手指を動かすたびに痛みの走る腱鞘炎(けんしょうえん)ですが、これを「たかが腱鞘炎」と見くびって放置したり、痛みを我慢しながら普段通りに手指を酷使し続けると、ますます炎症がひどくなり、症状によっては腱が断裂したり、そのまま動かせなくなってしまうこともあります。
腱鞘炎の治し方について、腱鞘炎になったらまず行うこと、そして、保存療法として行うストレッチ方法について専門家に伺いました。
手指を動かすたびに痛みの走る腱鞘炎(けんしょうえん)ですが、これを「たかが腱鞘炎」と見くびって放置したり、痛みを我慢しながら普段通りに手指を酷使し続けると、ますます炎症がひどくなり、症状によっては腱が断裂したり、そのまま動かせなくなってしまうこともあります。
腱鞘炎の治し方について、腱鞘炎になったらまず行うこと、そして、保存療法として行うストレッチ方法について専門家に伺いました。
<監修>
<監修>
竹谷内康修先生
竹谷内医院院長。整形外科医・カイロプラクター。東京都生まれ。
竹谷内康修先生
竹谷内医院院長。整形外科医・カイロプラクター。東京都生まれ。
2000年に東京慈恵会医科大学卒業後、福島県立医科大学整形外科へ入局。
2003年、米国のナショナル健康科学大学へ留学
2006年、同大学を首席で卒業。
2007年、手技療法専門のクリニック(現・竹谷内医院)を開設。
著書に『腰痛を根本から治す』『腰・首・肩のつらい痛みは2分で治る! 』(以上、宝島社)、『首の痛みは、自分で簡単に治せる! 』(三笠書房)などがある。
「頚椎症の名医が教える 竹谷内式首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える」(徳間書店)
2000年に東京慈恵会医科大学卒業後、福島県立医科大学整形外科へ入局。
2003年、米国のナショナル健康科学大学へ留学
2006年、同大学を首席で卒業。
2007年、手技療法専門のクリニック(現・竹谷内医院)を開設。
著書に『腰痛を根本から治す』『腰・首・肩のつらい痛みは2分で治る! 』(以上、宝島社)、『首の痛みは、自分で簡単に治せる! 』(三笠書房)などがある。
「頚椎症の名医が教える 竹谷内式首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える」(徳間書店)
腱鞘炎はどのように治療するのでしょうか?
腱鞘炎を放置して病気が進行してしまうと、治療をしても関節が固まって伸びなくなるなどの場合もあるので、悪化する前に整形外科・手外科などの医療機関を受診することが大切です。
医療機関では、まずどういった動作をすると痛みが現れるか、それがどのくらい続くか、動かさなくても痛いのかなどの問診をおこない、症状の確認をします。
続いては触診です。痛みを感じる部分、例えば指のどの関節か、手首ではどうか、あるいは手のひらの指の付け根あたりにある腱鞘を触診し、痛みがあるかどうかをチェックします。
また、関節の動きや腱の腫れ具合などを調べるための超音波検査を行う場合もあります。この超音波検査のなかでも、炎症の程度を色で確認することのできる「エラストグラフィー」という機器が最近では主流です。この機器を使うと、軟らかいところは赤く、硬いところが青く表示されるので、腱鞘部分が青く表示されていれば、「腱鞘炎」が疑われるわけです。
腱鞘炎はどのように治療するのでしょうか?
腱鞘炎を放置して病気が進行してしまうと、治療をしても関節が固まって伸びなくなるなどの場合もあるので、悪化する前に整形外科・手外科などの医療機関を受診することが大切です。
医療機関では、まずどういった動作をすると痛みが現れるか、それがどのくらい続くか、動かさなくても痛いのかなどの問診をおこない、症状の確認をします。
続いては触診です。痛みを感じる部分、例えば指のどの関節か、手首ではどうか、あるいは手のひらの指の付け根あたりにある腱鞘を触診し、痛みがあるかどうかをチェックします。
また、関節の動きや腱の腫れ具合などを調べるための超音波検査を行う場合もあります。この超音波検査のなかでも、炎症の程度を色で確認することのできる「エラストグラフィー」という機器が最近では主流です。この機器を使うと、軟らかいところは赤く、硬いところが青く表示されるので、腱鞘部分が青く表示されていれば、「腱鞘炎」が疑われるわけです。
腱鞘炎の治療は、安静にすることと薬や装具を使って処置することが基本になります。
腱鞘炎の治療は、安静にすることと薬や装具を使って処置することが基本になります。
腱鞘炎の多くは手や指の使いすぎが原因のため、その最大の治療法は当然、患部である手や指を動かさないようにする「安静」が基本となります。
とはいえ、手指を動かさずに生活することはなかなか大変。しかも腱鞘炎は、よく動かすきき手側に起こることが多いため、どうしても日常の動作に不便が生じてしまいます。そこで、作業すべきことの優先順位をつけ、できるだけ反対側の手で動作ができるようにすることをおすすめします。そして腱鞘炎のある側の手を使わざるを得ないときに限って、その作業を短時間で行うなどの工夫が必要です。もちろん、不便が続くとストレスが溜まり、炎症にも悪影響を与えかねないので、できるだけ休憩をとりながら、が鉄則です。
腱鞘炎の多くは手や指の使いすぎが原因のため、その最大の治療法は当然、患部である手や指を動かさないようにする「安静」が基本となります。
とはいえ、手指を動かさずに生活することはなかなか大変。しかも腱鞘炎は、よく動かすきき手側に起こることが多いため、どうしても日常の動作に不便が生じてしまいます。そこで、作業すべきことの優先順位をつけ、できるだけ反対側の手で動作ができるようにすることをおすすめします。そして腱鞘炎のある側の手を使わざるを得ないときに限って、その作業を短時間で行うなどの工夫が必要です。もちろん、不便が続くとストレスが溜まり、炎症にも悪影響を与えかねないので、できるだけ休憩をとりながら、が鉄則です。
また、薬物療法としては、外用鎮痛消炎薬であるローション剤やクリーム剤、湿布剤やテープ剤、あるいは、内服薬の「痛み止め」が有効です。ただし、痛みが軽減したからといって、患部を再び酷使しては元も子もありませんから注意しましょう。
この薬物療法と並行して、着脱可能な装具やギブスを使って固定する処置方法もあります。装着することで患者さんが患部をむやみに動かさないよう意識することができ、軽快を早める効果が期待できます。
また、薬物療法としては、外用鎮痛消炎薬であるローション剤やクリーム剤、湿布剤やテープ剤、あるいは、内服薬の「痛み止め」が有効です。ただし、痛みが軽減したからといって、患部を再び酷使しては元も子もありませんから注意しましょう。
この薬物療法と並行して、着脱可能な装具やギブスを使って固定する処置方法もあります。装着することで患者さんが患部をむやみに動かさないよう意識することができ、軽快を早める効果が期待できます。
こうした「安静」や「薬」を用いても痛みが引かない、痛みが強い場合には、炎症が生じている腱鞘の中に直接ステロイド剤を注射する治療もあります。こうした処置では、注射から2〜3週間以内に症状が改善していき、その効果は3か月から半年ほど持続することが多いようです。
ステロイド注射による治療は「ばね指」の場合、有効率70〜80%、「ドケルバン病」の場合も有効率70〜90%と高く、多くの患者さんが軽快する保存療法です。
ただし糖尿病患者の場合、腱鞘内へのテロイド剤注射で数日間の血糖値上昇が多くみられるため、おすすめしません。
こうした「安静」や「薬」を用いても痛みが引かない、痛みが強い場合には、炎症が生じている腱鞘の中に直接ステロイド剤を注射する治療もあります。こうした処置では、注射から2〜3週間以内に症状が改善していき、その効果は3か月から半年ほど持続することが多いようです。
ステロイド注射による治療は「ばね指」の場合、有効率70〜80%、「ドケルバン病」の場合も有効率70〜90%と高く、多くの患者さんが軽快する保存療法です。
ただし糖尿病患者の場合、腱鞘内へのテロイド剤注射で数日間の血糖値上昇が多くみられるため、おすすめしません。
腱鞘炎の治療を続けているが、腱鞘炎がなかなか改善しない、あるいは再発が続く場合、腫れて厚くなった腱鞘の鞘を切って開く手術、「腱鞘切開」を行うこともあります。
これは局所麻酔下で行われる手術で、所要時間は10〜20分ほど。切開するのは炎症を起こしている腱鞘の一部だけなので傷も小さくて済み、健康な腱鞘は他にも多数存在しているため、手の機能にも問題を残しません。
腱鞘炎の治療を続けているが、腱鞘炎がなかなか改善しない、あるいは再発が続く場合、腫れて厚くなった腱鞘の鞘を切って開く手術、「腱鞘切開」を行うこともあります。
これは局所麻酔下で行われる手術で、所要時間は10〜20分ほど。切開するのは炎症を起こしている腱鞘の一部だけなので傷も小さくて済み、健康な腱鞘は他にも多数存在しているため、手の機能にも問題を残しません。
腫れて厚くなった腱鞘の一部を切開し、腱の通りをスムーズにする手術「腱鞘切開」
腫れて厚くなった腱鞘の一部を切開し、腱の通りをスムーズにする手術「腱鞘切開」
腱鞘炎になってしまった場合、保存療法としては、安静とともに手指のストレッチも有効になります。特にばね指の場合、ストレッチを1〜2か月続けることで、半数以上の患者さんに症状の軽減が見られたという報告もあります。
いずれにせよストレッチは、腱の働きを高めて腱の柔軟性を改善したり、指の付け根の腱鞘を広げて、腱の圧迫を取り除いたりする効果があります。逆に、動かさないよう安静にしすぎても、関節が衰えて動きがより悪くなってしまう場合があるので注意です。無理のない範囲で適度に少しずつ、ストレッチで症状改善をめざしましょう。
腱鞘炎になってしまった場合、保存療法としては、安静とともに手指のストレッチも有効になります。特にばね指の場合、ストレッチを1〜2か月続けることで、半数以上の患者さんに症状の軽減が見られたという報告もあります。
いずれにせよストレッチは、腱の働きを高めて腱の柔軟性を改善したり、指の付け根の腱鞘を広げて、腱の圧迫を取り除いたりする効果があります。逆に、動かさないよう安静にしすぎても、関節が衰えて動きがより悪くなってしまう場合があるので注意です。無理のない範囲で適度に少しずつ、ストレッチで症状改善をめざしましょう。
このストレッチはリラックスした状態でゆっくりと行ってください。急いで素早く繰り返すような動作は、かえって炎症を悪化させます。
このストレッチはリラックスした状態でゆっくりと行ってください。急いで素早く繰り返すような動作は、かえって炎症を悪化させます。
1 手首を反らし、もう片方の手で痛みの出ている指をゆっくりと、10〜30秒ほどかけながら甲側へ反らします。
2 これを20回、朝夕の2セット行います。
1 手首を反らし、もう片方の手で痛みの出ている指をゆっくりと、10〜30秒ほどかけながら甲側へ反らします。
2 これを20回、朝夕の2セット行います。
手首を反らし、症状のある指を、ゆっくりと反らせます。
手首を反らし、症状のある指を、ゆっくりと反らせます。
1 手のひらに収まる硬いブロックを用意します。木製でもプラスチック製でもかまいません。にぎってつぶれない硬いものを用意します。
2 指の付け根と第二関節を90度曲げ、手の腹と指の第一関節の腹の間にブロックを挟み込みます。
3 このとき、第一関節が真っ直ぐになるよう意識します。そして全力で10〜30秒、ブロックを握ります。これを20回、朝夕の2セット行います。
1 手のひらに収まる硬いブロックを用意します。木製でもプラスチック製でもかまいません。にぎってつぶれない硬いものを用意します。
2 指の付け根と第二関節を90度曲げ、手の腹と指の第一関節の腹の間にブロックを挟み込みます。
3 このとき、第一関節が真っ直ぐになるよう意識します。そして全力で10〜30秒、ブロックを握ります。これを20回、朝夕の2セット行います。
指の付け根と第二関節は90度に曲げます。第一関節はできるだけ真っ直ぐに。
指の付け根と第二関節は90度に曲げます。第一関節はできるだけ真っ直ぐに。
症状のある親指を、もう片方の指で挟みながら意図的に10〜30秒ほど曲げるストレッチです。
このとき親指の先端に、少し負荷のかかる力を入れさせることがコツです。
痛みや症状によって深く曲がらない場合もあるので、無理はしないようにしましょう。
1セットが20回。朝夕の2セット行います。
症状のある親指を、もう片方の指で挟みながら意図的に10〜30秒ほど曲げるストレッチです。
このとき親指の先端に、少し負荷のかかる力を入れさせることがコツです。
痛みや症状によって深く曲がらない場合もあるので、無理はしないようにしましょう。
1セットが20回。朝夕の2セット行います。
痛みだけでなく、日常生活に大きな支障の出る腱鞘炎。この腱鞘炎の治し方には、安静と薬物療法、装具などの固定、ステロイド注射、手術、そしてストレッチなど、多様な方法があることを紹介しました。
特に保存療法であるストレッチは、近年その有効性が多く認められ、推奨されるようになりました。ストレッチは、場所を選ばずいつでも実施可能で、費用もかからないので、誰でも気軽に取り組むことが可能です。もちろん無理をしない範囲でゆっくりと、1〜2か月継続して行うことが大切ですが、腱鞘炎がクセになりがちな人は、ふだんから行えるように覚えておくとよいでしょう。病状の回復を促し、悪化予防にもつながります。
痛みだけでなく、日常生活に大きな支障の出る腱鞘炎。この腱鞘炎の治し方には、安静と薬物療法、装具などの固定、ステロイド注射、手術、そしてストレッチなど、多様な方法があることを紹介しました。
特に保存療法であるストレッチは、近年その有効性が多く認められ、推奨されるようになりました。ストレッチは、場所を選ばずいつでも実施可能で、費用もかからないので、誰でも気軽に取り組むことが可能です。もちろん無理をしない範囲でゆっくりと、1〜2か月継続して行うことが大切ですが、腱鞘炎がクセになりがちな人は、ふだんから行えるように覚えておくとよいでしょう。病状の回復を促し、悪化予防にもつながります。