鉄分

鉄分をサプリで補ってもいいの?

鉄分は、わたしたちの心身の健康に欠かせない必須栄養素です。鉄分は幅広い食品に含まれていますが、他の栄養素に比べて吸収率が悪く、食事だけで摂取するのは難しいとされています。今回は、鉄分を補う手段としてサプリメントが有効な理由や、より効果的な活用法、サプリを使用する際の注意点などをご紹介します。

<監修>

桐村里紗先生
桐村里紗先生
内科医・認定産業医


きりむら・りさ 愛媛大学医学部医学科卒業。tenrai株式会社代表取締役医師。治療よりも予防を重視し、臨床現場において最新の分子整合栄養学やバイオロジカル医療・腸内フローラ研究などをもとにした予防医療、生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積む。人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」をはじめ、最新のヘルスケア・ウェルネス情報をさまざまなメディアを通じ発信している。著書に『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)などがある。

目次

女性にとって1日に必要な鉄分の量は?

鉄分について悩んでいる女性
月経があるほとんどの女性は、鉄分不足です。なぜなら、月に一度の出血とともに、鉄分が体の外に排出されてしまうからです。

体の中の鉄分は多くの働きを担っているため、不足するとさまざまな不調につながります。「疲れやすい」「体が重い」「イライラする」「肩こりがはげしい」といった症状があれば、鉄分不足を疑ってみましょう。

そもそも、女性にとって1日に必要な鉄分量とはどのくらいなのでしょうか。

厚生労働省が推奨する1日の鉄分の摂取量は、月経のある成人女性で10.5~11.0mg。妊娠初期・授乳期は+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mgと言われています(日本人の食事摂取基準2020年版)。しかし、理想的な食事をしている人でも1日約10 mgの鉄分しか摂れていないのが現状です。

食事だけで鉄分の必要量を摂るのは難しいって本当?

鉄分を多く含む食品をもつ女性
人は普通に生活しているだけで、1日約1mgの鉄分が失われます。単純に考えれば、その分を食事で補給すればいいわけですが、鉄分は体内に吸収されにくい栄養素。よほど意識的に鉄分の多い食品を摂らなければ、わずか1mgの鉄分を摂るのも簡単ではありません。

しかも、食事からの鉄分の吸収量は1日約1 mgで、その吸収率の低さから考えても、食事だけで必要量の鉄分を摂るのは難しいことがわかります。特に、月経のある女性は男性に比べて、慢性的な鉄分不足に陥るリスクが高いのです。

月経のある女性は、推奨量以上の鉄分摂取をめざしたいところですが、太るのを気にして食事の量を減らしたり、朝食抜きなど偏った食事をしていたりすると、鉄分はさらに不足してしまいます。

そのほか、現代人の食生活の変化も鉄分を食事から摂ることが難しい理由の一つです。いま、白米ではなく、パンを主食に選ぶ人も多くなりました。インスタント食品やコンビニ弁当、パンやスナック菓子などで食事を済ませる人も少なくありません。しかし、これらの食品に含まれるリン酸ナトリウムなどの食品添加物によって、鉄分の吸収を妨げられてしまうことも……。

「忙しいから」「手軽だから」と、インスタント食品やファストフードばかり食べていると、食事はしていても、十分な鉄分を補うことはできません。また、極端な菜食主義で、肉や魚、卵などを食べない人は、鉄分だけでなく、他の栄養素も不足してしまいます。

鉄分は、サプリで補ってもOKなの?

鉄分のサプリメント
鉄分は体にとって必要な「必須栄養素(体の維持のために食事から必ず摂らなければならない栄養素)」です。それゆえに、鉄分の多い食品を1日3食、バランスよく、適切な量を摂ることはとても大切です。ただ、現代社会ではなかなか難しいもの……。

食事だけでは補えない鉄分は、サプリメントを上手に活用して、積極的に補給するとよいでしょう。足りなければ「足す」という感覚で、食事の補助的にサプリメントを活用することをおすすめします。

一般的に「鉄」として販売されているサプリには、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。おすすめはより吸収のよい「ヘム鉄」のサプリです。「サプリを飲んだら胃が荒れた」という声がよく聞かれますが、その場合は、胃腸障害を起こしやすい「非ヘム鉄」を選んでいると思われます。

ただし、非ヘム鉄のサプリメントのなかには、一緒に摂ることで吸収率が上がるビタミンCが配合されていたり、クエン酸と鉄を結合させたタイプ(クエン酸鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウムなど)の商品もあります。こういったタイプの非ヘム鉄サプリは、ヘム鉄と同程度の吸収率が期待できます。

「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の区別がつかない場合は、ドラッグストアや専門店で相談の上、確認して購入するようにしましょう。

鉄分をサプリで補う場合、いつ飲めばいい?効果的な飲み方は?

鉄分のサプリメントを摂取する女性
サプリメントの使用表記には、摂取量の目安は記載してあっても、飲む時間については特に触れていない商品も多いもの。そのため、「いつ飲めばいいのだろう」と迷う人も多いかもしれません。

サプリメントを飲むタイミングは食後が基本です。カプセルやタブレットのサプリの場合は、水で服用します。以前は、吸収のために空腹時に飲むことが指導されていましたが、胃が荒れるリスクが高まり、継続できない可能性があります。食後に飲む方が、安全に継続できます。

また、いつ飲むかよりも重要なのが、1日の目安量を何回かに分けて飲むことです。鉄は一度にたくさん摂っても、体内に吸収できる量は決まっており、吸収できなかった鉄分は大腸に流れて、排出されてしまいます。せっかくサプリを服用しても、なかなか効果が表れないという、残念な結果にならないように「分けて飲む」ことを習慣にしましょう。

厳密なルールはありませんが、1日1回まとめて摂るよりは、1日の量を朝・昼・晩の3回など、分けて摂る方が胃腸障害のリスクも低いですし、なにより無駄がありません。

鉄分をサプリで補う場合、注意したいことはある?

サプリとお茶やコーヒーは同時に摂らない
●サプリとお茶やコーヒーは同時に摂らない
お茶やコーヒー、紅茶などに含まれるタンニンは、非ヘム鉄の吸収を阻害することが知られています。あまり神経質になる必要はありませんが、鉄分サプリと一緒に摂らないようにし、サプリを服用した後、しばらくは控える方が無難です。

●腸内環境を整える
鉄分の吸収率を上げるためには、腸内環境を整えることも重要です。どれだけ高価なサプリを飲んでも、腸内環境が悪いと、鉄分が体内に全く吸収されないこともあります。サプリの服用とともに、腸内環境の改善にも取り組みましょう。

●用法・用量を守る
また、鉄分をサプリで補う場合に注意したいのが、過剰摂取です。用法・用量は必ず守りましょう。過剰に摂取しても吸収されずに排泄されてしまいます。過剰になると消化管や腸内環境にも負担をかけます。使用量を守っていても、胃痛や便秘などの症状が出た場合は、量を減らす、使用を控える、種類を変えるなど様子を見ます。改善しなければ医師に相談し、体質に合わせた処方をしてもらいましょう。

月経のある女性は、鉄分サプリも積極的に活用を

鉄分のサプリメントを積極的に摂りましょう
ただ、過剰摂取について怖がり過ぎる必要はありません。貧血の処方薬に比べると、サプリメントに含まれる鉄分の量は約10分の1から100分の1です。思春期や妊娠中、授乳中は特に鉄分が不足しますので、用量を守れば飲み過ぎにはなりません。むしろ、生理中だけでも鉄分サプリを積極的に摂取することをおすすめします。

初潮を迎え「体が重く、朝起きられない」「学校に行きたくない」など、体に不調がある場合は、未成年でも鉄分不足が疑われます。そういった場合は、思春期のお子さんもサプリを活用するなど、意識して鉄分を摂ることを推奨します。鉄分不足が解消されると、体の不調や月経前後の不調が改善するケースは多いものです。

サプリメントはすぐに変化をもたらすものではなく、あくまで食事で補えない栄養素を補うもの。飲み始めてすぐに「効果がない」と服用をやめるのではなく、数カ月は続けることが大切です。