鉄分

鉄分を簡単に摂る方法は?5つの方法を伝授!

鉄分は日本人にとって不足しやすい栄養素の一つ。体に吸収しづらい鉄分を簡単に効率よく摂るためには、食事の仕方や食べ合わせにちょっとした工夫が必要です。今回は、鉄分を簡単に、効果的に摂取する5つの方法をお伝えします。

<監修>

桐村里紗先生
桐村里紗先生
内科医・認定産業医


きりむら・りさ 愛媛大学医学部医学科卒業。tenrai株式会社代表取締役医師。治療よりも予防を重視し、臨床現場において最新の分子整合栄養学やバイオロジカル医療・腸内フローラ研究などをもとにした予防医療、生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積む。人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」をはじめ、最新のヘルスケア・ウェルネス情報をさまざまなメディアを通じ発信している。著書に『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)などがある。

目次

鉄分を摂るのは簡単じゃない?摂取が難しい理由

鉄分の摂取が難しく頭を抱える女性
厚生労働省が推奨する1日の鉄分の摂取量は、月経のある成人女性で10.5~11.0mg。妊娠初期・授乳期は+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mgと言われています(日本人の食事摂取基準2020年版)。しかし、1日に必要な摂取量に満たない人はとても多く、食事だけで鉄分を摂ることは簡単ではありません。鉄分の摂取方法を工夫して、日頃から鉄分を十分に含む食材を使ったバランスの良い食事を心がけ、摂取量を意識的に増やすことが重要です。

ではなぜ、鉄分の摂取はこれほど難しいのでしょうか?その理由の一つとして、鉄分は体に吸収しづらいことが挙げられます。理想的な食事をしている人でも1日の摂取量は10 mg程度、吸収率に至っては1日わずか約1 mgに過ぎません。

女性に鉄欠乏が多い一番の理由は月経。月経のある女性は毎月約30mgもの鉄分を失うため、食事での補給が追いつかず、男性に比べて鉄分不足が慢性化するリスクが高いのです。思春期や妊娠中、授乳期はさらに多くの鉄分が必要ですが、食事が偏っていたり、無理なダイエットで食事の量が少なかったり、ファストフードやインスタント食品ばかり食べていたりすると、知らず知らずのうちに深刻な貧血や、貧血の一歩手前の「かくれ貧血」を発症することも……。

また、鉄分は汗でも排出されます。汗1リットルにつき、0.5㎎の鉄分がロスすると言われています。さらに、フルマラソンなど激しい運動をする人は、足の裏で赤血球を破壊してしまう「ランナー貧血」のリスクがあるので男女問わず、摂取目標値よりも鉄分を多めに摂る必要があります。

鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、体への吸収率が違う

ヘム鉄と非ヘム鉄、二種類の鉄の食品
鉄分を簡単に摂る方法を伝授する前に、鉄分の種類とその違いを頭に入れておきましょう。食品に含まれる鉄には、肉や魚の赤身に多く含まれる「ヘム鉄」と、野菜や穀類、豆腐、海藻類などに多く含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
ヘム鉄は、「ヘム」という動物性タンパク質に包まれた状態の鉄で、吸収率が10~30%と高いことが特徴です。また、他の食品と一緒に摂っても、吸収を妨げられることはなく、比較的簡単に鉄分を摂取できます。

ヘム鉄を多く含む食品には、赤身の肉やレバー、カツオやマグロなど赤身の魚、赤貝などがあります。魚の血合いはヘム鉄が豊富ですが、メチル水銀も多く含まれているため、妊活中の女性は要注意です。

非ヘム鉄は、小松菜やほうれん草などの野菜やレンズ豆、小豆、大豆、枝豆などの豆類、ひじきや青のりなどの海藻類などに多く含まれています。ヘム鉄に比べると、吸収率は5%以下と低いですが、ビタミンCを一緒に摂るなど、工夫次第で吸収率を上げることができます。

非ヘム鉄には一緒に摂ると吸収率が阻害される食品もあるので、正しい知識を持つことも重要です。

鉄分を簡単に摂れる5つの方法を伝授!

鉄分を簡単に摂れる鉄鍋
多くの人は鉄分が不足気味であること、鉄分は体に吸収されにくいこと、鉄分には「ヘム鉄」「非ヘム鉄」があり吸収率に違いがあることなどをお伝えしました。
ここからは、不足しがちな鉄分を簡単に摂る方法をご紹介しましょう。

鉄分を簡単に摂る方法(1)鉄鍋や鉄の球を使う
調理の際に南部鉄器や鉄鍋などを使用すると、食品に吸収されやすい鉄分が溶け出すため比較的手軽に鉄分が摂れます。調理器具を変えるだけで鉄分が豊富な食事へと様変わりするのです。

トマトや酢など酸性の食品を使うと、鉄分がより溶け出しやすくなります。トマトのスープや煮込み料理、酸辣湯スープなど酢を使った料理は、鉄分を効率的に摂れるメニューです。お茶を淹れる際に鉄びんを利用するのもおすすめです。

最近は量販店などで手ごろな価格の鉄鍋も手に入りやすくなりましたし、鍋にポンと入れて沸かすだけで鉄分が摂れる「鉄の球」なども販売されています。鉄の球は玉子型やキャラクターがデザインされたものなど種類も豊富で、鉄鍋に比べると安価です。取り扱いも手軽ですから、気軽に活用してみましょう。


鉄分を簡単に摂る方法(2)吸収率をアップする栄養素を同時に摂る
鉄分の吸収率をアップする栄養素
体内に吸収されにくい非ヘム鉄も、鉄の吸収を促進する食品を一緒に摂ることで、吸収率をグーンと上げることができます。

●ビタミンCやクエン酸
「ビタミンC」と「クエン酸」は、鉄分の吸収を良くする食品の代表格です。ビタミンCはブロッコリーや大根といった多くの野菜や果物などに多く含まれています。ビタミンCが豊富な緑黄色野菜と、酸味の強い柑橘類やイチゴなどの果物を合わせて食べるのもおすすめです。
クエン酸を多く含む梅肉は、手軽に鉄分の吸収率をアップできる食品の一つ。ほかにも、小松菜のスープに酢を加えるなど、ちょっとした工夫で鉄分の吸収率が上がります。

●たんぱく質やCCP
肉や魚などに多く含まれるたんぱく質も、非ヘム鉄の吸収率を上げる働きがあります。非ヘム鉄のほうれん草を炒めるだけでは吸収率は低いですが、たんぱく質が豊富な豚肉と炒めれば、鉄分の吸収率が格段に良くなります
また、牛乳の主要たんぱく質であるカゼインが、体内の消化の過程で分解されると生成される物質「CCP(カゼインホスホペプチド)」も、鉄分の吸収率を高めてくれます。非ヘム鉄を多く含む野菜や、ヘム鉄が豊富な肉や魚を牛乳と一緒に煮込むのもおすすめです。
一方で、カゼインは消化しづらく不耐症やアレルギーも起こしやすい側面があるため、無理に摂取する必要はありません。


鉄分を簡単に摂る方法(3)吸収を妨げるものは一緒に摂らない
鉄分の吸収を妨げるもの
非ヘム鉄には一緒に摂ると吸収が悪くなる食品もあります。

●タンニン(コーヒーや紅茶等に含まれる)
コーヒーや紅茶、煎茶などに含まれる「タンニン」は、非ヘム鉄の吸収を阻害する成分です。食事中に一緒に摂るのは避けた方が無難です。あまり神経質になりすぎる必要はありませんが、食事の際は水を飲み、煎茶などもできる限り控える方が良いでしょう。

●フィチン酸(穀物の外皮、玄米等)
玄米や大豆など、穀物の外皮に含まれる「フィチン酸」も注意が必要です。フィチン酸自体が鉄分の吸収を阻害するわけではありませんが、鉄分の吸収を上げたい場合は玄米よりも白米、大豆は納豆などの発酵食品がおすすめです。

●食物繊維
食物繊維には水溶性食物繊維(ワカメなどの海藻類)と、非水溶性食物繊維(芋類やゴボウ、キノコ類など)があります。水溶性食物繊維は鉄分の吸収率を上げてくれますが、非水溶性食物繊維と非ヘム鉄の食品を一緒に摂ると、吸収率は下がってしまいます。ただし、食事の範囲内であれば、過度に心配する必要はないとされています。

他にも、インスタント食品や加工肉、スナック菓子などに含まれるリン酸ナトリウムなどの食品添加物は鉄分の吸収を阻害します。こういった食品を摂りすぎないことも大事です。


鉄分を簡単に摂る方法(4)腸内環境を整える
腸内環境の良い女性
腸内環境が悪いと、カンジタ菌などの悪玉菌がミネラルをえさに増殖。腸に届いた鉄分を奪ってしまうため、吸収が悪くなります。逆に、腸内環境が良いと、鉄の吸収率はアップします。鉄分を意識的に摂っているのに、なかなか鉄分不足が改善しない場合は、腸内環境が問題かも……。胃腸の働きを良くするために、生活習慣の改善にも取り組みましょう。

腸内環境の改善に有効な食品には、納豆など発酵性の非水溶性食物繊維や、こんにゃくに多く含まれるマンナン、リンゴやプルーンなどペクチンを多く含む食材などがあります。砂糖の代わりにオリゴ糖を使用するのもおすすめです。また、もちもちしたご飯よりは、粘度の低いあっさりした品種のご飯やじゃがいもなどに含まれるデンプンが冷えた際に、食物繊維のような働きをします。おにぎりなどの冷ご飯がベター。じゃがいもはポテトサラダなど冷たい状態で食べる方が腸内環境には良いとされています。

まずは無理のない範囲で、できることから始めてみましょう。

鉄分を簡単に摂る方法(5)サプリメントも活用する
鉄分のサプリメント
吸収率が低く、不足しがちな鉄分の補給には、サプリメントも有効に活用しましょう。
鉄分サプリにはヘム鉄のサプリと、非ヘム鉄のサプリがありますが、吸収率の低い非ヘム鉄であっても、クエン酸とキレートさせたタイプは、非ヘム鉄のサプリに起こりやすい胃腸障害を低減し、吸収率を改善しています。また、ヘム鉄のサプリメントを選ぶのも良いでしょう。

ただし、鉄分サプリは多く摂取すればいいというわけではありません。1日の用量を必ず守って使用しましょう。