ヘルスケアコンテンツ ヘルスケアコンテンツ

脂質の摂り過ぎは危険? 健康を守るための対策はコレ

脂質の摂り過ぎは危険? 健康を守るための対策はコレ

油(脂質)のイメージ画像 油(脂質)のイメージ画像

とかく悪者にされがちな油(脂質)も、体に必要な栄養素の1つです。しかし、現代人の食生活では、知らず知らずのうちに脂質が多くなり、脂質を摂り過ぎてしまいがちに…。脂質は過剰に摂取すると健康を害してしまいます。今回は、よい脂質は摂りつつ、全体の量を減らすなど、健康を守るために脂質と上手に付き合うコツを医師が解説します。

とかく悪者にされがちな油(脂質)も、体に必要な栄養素の1つです。しかし、現代人の食生活では、知らず知らずのうちに脂質が多くなり、脂質を摂り過ぎてしまいがちに…。脂質は過剰に摂取すると健康を害してしまいます。今回は、よい脂質は摂りつつ、全体の量を減らすなど、健康を守るために脂質と上手に付き合うコツを医師が解説します。

監修

監修

近藤しんたろうクリニック院長 近藤慎太郎 先生 近藤しんたろうクリニック院長 近藤慎太郎 先生

近藤しんたろうクリニック院長
近藤慎太郎 先生(こんどう・しんたろう)

近藤しんたろうクリニック院長
近藤慎太郎 先生(こんどう・しんたろう)

1972年東京生まれ。北海道大学医学部、東京大学医学部医学系大学院卒業。医学博士。

日本赤十字社医療センター、東京大学医学部附属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任し、開業。消化器の専門医として、数多くのがん患者を診察。年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。マンガ家としての顔ももち、様々なメディアを通して、正しい医療情報を伝える啓蒙活動を行っている。

主な著書は『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP)、『ほんとは怖い健康診断のC・D判定』(日経BP)など。

1972年東京生まれ。北海道大学医学部、東京大学医学部医学系大学院卒業。医学博士。

日本赤十字社医療センター、東京大学医学部附属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任し、開業。消化器の専門医として、数多くのがん患者を診察。年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。マンガ家としての顔ももち、様々なメディアを通して、正しい医療情報を伝える啓蒙活動を行っている。

主な著書は『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP)、『ほんとは怖い健康診断のC・D判定』(日経BP)など。

1.日本では、脂質を摂り過ぎている人が増えている

1.日本では、脂質を摂り過ぎている人が増えている


脂質の高いラーメンスープのイメージ画像 脂質の高いラーメンスープのイメージ画像

日本では、脂質を摂り過ぎている人の割合が増えているのをご存じですか?

厚生労働省が5年ぶりに改定した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」※1では、摂取エネルギー全体のうち、脂肪から得られるエネルギーの割合(脂肪エネルギー比率)の目標量を、1歳以上の男性・女性共に、20%以上30%未満としました。

これに対し、厚生労働省が2023年に発表した調査※2によれば、脂肪エネルギー比率が30%を超えている人の割合は、20歳以上の男性では約37.4%、20歳以上の女性では約46.4%でした。目標量を超え、脂質を摂り過ぎている人の割合が多いことが分かります。

例えば、老若男女に人気のラーメンは、スープに脂質が多く含まれています。スープの出汁には、とんこつや鶏ガラ、ラードなどの動物性脂肪が加えられており、そこに豚バラ肉を使用したチャーシューやバターなどをトッピングすると、ラーメン1杯の脂質量はさらに増え、カロリーも高くなりがちに…。脂質が気になる場合は、スープは飲み干さずに残すようにしましょう。

日本では、脂質を摂り過ぎている人の割合が増えているのをご存じですか?

厚生労働省が5年ぶりに改定した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」※1では、摂取エネルギー全体のうち、脂肪から得られるエネルギーの割合(脂肪エネルギー比率)の目標量を、1歳以上の男性・女性共に、20%以上30%未満としました。

これに対し、厚生労働省が2023年に発表した調査※2によれば、脂肪エネルギー比率が30%を超えている人の割合は、20歳以上の男性では約37.4%、20歳以上の女性では約46.4%でした。目標量を超え、脂質を摂り過ぎている人の割合が多いことが分かります。

例えば、老若男女に人気のラーメンは、スープに脂質が多く含まれています。スープの出汁には、とんこつや鶏ガラ、ラードなどの動物性脂肪が加えられており、そこに豚バラ肉を使用したチャーシューやバターなどをトッピングすると、ラーメン1杯の脂質量はさらに増え、カロリーも高くなりがちに…。脂質が気になる場合は、スープは飲み干さずに残すようにしましょう。

※1 出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

※2 出典:厚生労働省「令和5年(2023年)国民健康・栄養調査の結果」

※1 出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

※2 出典:厚生労働省「令和5年(2023年)国民健康・栄養調査の結果」

2.摂るべき脂質、控えるべき脂質を知っておこう

2.摂るべき脂質、控えるべき脂質を知っておこう


脂質を多く含む食品のイメージ画像 脂質を多く含む食品のイメージ画像

脂質は体にとって必要な栄養素ですが、実は積極的に摂るべき油(脂質)と、控えるべき油(脂質)があります。

脂肪には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があり、「不飽和脂肪酸」はさらに「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。

脂質は体にとって必要な栄養素ですが、実は積極的に摂るべき油(脂質)と、控えるべき油(脂質)があります。

脂肪には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があり、「不飽和脂肪酸」はさらに「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。

脂肪酸の種類について。脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれ、不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれます。一価不飽和脂肪酸にはオレイン酸などのn-9(オメガ9)系の脂肪酸、多価不飽和脂肪酸は、EPAやDHAなどのn-3(オメガ3)系とリノール酸などのn-6(オメガ6)系の脂肪酸、トランス脂肪酸があります。 脂肪酸の種類について。脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれ、不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれます。一価不飽和脂肪酸にはオレイン酸などのn-9(オメガ9)系の脂肪酸、多価不飽和脂肪酸は、EPAやDHAなどのn-3(オメガ3)系とリノール酸などのn-6(オメガ6)系の脂肪酸、トランス脂肪酸があります。

・飽和脂肪酸
乳製品や肉などの動物性脂肪や、パームオイルなどの植物性油に含まれています。飽和脂肪酸は過剰に摂取すると、LDL(悪玉)コレステロールを上昇させ、動脈硬化や脂質異常症の原因となるため、摂り過ぎには要注意です。
 

・一価不飽和脂肪酸
主にオレイン酸で、オリーブオイル、キャノーラ油、なたね油などに多く含まれています。一価不飽和脂肪酸はLDL(悪玉)コレステロールの濃度を下げる働きがあり、日頃から積極的に摂りたい油(脂質)の1つです。
 

・多価不飽和脂肪酸
多価不飽和脂肪酸は、近年、健康志向の人から支持を集める油(脂質)です。「n-3系」(オメガ3系)と「n-6系」(オメガ6系)に分類されます。

「n-3系」(オメガ3系)は青魚などに多く含まれるEPAやDHA、シソ油、えごま油、アマニ油などがあります。中性脂肪を減らし、心疾患のリスクを減らす効果が認められています。毎日の食事に活用して、積極的に摂るようにしましょう。

「n-6系」(オメガ6系)に当たるのは、ごま油や大豆油、コーン油など。同じ多価不飽和脂肪酸でも、こちらは通常の摂取で十分です。過剰摂取によってアレルギーを起こしやすくなる可能性が示唆されているため、オメガ6系はむしろ控えめにするほうがよいでしょう。


不飽和脂肪酸の中にも、実は注意が必要なものがあります。それがトランス脂肪酸です。ヨーロッパではトランス脂肪酸の摂取量が多い子どもほど、喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の発症率が高いという報告があります。

・飽和脂肪酸
乳製品や肉などの動物性脂肪や、パームオイルなどの植物性油に含まれています。飽和脂肪酸は過剰に摂取すると、LDL(悪玉)コレステロールを上昇させ、動脈硬化や脂質異常症の原因となるため、摂り過ぎには要注意です。
 

・一価不飽和脂肪酸
主にオレイン酸で、オリーブオイル、キャノーラ油、なたね油などに多く含まれています。一価不飽和脂肪酸はLDL(悪玉)コレステロールの濃度を下げる働きがあり、日頃から積極的に摂りたい油(脂質)の1つです。
 

・多価不飽和脂肪酸
多価不飽和脂肪酸は、近年、健康志向の人から支持を集める油(脂質)です。「n-3系」(オメガ3系)と「n-6系」(オメガ6系)に分類されます。

「n-3系」(オメガ3系)は青魚などに多く含まれるEPAやDHA、シソ油、えごま油、アマニ油などがあります。中性脂肪を減らし、心疾患のリスクを減らす効果が認められています。毎日の食事に活用して、積極的に摂るようにしましょう。

「n-6系」(オメガ6系)に当たるのは、ごま油や大豆油、コーン油など。同じ多価不飽和脂肪酸でも、こちらは通常の摂取で十分です。過剰摂取によってアレルギーを起こしやすくなる可能性が示唆されているため、オメガ6系はむしろ控えめにするほうがよいでしょう。


不飽和脂肪酸の中にも、実は注意が必要なものがあります。それがトランス脂肪酸です。ヨーロッパではトランス脂肪酸の摂取量が多い子どもほど、喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の発症率が高いという報告があります。

3.脂質の摂り過ぎに注意! トランス脂肪酸が体に及ぼす影響とは?

3.脂質の摂り過ぎに注意! トランス脂肪酸が体に及ぼす影響とは?


「トランス脂肪酸はできるだけ控えめに」と、聞いたことはありませんか?

トランス脂肪酸はマーガリンやショートニング、ファットスプレッドなど、人工的に加工された油脂に多く含まれています。それらを使用して作ったパンやケーキ、ドーナツ、揚げ物などにも含まれているため、知らず知らずのうちにトランス脂肪酸を摂取している可能性があります。

「トランス脂肪酸はできるだけ控えめに」と、聞いたことはありませんか?

トランス脂肪酸はマーガリンやショートニング、ファットスプレッドなど、人工的に加工された油脂に多く含まれています。それらを使用して作ったパンやケーキ、ドーナツ、揚げ物などにも含まれているため、知らず知らずのうちにトランス脂肪酸を摂取している可能性があります。

トランス脂肪酸を含む食品のイメージ画像 トランス脂肪酸を含む食品のイメージ画像

「トランス脂肪酸はできるだけ控えめに」といわれるのは、摂取し過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールを上昇させ、やがては心疾患を引き起こす危険性があるためです。

世界的に注意喚起がなされており、国際機関が生活習慣病の予防のために開催した専門家会合(食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合)は、食品から摂る総脂質、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸などの目標値を2003年に公表。トランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%相当量よりも少なくするように勧告しています。

日本人が1日に摂るエネルギー量の平均は約1900 kcal。その1%に相当するトランス脂肪酸の量は、わずか約2gです。食品安全委員会が2012年3月に公表した「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価(リスク評価)の結果」※3では、日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を、平均総エネルギー摂取量の約0.3%と推定。「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論づけました。

しかし、日本人の中でも普段から揚げ物やスイーツなどをたくさん食べている人は1%を超えている可能性がありますから、食べ過ぎには注意が必要です。

「トランス脂肪酸はできるだけ控えめに」といわれるのは、摂取し過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールを上昇させ、やがては心疾患を引き起こす危険性があるためです。

世界的に注意喚起がなされており、国際機関が生活習慣病の予防のために開催した専門家会合(食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合)は、食品から摂る総脂質、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸などの目標値を2003年に公表。トランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%相当量よりも少なくするように勧告しています。

日本人が1日に摂るエネルギー量の平均は約1900 kcal。その1%に相当するトランス脂肪酸の量は、わずか約2gです。食品安全委員会が2012年3月に公表した「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価(リスク評価)の結果」※3では、日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を、平均総エネルギー摂取量の約0.3%と推定。「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論づけました。

しかし、日本人の中でも普段から揚げ物やスイーツなどをたくさん食べている人は1%を超えている可能性がありますから、食べ過ぎには注意が必要です。

※3 出典:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価(リスク評価)の結果」

※3 出典:食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価(リスク評価)の結果」

4.健康のために、脂質と上手に付き合う方法

4.健康のために、脂質と上手に付き合う方法


脂質を摂る際のポイントは、よい油とされる「不飽和脂肪酸」を積極的に摂ることです。不飽和脂肪酸は、イワシやサバなどの青魚、オリーブオイル、ナッツ類などに多く含まれています。日頃から意識して、良質な油(脂質)を、食事から積極的に摂るようにしましょう。同時に、揚げ物は控えて、控えるべき「飽和脂肪酸」を減らしていくなど、健康を意識した食べ方にチェンジすることが大切です。

また、脂質を摂り過ぎないようにするために、同じ食材でも調理法によって脂質を減らすことができます。おすすめは「ゆでる」「蒸す」「オーブンや網で焼く」を中心とした調理法です。

例えば、同じ豚肉を使った料理でも、油を多く使う揚げ物は控え、「ゆでる」「蒸す」料理なら油を使わないので、脂質はもちろん、エネルギー量も大幅に減らせます。

ケーキやドーナツ、クッキーなど甘いもの好きの方や、パンや冷凍ビザ、スナック菓子、加工肉などを普段からよく食べる方は、加工食品の裏面表示の確認を。これらの食品に含まれる「トランス脂肪酸」や「ショートニング」に注意しましょう。

脂質を摂る際のポイントは、よい油とされる「不飽和脂肪酸」を積極的に摂ることです。不飽和脂肪酸は、イワシやサバなどの青魚、オリーブオイル、ナッツ類などに多く含まれています。日頃から意識して、良質な油(脂質)を、食事から積極的に摂るようにしましょう。同時に、揚げ物は控えて、控えるべき「飽和脂肪酸」を減らしていくなど、健康を意識した食べ方にチェンジすることが大切です。

また、脂質を摂り過ぎないようにするために、同じ食材でも調理法によって脂質を減らすことができます。おすすめは「ゆでる」「蒸す」「オーブンや網で焼く」を中心とした調理法です。

例えば、同じ豚肉を使った料理でも、油を多く使う揚げ物は控え、「ゆでる」「蒸す」料理なら油を使わないので、脂質はもちろん、エネルギー量も大幅に減らせます。

ケーキやドーナツ、クッキーなど甘いもの好きの方や、パンや冷凍ビザ、スナック菓子、加工肉などを普段からよく食べる方は、加工食品の裏面表示の確認を。これらの食品に含まれる「トランス脂肪酸」や「ショートニング」に注意しましょう。

まとめ 脂質は必要、でも“摂り過ぎ”には注意

まとめ 脂質は必要、でも“摂り過ぎ”には注意


脂質は体のエネルギー源であり、生きるためには欠かせない栄養素です。しかし、脂質の摂り過ぎは健康を害する恐れがあります。脂質は「量」と「質」のバランスが重要です。摂り過ぎると健康に悪影響を及ぼす脂質は控えめにして、LDL(悪玉)コレステロール値や中性脂肪を下げてくれる働きをもつ脂質は、積極的に活用していきましょう。

脂質は体のエネルギー源であり、生きるためには欠かせない栄養素です。しかし、脂質の摂り過ぎは健康を害する恐れがあります。脂質は「量」と「質」のバランスが重要です。摂り過ぎると健康に悪影響を及ぼす脂質は控えめにして、LDL(悪玉)コレステロール値や中性脂肪を下げてくれる働きをもつ脂質は、積極的に活用していきましょう。