昔から「髪によい」とされる「わかめ」。「わかめを食べれば髪が黒くなる」「髪が増える」と聞いたことがある人も多いでしょう。

しかし、わかめを食べただけで髪が黒くなったり、増えたりはしません。
また、白髪の予防になるという科学的根拠もありません。
わかめなどの海藻は、細長く、緑色や黒色の外観から黒髪を連想させることから生まれた都市伝説と言えるでしょう。

しかしながら、海藻は現代人の食生活で不足しがちなミネラルを多く含んでいるため、髪の健康のために積極的に摂りたい食材です。
ただし、ヨードの摂り過ぎによって甲状腺の病気を引き起こすリスクもあるので、過剰摂取には注意しましょう。特に、甲状腺の疾患を持っている人は注意が必要です。

黒く健康な髪を保つために最も大切なのは、バランスのよい食事です。
毎日バランスよく食べることで髪の毛一本一本まで栄養が行きわたると、髪にツヤやハリ、コシが出てきます。

白髪を抜いたからといって、白髪が増えたり、減ったりすることはありません。
白髪を抜いても、その毛根から新しく生える次の毛は白髪になります。
なお、１つの毛穴から生える髪は1本とは限らず、2～3本生えることも多いのです。
髪を黒くする色素をつくる色素細胞（メラノサイト）は、それぞれの毛の毛根にあるため、1本抜いても他の毛には影響がないとされています。
そのため、ある毛穴から生える毛が、白髪であったり、黒髪であったりすることはあります。

ただし、無理やり抜くのはNG！ 毛根が傷ついて炎症を起こす可能性があります。
白髪を見つけた時は、抜かずに「短く切る」が正解です。白髪が出始めたばかりの頃は、「１本くらい……」と抜きたくなるものですが、毛根が傷ついて新しい髪が生えにくくなってしまうため、白髪は抜かないようにしましょう。

この逸話で有名なのが、フランス王妃のマリー・アントワネットです。
フランス革命によって処刑を宣告された王妃は、その恐怖から「一晩で白髪になった」という伝説があります。しかし、現実的には黒髪が一晩で真っ白になることはあり得ません。

白髪は、メラノサイトやそのもととなる色素幹細胞の働きが衰えることで、色がつかないまま生えてきます。そのため、もともと黒髪として生えた髪が1日で全て白くなることは、理論的には考えられないのです。

ただ、ストレスと白髪には深い関係があるのは事実です。
動物実験の結果ではありますが、非常に強いストレスを与えるとマウスが白髪になることは、2020年に米ハーバード大学の研究チームにより報告されました。
一晩で真っ白になることはないにしても、ストレスフルな生活が続くと、一気に白髪が増える可能性はあります。しばらく会わないうちに、白髪が増えて印象が変わったという人は、みなさんの周りにもいらっしゃるのではないでしょうか。

白髪の予防・改善を目指すなら、栄養のバランスのよい食事を毎日摂ることが肝心です。
なかでも積極的に摂りたいのが「タンパク質」「鉄分・亜鉛などのミネラル」「ビタミン」です。

髪が太く長く育つようにサポートし、頭皮の改善にも役立つ「成長ホルモン」の分泌には、良質な睡眠が欠かせません。
成長ホルモンの分泌のピークとなるのは、入眠後すぐに訪れる深い睡眠の間の約3時間です。
ただし全体の睡眠時間が短いと、一晩の間に出る成長ホルモンの量も減少してしまいます。成人ならば平均6~7時間は睡眠を取りたいところです。

現代人はただでさえ睡眠が不足しているのに、夜中まで動画を見たり、ゲームをしたりしていると、いざ寝ようと思ってもなかなか寝付けなくなり、成長ホルモンの分泌が増える最初の3時間の眠りも浅くなってしまいます。
スマホやパソコンから出るブルーライトは良質な睡眠の妨げとなるので、白髪が気になる人は寝る前の操作は控えましょう。

また、毎朝できるだけ同じ時間に起きることも大切です。朝日を浴びると体のリズムが整い、夜の良質な睡眠につながります。

前述したように、ストレスが白髪の原因になる可能性があります。
ストレスを感じ、交感神経が過剰になると放出される神経伝達物質「ノルアドレナリン」が、色素幹細胞を過剰に活性化させ、メラノサイトへと急速に変化させてしまいます。
そのため色素幹細胞が枯渇してしまい、白髪が増加してしまうのです。
ストレスを溜めないこと、自分なりの楽しみを見つけてストレスを発散することが、髪にとっても大切です。

運動は代謝や血流の改善、ストレス解消にもつながります。
体を動かすと新しい髪をつくる成長ホルモンが放出されるため、髪にもよい影響を与えてくれます。
また、運動後は睡眠の質も向上します。
激しい運動は必要ありません。運動が苦手な人は、手軽にできるウォーキングなどから始めてみましょう。