日本における花粉症患者の正確な人数ははっきりわかってはいませんが、2008年に全国規模で行った「鼻アレルギー全国疫学調査」によると、花粉症の症状がある人は29.8％で、日本人の４人に１人が花粉症だといえます。
2016年に東京都が行った調査では東京都民に限れば、2人に1人がスギ花粉症と報告されています。

花粉症を引き起こすのはスギだけではありません。スギ花粉症の人はヒノキの花粉にも反応しやすく、そのため症状が長引くことも。
地域にもよりますが、 スギとヒノキ両方の花粉が飛ぶ3月に症状が重くなり、ゴールデンウィーク明けまで症状が続くという人は、「スギ＋ヒノキ」の花粉症かもしれません。

腸には免疫細胞の約6割が集中し、病原体から体を守っています。
腸の中に善玉の腸内細菌がたくさんいると、免疫機能が十分に働きますが、悪玉の腸内細菌が増殖したヨゴレ腸の状態になると、花粉症も悪化しやすくなるといわれています。
善玉の腸内細菌を増やし腸内環境の改善を図るには、水溶性食物繊維をたくさんとることが効果的です。水溶性食物繊維を多く含む、ニンジン、ダイコン、タマネギ、トマト、キャベツ、ホウレンソウ、ジャガイモ、サトイモ、ナガイモ、果物などを積極的に食べましょう。「リンゴは腸をきれいにする」と耳にしますが、シラカバやスギ花粉症の人の中には、リンゴに対して口腔アレルギーを発症する人もいます。
リンゴを食べて口の中がかゆくなったら控えるようにしましょう。

睡眠不足も免疫機能を弱らせる原因です。
良質な睡眠を得ることで、免疫機能だけでなくホルモンや自律神経のバランスが整い、体調もよくなります。
眠れないからといって深夜にスマホを見続けるのはNG。
部屋を暗くして布団に入り横になるだけで、脳や体を休ませることができます。
花粉症の３大症状の１つ鼻づまりは、睡眠を妨げる大きな要因。
花粉症の治療をして質のいい睡眠がとれるようになると、免疫機能にもよい影響を与えます。

花粉症で鼻づまりがあると、どうしても口呼吸になってしまいがちですが、もともと喘息の方は花粉を口から吸い込むことで喘息が悪化することがあります。
喘息の方は花粉症の治療もきちんと受け、外出時はマスクを着用しましょう。

マスク

マスクには「立体型」と「プリーツ型」があります。
どちらも、 自分の顔に合う大きさのものを選び、正しく装着することが大切です。

立体型：人の顔の形に合わせてデザインされているので、隙間なくフィットする
プリーツ型：圧迫感はないものの、立体型に比べて顔とマスクの間に隙間ができやすい

［立体型マスクの正しい付け方］
顔にフィットさせ、ノーズピースを鼻の形に合わせる

［プリーツ型マスクの正しい付け方］
1.プリーツを上下に伸ばし、マスクを広げる
2.顔に当ててノーズピースを鼻の形に合わせ、マスクをあごの下まで伸ばす
3.顔にフィットさせながら、耳にゴムひもをかける

こんな付け方はNG！

花粉症用のメガネ

花粉の侵入を防ぐ「フード」がついた、花粉症用のメガネがおすすめ！

普通のメガネやサングラスでも、ある程度の効果はあります。


つばの広い帽子

花粉は髪の毛に多く付着します。 帽子を着用して花粉から身を守りましょう。


衣類への花粉の付着を防ぐ

鼻や目をガードしても、衣類に付着した花粉を家に持ち帰ってしまったのではだめ。
なるべく花粉がつかないような工夫をしましょう。

・毛羽立ったウールのコート、ファーなどは避け、ツルツルした素材のコートや上着を着る
・帰宅時は衣服についた花粉をよくはらう
・衣服を洗濯するときには柔軟剤を使う。静電気を抑制することで花粉が衣服に付着するのを防ぐ

帰宅後は洗顔とうがいをする

帰宅後はすぐに顔を洗い、うがいをしましょう。
こうすることで顔についた花粉や口の中の花粉を洗い流すことができ、症状の緩和につながります。
洗眼液で目を洗ったり、鼻うがいをすることも効果があります。


室内を掃除する

外出していた人が持ち込んだり、換気の際に侵入したりと、部屋の中にも案外花粉は存在します。
こまめに掃除を行うことで室内の花粉は確実に減ります。
排気循環式の掃除機を利用すると、排気で花粉が舞うことを防げます。
また、床を水拭きするのも効果的です。
花粉とハウスダストのアレルギーを併発している方には、とくにこまめな掃除が効果的です。


空気清浄機を使用する

花粉症対策として空気清浄機を使用している方も多いでしょう。
確かに空気清浄機には花粉を除去して症状を緩和させる効果がありますが、さらに置く場所によって、その効果には大きな差が出ることをご存知ですか。
最も効果的な設置場所は寝室の枕元。
花粉が飛散する時期は24時間稼働させると症状軽減が期待できます。
ただし、定期的にフィルターを交換するなどメンテナンスをお忘れなく。
空気清浄機にはさまざまなタイプがありますが、できれば高機能HEPAフィルターが搭載されたものを選びましょう。
花粉とハウスダストのアレルギーを併発している方は、空気清浄機がマストアイテムです。


部屋の換気は早朝と夜に

スギやヒノキなどの花粉は、朝に開花して昼頃に住宅街やオフィス街に到達します。
その後、午後になるといったん落ち着きますが、夕方落下した花粉が舞い上がるため、 再び空気中の花粉量が増えます。
窓を開けて換気をする場合は、花粉飛散のピークである12時と17時を避け、早朝か20時以降に短時間だけ行いましょう。
その場合も、レースのカーテンはそのままに窓を開ける幅は10cm程度にすると部屋に侵入する花粉の量を減らすことができます。


トイレマットをこまめに洗う

締め切った狭い空間で服を脱ぎ着する洗面所は、意外と花粉がたまる場所です。それはトイレも同様で、とくに毛足の長いトイレマットは花粉だらけということもあるので、花粉のシーズンは毛足が短いものを使用し、こまめに洗濯しましょう。

いくら花粉症対策をしても、完全に花粉をシャットアウトすることはできません。
つらい症状は薬でコントロールしましょう。花粉症の症状のため、日常生活に支障がでる場合は病院で治療を受けましょう。
病院で受けられる治療には、次のようなものがあります。


お薬による治療

抗アレルギー薬の内服薬、鼻炎薬、点眼薬、点鼻薬で症状をコントロールします。
花粉症の薬の中には服用後眠くなってしまうものもあります。
車の運転をする人などは眠くならないタイプの薬を処方してもらいましょう。
また、目や鼻の炎症が強い場合はステロイド薬を使うこともあります。


アレルゲン免疫療法（舌下免疫療法）

原因となっている花粉の抗原エキスを体に入れて、抗原に対する反応を弱めていく治療法です。減感作療法ともいいます。
花粉症を根本的に治せる唯一の方法 で、約70％の人に効果があります。
アレルゲン免疫療法には、病院に通い皮下注射を打ってもらう方法と自宅で薬を舌の下に投与する舌下免疫療法の2つがあります。


手術による治療

薬では症状がおさまらない場合、とくに鼻づまりがひどい場合や症状が1年を通じてある方には手術が検討されます。
鼻づまりのひどい人が対象ですが、くしゃみ、鼻みずも緩和します。