人間の歯(永久歯)は、一生に一度きりしか生えてこない大切な宝物。むし歯や歯周病などで失ってしまうと、二度と元には戻りません。
妊娠をきっかけにかかりつけ歯科医をもって、定期検診と毎日のセルフケアでお口の健康を保ちましょう。
また健康で美しい歯と歯ぐきは、若々しい口元をつくり、表情を活き活きと見せてくれます。
「歯周病は歯肉炎と歯周炎の総称で、歯周病原菌が歯と歯ぐきの境目で増殖し、 歯を支える歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質など)が炎症によって侵される病気です。 従来歯周病は壮年期以降のものというイメージが強かったのですが、近頃では20代で60%が、30代でも80%弱の方が歯肉炎にかかっており、 歯周病の低年齢化が急速に進んでいることが分かっています。今、日本では、成人の約80%の方が歯周病だといわれているのです。」
「ビタミンC(アスコルビン酸)が歯肉の出血を抑える効果をもつことは、実は昔から知られていました。なぜ出血を抑えられるのかというと、 歯ぐきのコラーゲン(歯肉線維芽細胞)をビタミンCが治してくれるからなのです。 歯周病菌が歯ぐきで炎症をおこすと、まず白血球が歯周病菌を攻撃します。 同時に白血球は攻撃ついでに自身の歯ぐきのコラーゲン繊維まで破壊してしまうのです。 その破壊されたコラーゲン繊維を修復するのがビタミンCです。コラーゲン繊維が治ると出血がとまり、歯ぐきが健康になっていくのです。 ですから歯周病予防としてビタミンCをとることをお勧めしています。」
「軽い歯周病の方44人を、
<実験群1> ビタミンC入りのハミガキ剤を使用する、
<実験群2> ビタミンCが入っていないハミガキ剤(その他は実験群1と同じ)を使用する、
<実験群3> 薬効成分がまったく入っていないハミガキ剤を使用する、
という3グループに分けて実験をしました。協力者は一回約0.5グラムのハミガキ剤を使い、1日2回以上のブラッシングをしていただきました。2週目と4週目の2回検査をして、歯肉の炎症やプロービング(歯周ポケットの深さチェック)時の出血などを調べたところ、ビタミンC入りのハミガキ剤を使った<実験群1>の方たちの出血が明らかに改善しており、歯肉の炎症度数についても大幅に改善されていました。つまりビタミンCが歯肉粘膜の組織の代謝を活発にさせ、歯肉を再生させることが、実験で分かったのです」
「歯周病は生活習慣病の一つです。食事をきちんととり、生活習慣を正し、免疫力を高めることが重要です。そして、適切なハミガキ剤での正しいブラッシングによるセルフケアが非常に重要です。」
ビタミンCで歯周病予防。
妊娠すると母体には様々な変化が起こります。女性ホルモンの増加や新陳代謝の状態の変化、唾液や胃液などの消化液の性質やその状態も変化します。こうした変化は歯と歯ぐきにも大きく影響し、むし歯や歯周病の原因になってしまいます。
歯周病は感染症のひとつ。感染症はおなかの赤ちゃんの健康にも影響します。赤ちゃんと自分自身の健康のために、歯と歯ぐきの健康を守りましょう。
妊娠中は、唾液がねばねばしたりホルモンの関係で口の中の清潔が保ちにくい状態になります。
また妊娠初期は、つわりなどで食べ物の好みが変わったり、酸っぱいものが食べたくなったりします。一度にたくさん食べられずに、少しずつ何回にも分けて食事をするなど、食習慣も変わります。
この時期は、唾液や胃液の酸度が変化するうえ、つわりで十分な歯磨きができないことから、歯垢が溜まりやすくなり、酸が歯のエナメル質を溶かしたり歯ぐきが炎症をおこしたりして、むし歯や歯周病にかかりやすくなります、
妊娠中のこうしたトラブルを防ぐためには、ふだん以上に歯磨きが必要になるのです。
一口メモ 妊娠中の歯ぐきはとってもデリケート
妊娠中の口の中はとても敏感。ちょっとした刺激で出血したり、軽い炎症が急速に悪化しやすくなっています。
ちょっとしみたり痛みがあったりすると、歯磨きもついおろそかになりがちです。
でも、磨きやすい小さい歯ブラシや刺激の少ない歯磨き粉を選んで必ず磨きましょう。歯磨き習慣は、自分でできる歯周病予防として、とても効果的な方法です。
歯周病菌は女性ホルモンを利用して発育します。したがって、妊娠中に起こる妊娠性歯肉炎なども、出血するからといって磨かずに放置すると、歯周病に進行していきます。
歯周病は感染症なので、母体にも赤ちゃんにも影響があります。妊娠期は歯周病にかかりやすい体になっていますから、「しっかり予防」「早めのケア」「医師と相談」の3つを忘れずに、お口の健康を守りましょう。
母子健康手帳にも取り上げられているように、歯と歯ぐきの健康はとても大切です。歯と歯ぐきの病気は無自覚のまま経過することが多く、つい見逃しがち。
妊娠健診の時に歯科の健診も受けましょう。できれば、妊娠初期に1回、安定期に1回、そして出産後は毎年1回の歯科健康診査(定期検診)を受けておくことをお勧めします。
人間の歯(永久歯)は、一生に一度きりしか生えてこない大切な宝物。むし歯や歯周病などで失ってしまうと、二度と元には戻りません。
妊娠をきっかけにかかりつけ歯科医をもって、定期検診と毎日のセルフケアでお口の健康を保ちましょう。
また健康で美しい歯と歯ぐきは、若々しい口元をつくり、表情を活き活きと見せてくれます。
一口メモ 歯周病が妊娠に及ぼす影響
最近注目されているのが、膣や子宮の炎症による早産や低出生体重児出産です。
一部のルートとして、母体の口中に存在する歯周病原性細菌が血液を介して子宮や胎盤にまで運ばれる(血行感染)ことがあるといわれています。子宮や胎盤に細菌感染が起こると、そのために陣痛が起こって早産すると考えられています。
歯周病は歯の周囲の細菌感染であり、妊娠中は口腔内が細菌感染しやすい状態ですので、治りにくく、比較的長期間にわたって細菌が存在することになり、子宮内感染を引き起こす可能性があります。実際にはあまり多くないようですが、妊娠中は特に口の中の衛生に気をつけましょう。
歯と歯ぐきの健康には、歯磨きの他にきちんと栄養を摂ることも必要です。良い食生活と毎日の歯磨き習慣で歯を守ること…それが、健康な歯と歯ぐきを保つ秘訣です。
たんぱく質
カルシウム
ビタミンA
ビタミンC
ビタミンD
栄養や歯のケアに無関心だった昔は「妊娠すると歯が悪くなる」と思われていました。現代では妊娠中に必要な栄養素の摂取と、毎日の歯と歯ぐきのケアによって、お口の病気は予防できると理解されています。
歯周病にかかりやすい妊娠中は、殺菌剤やフッ素配合のハミガキ剤を選ぶのはもちろんのこと、さらにビタミンCも配合されているハミガキ剤などで歯ぐきのマッサージを怠らないようにしましょう。毎食後や寝る前の歯磨きをきちんとすることが、むし歯や歯周病のもっとも有効な予防手段です。毎日の歯磨き習慣、しっかり続けましょう。
「母乳が虫歯をつくる」は間違った情報です。乳児のむし歯は、生え始めた歯にカスが溜まりやすくなるのが一番の原因なのです。
まずは下の前歯が見え始めたらむし歯予防の開始です。お乳を飲んだり離乳食を食べた後は、綿棒などで1日2、3回歯をふいてあげましょう。湯冷ましなどを飲ませて口の中をきれいにしてあげてもいいでしょう。