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糖質制限のデメリットとは? 寿命や老化に影響する研究結果も

糖質制限のデメリットとは? 寿命や老化に影響する研究結果も

食事の糖質と脂質のイメージ画像 食事の糖質と脂質のイメージ画像

昨今、人気の糖質制限ダイエット。その名の通り、食事から摂取する糖質の量を制限するダイエット法ですが、長期的にはデメリットがある可能性も…。東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らの研究で、糖質制限が寿命と老化に影響を与える可能性が示されました。極端な糖質制限に潜む、思わぬ落とし穴とは…。

昨今、人気の糖質制限ダイエット。その名の通り、食事から摂取する糖質の量を制限するダイエット法ですが、長期的にはデメリットがある可能性も…。東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らの研究で、糖質制限が寿命と老化に影響を与える可能性が示されました。極端な糖質制限に潜む、思わぬ落とし穴とは…。

監修

監修

近藤しんたろうクリニック院長 近藤慎太郎 先生 近藤しんたろうクリニック院長 近藤慎太郎 先生

近藤しんたろうクリニック院長
近藤慎太郎 先生(こんどう・しんたろう)

近藤しんたろうクリニック院長
近藤慎太郎 先生(こんどう・しんたろう)

1972年東京生まれ。北海道大学医学部、東京大学医学部医学系大学院卒業。医学博士。

日本赤十字社医療センター、東京大学医学部附属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任し、開業。消化器の専門医として、数多くのがん患者を診察。年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。マンガ家としての顔ももち、様々なメディアを通して、正しい医療情報を伝える啓蒙活動を行っている。

主な著書は『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP)、『ほんとは怖い健康診断のC・D判定』(日経BP)など。

1972年東京生まれ。北海道大学医学部、東京大学医学部医学系大学院卒業。医学博士。

日本赤十字社医療センター、東京大学医学部附属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任し、開業。消化器の専門医として、数多くのがん患者を診察。年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。マンガ家としての顔ももち、様々なメディアを通して、正しい医療情報を伝える啓蒙活動を行っている。

主な著書は『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP)、『ほんとは怖い健康診断のC・D判定』(日経BP)など。

1.糖質制限と寿命・老化との関係

1.糖質制限と寿命・老化との関係


糖質制限で痩せたが、老けて見えるようになったイメージ画像 糖質制限で痩せたが、老けて見えるようになったイメージ画像

東北大学の都築准教授らは、日本人の一般的な食事に当たる餌を与えたマウスと、糖質制限食を与えたマウスを1年間にわたって比較。その結果、糖質を抑えた糖質制限食を食べ続けたマウスは、平均より短命になり、外見的にも顕著な老化が表れました※1

この結果を受け、都築准教授は老化の原因を以下のように考察しています。

糖質の摂取を減らすとアミノ酸に分解されるタンパク質の割合が増加。それによって『オートファジー』(不要になったタンパク質などを細胞自身が分解し、新しいタンパク質を生成する作用や、細胞内をきれいに保つ作用)が抑制されやすくなり、不要なタンパク質が蓄積され、結果的に老化が促進されたと考えられます。

注目すべきは、このメカニズムはマウスにも、ヒトにも基本的に当てはまるという点です。今回はあくまでマウスでの成果ですが、ブームとなっている糖質制限のあり方に対し、警鐘を鳴らす内容といえるでしょう。

東北大学の都築准教授らは、日本人の一般的な食事に当たる餌を与えたマウスと、糖質制限食を与えたマウスを1年間にわたって比較。その結果、糖質を抑えた糖質制限食を食べ続けたマウスは、平均より短命になり、外見的にも顕著な老化が表れました※1

この結果を受け、都築准教授は老化の原因を以下のように考察しています。

糖質の摂取を減らすとアミノ酸に分解されるタンパク質の割合が増加。それによって『オートファジー』(不要になったタンパク質などを細胞自身が分解し、新しいタンパク質を生成する作用や、細胞内をきれいに保つ作用)が抑制されやすくなり、不要なタンパク質が蓄積され、結果的に老化が促進されたと考えられます。

注目すべきは、このメカニズムはマウスにも、ヒトにも基本的に当てはまるという点です。今回はあくまでマウスでの成果ですが、ブームとなっている糖質制限のあり方に対し、警鐘を鳴らす内容といえるでしょう。

※1 出典:東北大学新聞

※1 出典:東北大学新聞

2.糖質制限とカロリー制限、長期的に見れば結果はあまり変わらない? 

2.糖質制限とカロリー制限、長期的に見れば結果はあまり変わらない? 


糖質制限とカロリー制限はダイエットにどちらが効果的なのかを考える人のイメージ画像 糖質制限とカロリー制限はダイエットにどちらが効果的なのかを考える人のイメージ画像

ダイエット法としてよく比較される、「カロリー制限食」と「糖質制限食」。

カロリー制限食とは、摂取するカロリーの総量を減らすダイエット法です。一方、糖質制限食は、炭水化物は減らすけれども、タンパク質と脂質は制限しないでよいという方法です。

実際、どちらのほうが効果的なのか気になりますね。その効果を比較した研究があります。

肥満症の63名を、糖質制限食群とカロリー制限食群に無作為に振り分け、1年間の観察を行った研究※2によると、6カ月後までは、糖質制限食のほうが体重の減少が大きかったものの、1年後には両者の差はなくなったと報告されました。糖質制限食は、短期的には効果が認められたものの、長期的には疑問が残る結果となっています。

糖質制限ダイエットについて、日本糖尿病学会は「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点ではすすめられない」と提言※3しています。

ダイエット法としてよく比較される、「カロリー制限食」と「糖質制限食」。

カロリー制限食とは、摂取するカロリーの総量を減らすダイエット法です。一方、糖質制限食は、炭水化物は減らすけれども、タンパク質と脂質は制限しないでよいという方法です。

実際、どちらのほうが効果的なのか気になりますね。その効果を比較した研究があります。

肥満症の63名を、糖質制限食群とカロリー制限食群に無作為に振り分け、1年間の観察を行った研究※2によると、6カ月後までは、糖質制限食のほうが体重の減少が大きかったものの、1年後には両者の差はなくなったと報告されました。糖質制限食は、短期的には効果が認められたものの、長期的には疑問が残る結果となっています。

糖質制限ダイエットについて、日本糖尿病学会は「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点ではすすめられない」と提言※3しています。

※2 出典:Foster GD, et al.: A randomized trial of a low-carbohydrate diet for obesity. N Engl J Med 348: 2082-2090, 2003.

※3 出典:日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』

※2 出典:Foster GD, et al.: A randomized trial of a low-carbohydrate diet for obesity. N Engl J Med 348: 2082-2090, 2003.

※3 出典:日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』

3.極端な糖質制限より、続けられる健康的なダイエットを

3.極端な糖質制限より、続けられる健康的なダイエットを


そもそも摂取するカロリーの総量が同じなら、太りやすさは同じです。つまり、体が消費するエネルギーよりも、摂取したエネルギー量が多ければ、太ってしまいます。

肥満の解消や予防で問題となるのは、どんな栄養素を摂ったかよりも、摂取したカロリーの総量に他なりません。ただし、脂質は他の栄養素に比べて質量当たりのカロリーが高いため、食べた分量は少なくても、太ってしまう可能性があります。

そうした脂質の特性を無視し、無制限に許容するような極端な糖質制限ダイエットは、肥満解消の方法としてはやはり疑問が残ります。

そもそも摂取するカロリーの総量が同じなら、太りやすさは同じです。つまり、体が消費するエネルギーよりも、摂取したエネルギー量が多ければ、太ってしまいます。

肥満の解消や予防で問題となるのは、どんな栄養素を摂ったかよりも、摂取したカロリーの総量に他なりません。ただし、脂質は他の栄養素に比べて質量当たりのカロリーが高いため、食べた分量は少なくても、太ってしまう可能性があります。

そうした脂質の特性を無視し、無制限に許容するような極端な糖質制限ダイエットは、肥満解消の方法としてはやはり疑問が残ります。

4.ダイエットは長期的視点で

4.ダイエットは長期的視点で


ダイエットは長期的に一歩ずつを表すイメージ画像 ダイエットは長期的に一歩ずつを表すイメージ画像

「ダイエットにチャレンジはするものの、いつも長続きしない」「すぐにリバウンドする」と悩む人はとても多いものです。体重が元に戻るだけならよいのですが、リバウンド後に、体に悪影響を及ぼす場合があります。

「りんごだけ」などの一品ダイエットや、食事抜きといった極端な食事制限など、無理なダイエットで短期的に減量して「リバウンド」を招くと、ダイエット前より脂肪が増え、さらにやせにくくなる「ウエイトサイクリング※4」に陥るリスクがあるのです。

「ダイエットにチャレンジはするものの、いつも長続きしない」「すぐにリバウンドする」と悩む人はとても多いものです。体重が元に戻るだけならよいのですが、リバウンド後に、体に悪影響を及ぼす場合があります。

「りんごだけ」などの一品ダイエットや、食事抜きといった極端な食事制限など、無理なダイエットで短期的に減量して「リバウンド」を招くと、ダイエット前より脂肪が増え、さらにやせにくくなる「ウエイトサイクリング※4」に陥るリスクがあるのです。

※4「ウエイトサイクリング」とは、ダイエットとリバウンドを繰り返して、体重が増減すること。

 

※4「ウエイトサイクリング」とは、ダイエットとリバウンドを繰り返して、体重が増減すること。

 

無理なダイエットで減量すると、筋肉量も減ります。筋肉が減ると基礎代謝も低下し、余ったエネルギーは脂肪として蓄積されるため、脂肪がつきやすくなるのです。

ウエイトサイクリングを繰り返すと、悪循環からなかなか抜け出せず、ダメージを受けた体は、病気になりやすくなるという危険性も潜んでいます。

健康ダイエットの秘訣は、「焦らず、ゆっくり進めること」。極端な食事制限はかえって健康を害してしまいます。糖質を適度に摂りながら、過剰な脂質の摂取を避けるなど、長く続けられる「持続可能なバランス」を目指しましょう。

持続可能な“ゆっくりダイエット”としては、例えばいつもより「大きめの1口分」を減らしてみるのも一案です。毎食、1口分減らすだけなので、それほど苦ではない上に、継続すれば1カ月で約1kg、無理なく減量できます。

「ごはんを残すのは気が引ける」という人は、これまでよりも一回り小さめのお茶碗に変えてみるのもおすすめです。

また、「食べる順番」を変えるだけでも効果があります。野菜から食べる「ベジタブルファースト」を意識し、野菜を最初に食べる習慣をつけましょう。野菜を食べたら、次は肉や魚などの主菜を食べ、消化吸収されやすい主食は最後に摂るのが理想的です。

先に食物繊維が豊富な野菜を食べることで、後から食べる炭水化物などの糖質の吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。食後の血糖値の急上昇はインスリンの過剰分泌を招き、余分な糖質を脂肪として蓄積しやすくなるため、太りやすいのです。

同様に血糖値の急上昇を抑えるには、例えば「白米よりも玄米」、小麦粉であれば「精製パンよりも全粒粉パン」を選んでみるのもよいでしょう。精製された物よりも消化吸収の速度が遅くなります。また、日本人が不足しがちな食物繊維やミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれており、自然に摂取量を増やすことができます。

このように、一つひとつは小さな変化でも、複数を継続して続けていけば、数カ月後には、目に見えて効果が表れる方法ばかりです。大切なのは、できることから最初の第一歩を踏み出すことです。

無理なダイエットで減量すると、筋肉量も減ります。筋肉が減ると基礎代謝も低下し、余ったエネルギーは脂肪として蓄積されるため、脂肪がつきやすくなるのです。

ウエイトサイクリングを繰り返すと、悪循環からなかなか抜け出せず、ダメージを受けた体は、病気になりやすくなるという危険性も潜んでいます。

健康ダイエットの秘訣は、「焦らず、ゆっくり進めること」。極端な食事制限はかえって健康を害してしまいます。糖質を適度に摂りながら、過剰な脂質の摂取を避けるなど、長く続けられる「持続可能なバランス」を目指しましょう。

持続可能な“ゆっくりダイエット”としては、例えばいつもより「大きめの1口分」を減らしてみるのも一案です。毎食、1口分減らすだけなので、それほど苦ではない上に、継続すれば1カ月で約1kg、無理なく減量できます。

「ごはんを残すのは気が引ける」という人は、これまでよりも一回り小さめのお茶碗に変えてみるのもおすすめです。

また、「食べる順番」を変えるだけでも効果があります。野菜から食べる「ベジタブルファースト」を意識し、野菜を最初に食べる習慣をつけましょう。野菜を食べたら、次は肉や魚などの主菜を食べ、消化吸収されやすい主食は最後に摂るのが理想的です。

先に食物繊維が豊富な野菜を食べることで、後から食べる炭水化物などの糖質の吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。食後の血糖値の急上昇はインスリンの過剰分泌を招き、余分な糖質を脂肪として蓄積しやすくなるため、太りやすいのです。

同様に血糖値の急上昇を抑えるには、例えば「白米よりも玄米」、小麦粉であれば「精製パンよりも全粒粉パン」を選んでみるのもよいでしょう。精製された物よりも消化吸収の速度が遅くなります。また、日本人が不足しがちな食物繊維やミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれており、自然に摂取量を増やすことができます。

このように、一つひとつは小さな変化でも、複数を継続して続けていけば、数カ月後には、目に見えて効果が表れる方法ばかりです。大切なのは、できることから最初の第一歩を踏み出すことです。

まとめ 極端な糖質制限のデメリットも忘れずに

まとめ 極端な糖質制限のデメリットも忘れずに


極端な糖質制限など、短期集中型の無理なダイエットは、体へのダメージが少なくありません。健康的にやせるためには、長期的な視点で体に何が起こるかを理解して行うことが重要です。

リバウンドを起こさず、最も効果が期待できる、あなたにとっての「持続可能なダイエット法」を選びましょう。極端な制限は必要なく、無理のないペースで、できることを続けて少しずつ減量していくほうが、実は得策なのです。

極端な糖質制限など、短期集中型の無理なダイエットは、体へのダメージが少なくありません。健康的にやせるためには、長期的な視点で体に何が起こるかを理解して行うことが重要です。

リバウンドを起こさず、最も効果が期待できる、あなたにとっての「持続可能なダイエット法」を選びましょう。極端な制限は必要なく、無理のないペースで、できることを続けて少しずつ減量していくほうが、実は得策なのです。