋肉など、本来脂肪をため込む場所でないところに中性脂肪がたまると、その臓器の機能を低下させてしまいます。肝臓にたまった状態が脂肪肝で、そのまま放置すれば非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)や肝硬変、肝がんなどに進むケースもあります。

・急性膵炎(すいえん)……膵炎は、消化液である膵液が膵臓の組織自体を消化しようとして生じる病気です。高度の高トリグリセライド血症では、急性膵炎を起こすこともあります。

(5)脂肪をたくさん摂ると、中性脂肪が増えるの?

中性脂肪は食事とたいへん関係が深いことが分かっています。「脂」という字が使われているため、脂っこいものを摂ると中性脂肪が増えると思われがちですが、脂肪分の多いものを控えても、糖質やタンパク質を摂り過ぎれば、余ったエネルギーが中性脂肪に変換されます。

中性脂肪がたまる仕組み 中性脂肪がたまる仕組み

特に甘いものやアルコールは中性脂肪を増やしやすいので、摂り過ぎないことが大切です。日頃から栄養バランスのよい食事を心がけると共に、適正な摂取エネルギー量を守るようにしましょう。

また、運動不足やストレスも中性脂肪を増やす要因となるので、上手にストレスコントロールをし、日常生活に運動習慣を取り入れましょう。

(6)中性脂肪値が低過ぎるのは問題ない?

中性脂肪が不足すると、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸がうまく吸収されないといった問題が起こる恐れがあります。中性脂肪値が基準値を下回っている人はやせ過ぎの場合が多いので、適正なエネルギーが摂れているかどうか見直してみましょう。

また、肝臓の病気や遺伝的な体質で中性脂肪値が低いケースもあります。気になる場合は一度医療機関を受診して、原因を確認しておくと安心です。特に原因がなければ心配ありません。

(7)まとめ

中性脂肪は体に必要なものですが、余剰になると様々な病気を引き起こす要因となります。健康診断で定期的にチェックし、数値が異常と分かった場合は、早いうちから対策をしましょう。普段から食生活や運動などの生活習慣に気をつけることも大切です。