白衣高血圧症とは、家などの医療機関外では血圧が正常であるにもかかわらず、医療者が血圧を測った時や診察室などの医療機関で血圧が高値になる高血圧です。

高血圧の約15～30%にみられ、 特に高齢女性に多い傾向があると言われています。

白衣高血圧症の原因は緊張で自律神経の乱れがおこり、交感神経が優位になるなどで一時的に高血圧になることが考えられています。

白衣高血圧症は治療の必要はなく、経過観察だけでよいと考えられていた時代もありました。しかしながら近年、白衣高血圧症の人は正常な血圧の人よりも、持続的な高血圧症へ移行しやすいことが明らかになりました。

国際ABPMデータベースの報告では、白衣高血圧症は最初の5年間程度は経過が良いものの、10年程度になると経過が悪いことが示されています。白衣高血圧症に加え、肥満、脂質異常症、糖代謝異常症などの心血管の危険因子がある場合は積極的に治療を考慮したほうがよいと考えられるようになったのです。

白衣高血圧症は、診察室内で血圧が高値であっても、診察室外の家などで血圧が正常範囲の状態を示します。一方、仮面高血圧症、逆白衣高血圧は、診察室内の血圧が正常範囲であっても、診察室外で血圧が高値である状態を示します。

美しい人の前では緊張して血圧が上がる美人高血圧は医学用語ではありませんが、白衣高血圧症と同様に緊張などで自律神経の交感神経が優位になるなどで生じる一時的な血圧上昇と考えられます。

仮面高血圧、逆白衣高血圧は臨床的な特徴や仕組みについては未解明な部分が多いとされています。積極的な高血圧の治療対象となりやすい白衣高血圧に比べて、仮面高血圧者では降圧治療が不十分となりやすく、仮面高血圧症の臓器障害・心疾患リスクは正常の血圧者・白衣高血圧者と比べて高く、持続的な高血圧者と同程度と考えられています。

診察室での血圧は必ずしも普段の血圧値を反映しません。白衣高血圧症の場合、高血圧症に移行する可能性があるため、起床1時間前後に家庭で血圧を測定すること、健康診断などで定期的なフォローを行い、高血圧を早期発見することが重要です。

家に血圧計をもっていないという方は職場や薬局、スーパー、スポーツクラブなど血圧計を設置している施設など、可能な範囲でまず血圧を測定してみることをおすすめします。

＜参考文献＞
・白衣高血圧は何が原因か. 非医療環境下血圧が良好にコントロールされていれば特に気にしなくてよいか
宮川政昭　宮川内科小児科医院 院長　薬局 70(10): 1902-1906, 2019.

・仮面高血圧,逆白衣現象の機序と特徴 堀尾武史, 河野雄平　国立循環器病センター内科高血圧・腎臓部門
血圧 11(8): 798-801, 2004.

・Question 12 白衣高血圧, 仮面高血症の診断はどのようにされていますか? また長期的にみて, 高血圧になるリスクは高まると聞いているのですが, プライマリ・ケアの現場でどう対応していくべきでしょうか? 降圧薬は使用すべきですか?
村松賢一　戸塚クリニック 循環器内科
治療 98(3): 365-367, 2016.