「アレルギー性結膜炎」とは?
原因、対処法、予防法を知っておこう

結膜炎には感染性のものと非感染性のものとがありますが、非感染性の代表が、アレルギー性結膜炎です。実は、結膜炎の中でもっとも患者数が多いのがこのアレルギー性結膜炎で、そのうち80%以上は花粉が原因といわれています。つらい症状に悩まないために、アレルギー性結膜炎の原因、対処法、予防法について知っておきましょう。

<監修>

戸田郁子先生 南青山アイクリニック理事長・院長/慶應義塾大学医学部眼科学教室講師 戸田郁子先生 南青山アイクリニック理事長・院長/慶應義塾大学医学部眼科学教室講師

戸田郁子先生
南青山アイクリニック理事長・院長/慶應義塾大学医学部眼科学教室講師

とだ・いくこ 筑波大学医学専門学群卒業。東京慈恵会医科大学眼科、慶應義塾大学眼科学教室専修医、東京歯科大学眼科を経て、1994年米国ハーバード大学・眼研究所留学。97年南青山アイクリニック院長となる。99年慶應義塾大学医学博士に。02年南青山アイクリニック理事長に就任。04年慶應義塾大学眼科学教室講師。専門分野は屈折矯正手術(近視・乱視・遠視手術)およびドライアイ。

アレルギー性結膜炎とは?

アレルギー性結膜炎 アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲン(=アレルギーを引き起こす原因物質)によって起こる結膜炎です。アレルギーは一種の免疫システムの暴走で、本来は無害なものに対して体が反応し、異物として排除しようとすることで様々な症状が引き起こされます。

結膜炎の一般的な症状は、白目とまぶたの裏の充血、目やに、涙の増加などですが、アレルギー性結膜炎では、目のかゆみが特に強いのが大きな特徴です。

また、ウイルス性結膜炎や細菌性結膜炎などの感染性の結膜炎は、ほとんどが急性、一過性であるのに対し、アレルギー性結膜炎は、毎年同じ症状を繰り返したり、症状が長く続いたりします。特定の物質に触れると症状が出る点も、鑑別のポイントとなります。

アレルギー性結膜炎の原因と症状、対処法、予防法は?

アレルギー性結膜炎には、決まった季節のみ症状が現れる「季節性アレルギー性結膜炎」と、年間を通して見られる「通年性アレルギー性結膜炎」のほか、コンタクトレンズなどの機械的刺激によって起こるものや、アトピー性皮膚炎に合併するものなどがあります。
アレルギー性結膜炎について、その種類と、原因、症状、対処法、予防法について見ていきましょう。

①季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)


季節性アレルギー性結膜炎(花粉症) 季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)

原因

スギやヒノキ、シラカバ、イネ科のカモガヤ、キク科のヨモギ、ブタクサなど植物の花粉が原因です。

症状

両目に激しいかゆみが起こり、充血、異物感(目のゴロゴロ感)、涙の増加、まぶたの腫れなどを伴いますが、自覚症状は人によって様々です。目の左右で症状の現れ方に差があるケースも見られます。

対処法

症状を抑える対症療法として抗アレルギーの目薬を使用し、炎症が強い場合はステロイド剤の目薬を併用することもあります。くしゃみ、鼻みずなど目以外の症状もある場合は、抗ヒスタミン薬の内服も有効です。目薬と内服薬は、併用しても問題はありません。

目薬も内服薬も、症状が本格的になってから使用するのでは効果が限定されてしまいます。少しでも花粉症の症状を感じたら、早めに使用するのがポイントです。

その年の花粉の飛散予測を参考に、症状の現れる1~2週間前に生じる目の違和感に対して早めに使用を開始する方法もすすめられます。この場合、症状をより軽く抑えられます。

かゆみが強いからといって、目を強くこするのは厳禁です。強くこすることで結膜が傷つき、そこに細菌やウイルスが感染して感染性の結膜炎を招いてしまうこともあります。

予防法

アレルゲンとの接触をできる限り避けることが予防の基本です。花粉の時期は、次のことを心がけましょう。

・コンタクトレンズの装用を控える
・花粉の飛散の多い日や時間帯の外出を控える
・外出時は、メガネやゴーグル、帽子、マスクなどで防御する
・外出後は、服についた花粉を十分に落とす
・外出後の手洗いを徹底する

このほかに、目や目の周辺を清潔に保つことも大切です。ただし、水道水で直接目(眼球)を洗うのは、涙を流し過ぎて目を傷つけたり、雑菌が付着したりしやすいので避けてください。洗顔の際に目の周辺をやさしく洗うか、人工涙液などを使用して洗眼しましょう。

②通年性アレルギー性結膜炎(ハウスダストアレルギー)


通年性アレルギー性結膜炎(ハウスダストアレルギー) 通年性アレルギー性結膜炎(ハウスダストアレルギー)

原因

ハウスダストが原因です。ハウスダストとは家の中のチリやホコリのことで、そこにはダニ、カビ、細菌、花粉、繊維のクズ、人間の体から落ちた皮膚片やフケ、ペットの毛など様々なものが含まれます。

症状

両目にかゆみ、充血、異物感(目のゴロゴロ感)、涙の増加、まぶたの腫れなどが現れますが、自覚症状は様々で、軽症のこともあります。

新生児の場合は、淋菌性結膜炎は生後1~3日、クラミジア結膜炎は生後5~10日ほどで発症し、目の充血、目やに、まぶたの腫れなどの症状が見られます。

対処法

抗アレルギーの目薬を使用し、炎症が強い場合はステロイド剤の目薬を併用することもあります。目以外の症状もある場合は、抗ヒスタミン薬の内服も有効です。目の症状がある間はコンタクトレンズの使用は控えましょう。

予防法

室内の清潔が基本です。次のようなことを心がけましょう。

・掃除機をこまめにかける
・空気清浄機を利用する
・換気を行い、通気をよくする
・寝具の天日干しなどでダニの増殖を抑える

③その他のアレルギー性結膜炎


その他のアレルギー性結膜炎 その他のアレルギー性結膜炎

巨大乳頭結膜炎…コンタクトレンズやゴミなどの機械的刺激が原因で起こる結膜炎です。
春季カタル…通年性アレルギー性結膜炎が重症化したものです。5歳~学童期の男子に好発し、春に症状が重くなる傾向が見られます。
アトピー性角結膜炎…アトピー性皮膚炎がある子どもに見られる慢性の結膜炎です。

上記の疾患はいずれも難治性の結膜炎で、病院での治療が必要です。

アレルギー性結膜炎を抑える目薬は?目薬の種類を覚えておこう

アレルギー性結膜炎を抑える目薬は?目薬の種類を覚えておこう アレルギー性結膜炎を抑える目薬は?目薬の種類を覚えておこう

薬局や薬店には、「疲れ目用」、「かわき目用」、「充血用」など実に様々な種類の目薬が並んでいますが、上手に使い分けていますか?結膜炎に限っても、感染性のものなのか、非感染性のものなのかなど、原因によって適した目薬は違ってきます。結膜炎に用いられる目薬の種類と選び方について知っておきましょう。

● 市販の目薬の種類と選び方

結膜炎の症状に向く市販の目薬には、主に次の2つのタイプがあります。

① 「抗菌剤・抗炎症剤配合」目薬 ➡ ウイルス性結膜炎、細菌性結膜炎に

「抗菌目薬」と呼ばれることもあります。細菌を退治する抗菌剤(抗生物質)と、炎症を抑える抗炎症剤が配合され、ウイルスや細菌の感染による結膜炎に適しています。ウイルスに対する効果はないので、ウイルス性結膜炎を直接治すものではありませんが、細菌の二次感染を予防し、充血や目やになどの症状を緩和する効果が期待できます。アレルギー性以外の結膜炎のファーストチョイスです。
・代表的な抗菌成分……スルファメトキサゾール

② 「抗アレルギー剤配合」目薬 ➡ アレルギー性結膜炎に

「アレルギー専用目薬」と呼ばれることもあります。アレルギー症状を引き起こす原因物質であるヒスタミンなどの働きを抑える抗ヒスタミン剤が配合され、花粉症などのアレルギー性結膜炎で起こる目のかゆみ、充血、目やになどの症状を改善します。また、花粉やハウスダストなどアレルギーを引き起こす原因物質から結膜を保護する作用もあります。
最近では、ヒスタミンなどの働きを抑えるだけでなく、放出を抑える作用を併せ持つ第2世代の抗ヒスタミン剤が配合された目薬も販売されています。これは、アレルギーのより初期の段階で効果を発揮するため、発症前や早期の予防的な点眼に効果があります。

・代表的な抗アレルギー成分……ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト
・代表的な抗ヒスタミン成分……マレイン酸クロルフェニラミン 、ケトチフェン

<選ぶときはここもポイント!>

目薬の種類と選び方 目薬の種類と選び方
・薬剤師にアドバイスをもらおう
自分に合った目薬が分からない場合は、薬局や薬店の薬剤師に症状を伝え、アドバイスをもらいましょう。
・血管収縮剤配合の目薬は避ける
結膜炎が疑われる場合は、「血管収縮剤」(=充血除去成分)が配合されている目薬は避けましょう。血管収縮剤で充血がおさまると、病気が治ったと誤解してしまったり、結膜炎の炎症の程度が判断できなくなってしまったりするためです。血管収縮剤には塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンなどがあります。
・15歳未満は「子ども用」を
15歳未満の場合は、「子ども用」または「お子さまにも使えます」と書かれたものを使用しましょう。2歳未満の場合は、医師の診療を受けることを優先してください。

また、市販の目薬を2週間くらい使用してみても症状の改善が見られない場合や、かゆみや充血などの症状が激しい場合は、眼科を受診するようにしましょう。

花粉症をはじめとするアレルギー性結膜炎の発症には、体質や生活環境のほか、ストレスや過労などによる免疫の乱れも関係しているといわれます。全身的な体調を整えて、あきらめずに治療に取り組みましょう。