鉄分の多い食べ物を知り、毎日の食事で上手に摂取すれば、貧血の予防・改善につながります。月経のある女性の多くが、鉄分不足の可能性があります。ここでは、鉄分の多い食べ物や、食品に含まれる2種類の鉄(「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」)の吸収率の違い、鉄分の効率の良い摂り方についてもご紹介します。
鉄分の多い食べ物を知り、毎日の食事で上手に摂取すれば、貧血の予防・改善につながります。月経のある女性の多くが、鉄分不足の可能性があります。ここでは、鉄分の多い食べ物や、食品に含まれる2種類の鉄(「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」)の吸収率の違い、鉄分の効率の良い摂り方についてもご紹介します。
きりむら・りさ 愛媛大学医学部医学科卒業。tenrai株式会社代表取締役医師。治療よりも予防を重視し、臨床現場において最新の分子整合栄養学やバイオロジカル医療・腸内フローラ研究などをもとにした予防医療、生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積む。人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」をはじめ、最新のヘルスケア・ウェルネス情報をさまざまなメディアを通じ発信している。著書に『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)などがある。
きりむら・りさ 愛媛大学医学部医学科卒業。tenrai株式会社代表取締役医師。治療よりも予防を重視し、臨床現場において最新の分子整合栄養学やバイオロジカル医療・腸内フローラ研究などをもとにした予防医療、生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積む。人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」をはじめ、最新のヘルスケア・ウェルネス情報をさまざまなメディアを通じ発信している。著書に『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)などがある。
一般的に女性特有の症状というイメージがある「貧血」。実際も、日本人女性のうち、月経のある女性の5人に1人は貧血と言われています。なかでも女性に特に多いのが、鉄分不足によって起こる「鉄欠乏性貧血」です。主な原因は月経で、生理のたびに毎月約30mgもの鉄分が失われます。
また、貧血の診断基準である「ヘモグロビン値」は正常範囲でも、体内の貯蔵鉄「フェリチン」が不足している「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏症)」は、さらに多いとされています。平成18年の国民健康・栄養調査によると、20~49歳までの閉経前の女性では、69.5%もの人がフェリチン30ng/ml未満でしたが、これは重度のかくれ貧血に当たります。このうち、約30%は10ng/ml未満という枯渇状態でした。貧血の一歩手前の段階であるかくれ貧血は、一般的な検査では見逃されやすく、心身の不調を感じていても放置してしまいがちです。鉄分が不足しているにもかかわらず、何の対策も取らずに不調から抜け出せない女性は増えており、鉄分を意識的に摂る必要性が指摘されています。
厚生労働省が推奨する1日の鉄分の摂取量は、月経のある成人女性で10.5~11.0mg。妊娠初期・授乳期は+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mgと言われています(日本人の食事摂取基準2020年版)。しかし、理想的な食事をしている人でも1日約10mg(吸収量は約1mg)の鉄分しか摂れていません。
毎月の月経に加えて、過度なダイエットや朝食抜きなどの不規則な食生活を続けているうちに、知らず知らずのうちに深刻な鉄分不足に陥ってしまう人は少なくありません。特に、初潮が始まる成長期や、妊娠・出産、授乳期は体の中の鉄分を大量に失います。子宮筋腫など婦人科系の疾患がある場合は、毎月さらに約40~50㎎の鉄分を失うため、治療はもちろん、食事から効率よく鉄分を摂るなど、日頃の食生活を見直すことが大切です。
一般的に女性特有の症状というイメージがある「貧血」。実際も、日本人女性のうち、月経のある女性の5人に1人は貧血と言われています。なかでも女性に特に多いのが、鉄分不足によって起こる「鉄欠乏性貧血」です。主な原因は月経で、生理のたびに毎月約30mgもの鉄分が失われます。
また、貧血の診断基準である「ヘモグロビン値」は正常範囲でも、体内の貯蔵鉄「フェリチン」が不足している「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏症)」は、さらに多いとされています。平成18年の国民健康・栄養調査によると、20~49歳までの閉経前の女性では、69.5%もの人がフェリチン30ng/ml未満でしたが、これは重度のかくれ貧血に当たります。このうち、約30%は10ng/ml未満という枯渇状態でした。貧血の一歩手前の段階であるかくれ貧血は、一般的な検査では見逃されやすく、心身の不調を感じていても放置してしまいがちです。鉄分が不足しているにもかかわらず、何の対策も取らずに不調から抜け出せない女性は増えており、鉄分を意識的に摂る必要性が指摘されています。
厚生労働省が推奨する1日の鉄分の摂取量は、月経のある成人女性で10.5~11.0mg。妊娠初期・授乳期は+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mgと言われています(日本人の食事摂取基準2020年版)。しかし、理想的な食事をしている人でも1日約10mg(吸収量は約1mg)の鉄分しか摂れていません。
毎月の月経に加えて、過度なダイエットや朝食抜きなどの不規則な食生活を続けているうちに、知らず知らずのうちに深刻な鉄分不足に陥ってしまう人は少なくありません。特に、初潮が始まる成長期や、妊娠・出産、授乳期は体の中の鉄分を大量に失います。子宮筋腫など婦人科系の疾患がある場合は、毎月さらに約40~50㎎の鉄分を失うため、治療はもちろん、食事から効率よく鉄分を摂るなど、日頃の食生活を見直すことが大切です。
食品に含まれる鉄分には、肉や魚の赤身に多く含まれる「ヘム鉄」と、野菜や穀類、豆腐、海藻類などに多く含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
動物性のヘム鉄は、人体への吸収率が10~30%と高いことが特徴です。また、ヘム鉄は「ヘム」というたんぱく質に包まれた状態の鉄で、他の食品と一緒に摂っても吸収を妨げられないという利点があります。
一方の非ヘム鉄は、胃で吸収しにくい三価鉄から二価鉄に還元されたのち、小腸で吸収されます。ヘム鉄に比べると、吸収率は5%以下と低いですが、食べ方によって吸収率を上げることができます。また、一緒に摂ると吸収率が下がる食品もありますので、正しい知識と食事の工夫が必要です。
食品に含まれる鉄分には、肉や魚の赤身に多く含まれる「ヘム鉄」と、野菜や穀類、豆腐、海藻類などに多く含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
動物性のヘム鉄は、人体への吸収率が10~30%と高いことが特徴です。また、ヘム鉄は「ヘム」というたんぱく質に包まれた状態の鉄で、他の食品と一緒に摂っても吸収を妨げられないという利点があります。
一方の非ヘム鉄は、胃で吸収しにくい三価鉄から二価鉄に還元されたのち、小腸で吸収されます。ヘム鉄に比べると、吸収率は5%以下と低いですが、食べ方によって吸収率を上げることができます。また、一緒に摂ると吸収率が下がる食品もありますので、正しい知識と食事の工夫が必要です。
非ヘム鉄よりヘム鉄の吸収率が高いからといって、動物性のヘム鉄だけを摂ればいいわけではありません。2種類の鉄分をバランスよく摂るように心がけましょう。
非ヘム鉄よりヘム鉄の吸収率が高いからといって、動物性のヘム鉄だけを摂ればいいわけではありません。2種類の鉄分をバランスよく摂るように心がけましょう。
ヘム鉄が多い食品には、レバー(豚レバー、鶏レバー、牛レバー)や牛もも肉などの赤身の肉、かつおやまぐろなど赤身の魚、赤貝などがあります。魚の血合いはヘム鉄が豊富ですが、メチル水銀も多く含まれているため、妊活中の女性にはおすすめできません。
●ヘム鉄が多い主な食品(可食部100g当たりの含有量)
・豚レバー(生)……13.0mg
・鶏レバー(生)……9.0mg
・赤貝(生)……5.0mg
・牛レバー(生)……4.0mg
・牛肉(生・赤身)……2.8mg
・めざし(生)……2.6mg
・砂肝(生)……2.5mg
・まいわし(生)……2.1mg
・かつお(生)……1.9mg
・まぐろ(生・赤身)……1.8mg
※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より作成
ヘム鉄は、非ヘム鉄よりも約2~3倍以上も吸収されやすく、他の食品との食べ合わせに関する注意点も特にありません。食事で特に積極的に摂りたい鉄分ですが、日常的に継続して摂取しづらい食品が多いことが難点です。ヘム鉄を多く含む食品の代表格であるレバーは苦手という人も多いですし、苦手でなくても、毎日レバーを食べ続けるのは難しいものです。赤身の肉や魚、貝類なども毎日の献立に取り入れるなどして、積極的にヘム鉄を摂りましょう。
ヘム鉄が多い食品には、レバー(豚レバー、鶏レバー、牛レバー)や牛もも肉などの赤身の肉、かつおやまぐろなど赤身の魚、赤貝などがあります。魚の血合いはヘム鉄が豊富ですが、メチル水銀も多く含まれているため、妊活中の女性にはおすすめできません。
●ヘム鉄が多い主な食品(可食部100g当たりの含有量)
・豚レバー(生)……13.0mg
・鶏レバー(生)……9.0mg
・赤貝(生)……5.0mg
・牛レバー(生)……4.0mg
・牛肉(生・赤身)……2.8mg
・めざし(生)……2.6mg
・砂肝(生)……2.5mg
・まいわし(生)……2.1mg
・かつお(生)……1.9mg
・まぐろ(生・赤身)……1.8mg
※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より作成
ヘム鉄は、非ヘム鉄よりも約2~3倍以上も吸収されやすく、他の食品との食べ合わせに関する注意点も特にありません。食事で特に積極的に摂りたい鉄分ですが、日常的に継続して摂取しづらい食品が多いことが難点です。ヘム鉄を多く含む食品の代表格であるレバーは苦手という人も多いですし、苦手でなくても、毎日レバーを食べ続けるのは難しいものです。赤身の肉や魚、貝類なども毎日の献立に取り入れるなどして、積極的にヘム鉄を摂りましょう。
非ヘム鉄が多く含まれる食品にはレンズ豆、小豆、枝豆などの豆類や、納豆などの大豆加工品、小松菜やほうれん草などの野菜、ひじきなどの海藻類などがあります。
●非ヘム鉄が多い主な食品(可食部100g当たりの含有量)
・レンズ豆(全粒・ゆで)……4.3mg
・納豆……3.3mg
・小松菜……2.8mg
・枝豆……2.7mg
・ひじき(鉄釜・ゆで)……2.7mg
・厚揚げ……2.6mg
・サラダ菜……2.4mg
・そら豆…………2.3mg
・水菜…………2.1mg
・ほうれん草…………2.0mg
※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より作成
体内に吸収されにくい非ヘム鉄も、ブロッコリーや大根といった野菜や果物などに多く含まれるビタミンC、クエン酸、たんぱく質などと一緒に摂れば吸収率が上がります。例えば、酢を使った小松菜のスープや、豚肉とひじきを一緒に煮るなど、調理で組み合わせるのも良い食べ方です。
ひじきについては、鉄鍋で煮ることで鉄分が豊富となるものの、ステンレス鍋では、0.3mg(100g当たり)と1/9になってしまうことがわかっています。鉄鍋を活用しましょう。
他にも、牛乳などに含まれるたんぱく質であるカゼインがすい臓で分泌されて生じる「CPP(カゼインホスホペプチド)」と一緒に摂取すると、鉄分の吸収を促進させることができます。
逆に、コーヒーや紅茶、煎茶などに含まれるタンニンや、玄米などに含まれるフィチン酸、芋類やゴボウ、キノコ類など非水溶性の食物繊維などを一緒に摂ると、吸収率が下がる可能性があるされていますが、通常の食事に含まれる程度の量であり、過剰摂取でなければ気にする必要はないとされています。
また、あさり(缶詰水煮:可食部100g当たり30.0mg)、しじみ(水煮:可食部100g当たり15.0mg)などの貝類は、ヘム鉄と非ヘム鉄が両方含まれた鉄分の多い食品です。
非ヘム鉄が多く含まれる食品にはレンズ豆、小豆、枝豆などの豆類や、納豆などの大豆加工品、小松菜やほうれん草などの野菜、ひじきなどの海藻類などがあります。
●非ヘム鉄が多い主な食品(可食部100g当たりの含有量)
・レンズ豆(全粒・ゆで)……4.3mg
・納豆……3.3mg
・小松菜……2.8mg
・枝豆……2.7mg
・ひじき(鉄釜・ゆで)……2.7mg
・厚揚げ……2.6mg
・サラダ菜……2.4mg
・そら豆…………2.3mg
・水菜…………2.1mg
・ほうれん草…………2.0mg
※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より作成
体内に吸収されにくい非ヘム鉄も、ブロッコリーや大根といった野菜や果物などに多く含まれるビタミンC、クエン酸、たんぱく質などと一緒に摂れば吸収率が上がります。例えば、酢を使った小松菜のスープや、豚肉とひじきを一緒に煮るなど、調理で組み合わせるのも良い食べ方です。
ひじきについては、鉄鍋で煮ることで鉄分が豊富となるものの、ステンレス鍋では、0.3mg(100g当たり)と1/9になってしまうことがわかっています。鉄鍋を活用しましょう。
他にも、牛乳などに含まれるたんぱく質であるカゼインがすい臓で分泌されて生じる「CPP(カゼインホスホペプチド)」と一緒に摂取すると、鉄分の吸収を促進させることができます。
逆に、コーヒーや紅茶、煎茶などに含まれるタンニンや、玄米などに含まれるフィチン酸、芋類やゴボウ、キノコ類など非水溶性の食物繊維などを一緒に摂ると、吸収率が下がる可能性があるされていますが、通常の食事に含まれる程度の量であり、過剰摂取でなければ気にする必要はないとされています。
また、あさり(缶詰水煮:可食部100g当たり30.0mg)、しじみ(水煮:可食部100g当たり15.0mg)などの貝類は、ヘム鉄と非ヘム鉄が両方含まれた鉄分の多い食品です。
鉄分の補給は食事からが基本ですが、どんなにバランスの良い食事を心がけていても、1日に必要な鉄分を食事だけで摂るのは至難の業。そんなときに頼りになるのが鉄鍋です。普段使っている調理器具を鉄鍋に変えるだけで、鉄分を効率的に摂取できます。特に、酸辣湯スープなど酢を使った料理や、トマト煮込みなどの酸味の強い料理は、鉄分の溶解率がアップするのでおすすめです。
鉄鍋はハードルが高いという人は、鍋に入れるタイプの鉄の球などもたくさん販売されていますので、活用してみましょう。
また、月経時や思春期、妊娠・出産など、特に鉄の需要が増加する時期は、サプリメントを飲んでみるのも一案です。鉄は過剰になると、それ以上吸収しない機能が働きますし、月経のある人は1日の用量を守れば、そもそも飲みすぎにはなりません。
サプリメントにもヘム鉄と非ヘム鉄があり、非ヘム鉄は胃腸障害を起こしやすくなることがありますので、胃腸の弱い人は要注意です。非ヘム鉄の中でも、クエン酸とキレートさせているタイプのものは、胃腸障害が少なく吸収が良いのが特徴です。吸収率が高く、胃腸障害の心配のないヘム鉄を選ぶのも良いでしょう。
鉄分は必須栄養素でありながら、摂取が難しい栄養素です。鉄分不足はさまざまな不定愁訴を引き起こす原因になるため、年代を問わず、サプリなども積極的に活用して、意識的に摂りましょう。
鉄分の補給は食事からが基本ですが、どんなにバランスの良い食事を心がけていても、1日に必要な鉄分を食事だけで摂るのは至難の業。そんなときに頼りになるのが鉄鍋です。普段使っている調理器具を鉄鍋に変えるだけで、鉄分を効率的に摂取できます。特に、酸辣湯スープなど酢を使った料理や、トマト煮込みなどの酸味の強い料理は、鉄分の溶解率がアップするのでおすすめです。
鉄鍋はハードルが高いという人は、鍋に入れるタイプの鉄の球などもたくさん販売されていますので、活用してみましょう。
また、月経時や思春期、妊娠・出産など、特に鉄の需要が増加する時期は、サプリメントを飲んでみるのも一案です。鉄は過剰になると、それ以上吸収しない機能が働きますし、月経のある人は1日の用量を守れば、そもそも飲みすぎにはなりません。
サプリメントにもヘム鉄と非ヘム鉄があり、非ヘム鉄は胃腸障害を起こしやすくなることがありますので、胃腸の弱い人は要注意です。非ヘム鉄の中でも、クエン酸とキレートさせているタイプのものは、胃腸障害が少なく吸収が良いのが特徴です。吸収率が高く、胃腸障害の心配のないヘム鉄を選ぶのも良いでしょう。
鉄分は必須栄養素でありながら、摂取が難しい栄養素です。鉄分不足はさまざまな不定愁訴を引き起こす原因になるため、年代を問わず、サプリなども積極的に活用して、意識的に摂りましょう。