男性の薄毛の原因で、最も多いのが「男性型脱毛症」です。近年は「AGA」という呼び名でご存じの方も多いでしょう。ちなみに、男性型とはいえ女性も同様の脱毛症が起こることがあり、女性の場合は「FAGA」と呼ばれます。AGAやFAGAは進行性なので、薄毛に気づいた時から早めに対策を始めたいものです。

近年では専門のクリニックも増え、より相談しやすい環境が整ってきていますが、最初から病院を受診するのはハードルが高い……と思うこともあるでしょう。薄毛を自分で治したい、とか、まずは自分で薄毛ケアを始めたいと思ったら、市販薬を活用するのも一案です。

現在、ドラッグストアなどで購入できる医薬品には、外用薬（塗り薬）のミノキシジルがあります。

●ドラッグストアで購入できる「ミノキシジル」とはどんな薬？
発毛成分のミノキシジルは、髪をつくる毛包に直接作用し、細胞の増殖やタンパク質の合成を促進することによって、乱れたヘアサイクルを正常化し、発毛・育毛効果を発揮します。ヘアサイクルの変化によって小さくなった毛包に働きかけ、細く軟毛化した毛髪を太く、抜けにくい毛へと成長させます。

血管拡張作用があるミノキシジルは、実はもともと医療用の高血圧内服薬として用いられていました。後に、毛包周辺の血流を改善し、十分な栄養や酸素を供給することが分かり、発毛を促進する効果があると認められるようになったのです。
ミノキシジルは既に始まってしまった脱毛に対しても有効です。脱毛の進行を食い止めて現状を維持するミノキシジルの脱毛進行予防効果にも注目が集まっています。

また、ドラッグストアで購入できる発毛剤は、外用薬の一般用医薬品のみとなっています。ミノキシジルを配合した男性用発毛剤には、ミノキシジルの濃度が1％のものと5％のものがあり、使い分けることができます。発毛剤を初めて使う方は、濃度１％など成分配合が少ないものから試してみるとよいでしょう。女性用の発毛剤は、現時点（2024年2月）では濃度１％のみが国内で承認されています。女性で薄毛が気になり始めたら、女性用の発毛剤を使いましょう。

薄毛を自分で改善したい、発毛剤や育毛剤・養毛剤を使いたいと思ったら、髪の土台である頭皮に栄養が行きわたるように、体の中から頭皮のコンディションを整えることも同時に行いましょう。

そもそも、髪や爪などは生命活動に影響しないため、栄養の供給が後回しにされる組織です。逆に言えば、体の状態が悪ければ、影響が出やすい組織だということ。髪や爪が“健康のバロメーター”といわれるのもそのためです。だからこそ、体が健康でないと、発毛剤や育毛剤を使用しても、思うような効果が見込めない可能性もあるのです。効果を最大限に引き出すための、健康な体づくりも並行して取り組むことが大切です。

髪をつくっている体を整えるカギは「食事」「睡眠」「運動」「ストレスマネジメント」の４つ。これら４つは、どれも深いかかわりがあります。全てを組み合わせて、初めて髪が育つ“体の総合力”を上げることができるのです。

●食事
髪は自分が食べたものでできている、といっても過言ではありません。薄毛が気になり始めたら、まずは毎日の食事から見直しましょう。

髪を育てるために必要な栄養素には、髪をつくるもととなるタンパク質の他、ビタミンＣ・Ｂ群、ミネラル（特に亜鉛）などがあります。髪の主成分はタンパク質ですが、現代人の食事は麺類や丼物など炭水化物に偏りがちです。良質なタンパク質を意識的に摂らなければ、髪に必要な栄養素が不足してしまいます。タンパク質は肉だけでなく、魚や卵、乳製品、豆類などからも合わせて摂るのがおすすめです。

タンパク質と一緒にぜひ摂りたいのがビタミンＣ・Ｂ群と亜鉛です。ビタミンB群は毛母細胞を活性化させ、発毛を促します。ほうれん草やブロッコリーなど色の濃い野菜や、豚ヒレ肉や鶏のささみにも多く含まれます。ビタミンC群は抗酸化作用があり、細胞の働きを健全に保ち、頭皮の状態を整えてくれます。柑橘類などの果物、ピーマン、ゴーヤなどに多く含まれています。
亜鉛は髪のもとになる毛母細胞の分裂に欠かせない栄養素ですが、体内ではつくり出すことができず、なおかつ食事からの摂取も難しい栄養素です。亜鉛を比較的多く含む食品は牡蠣やエビ・カニ・貝などの魚介類や、肉類・魚類です。これを食べればOKというものはないので、普段からバランスのよい食事を心がけましょう。

●睡眠

睡眠は髪の成長と深くかかわっています。髪の成長に欠かせない「成長ホルモン」が睡眠中に分泌されるためです。成長ホルモンは身長を伸ばす、筋肉をつくるなど組織の成長と修復を促す働きがあります。

成長ホルモンがしっかり分泌されれば、髪を太く長く育つようサポートしてくれます。しかし、成長ホルモンは年齢と共に分泌が減っていきます。大人が成長ホルモンをしっかり分泌させるためには、毎日平均6～7時間は睡眠をとりたいところです。そんなにとれないという方も、成長ホルモンの分泌がピークを迎える、眠り始めの深い睡眠に当たる3時間を確保することが大切です。

ただし、その3時間だけ眠ればいいというわけではありません。全体の睡眠時間が短ければ深い睡眠に入るサイクルも少なくなり、一晩に出る成長ホルモンの総量も減少してしまいます。連続した3時間の深い眠りを持続することが大切です。

●運動
運動をすると新しい髪をつくり出す成長ホルモンが放出されます。成長ホルモンは髪を太く長くし、頭皮の改善にも貢献します。運動をした後は食事もおいしく感じられ、睡眠の質も高まります。

薄毛ケアが目的なら、筋トレとランニングなど20～30分程度の有酸素運動の組み合わせがおすすめです。ジョギングは難しくても速歩のウォーキングなど、無理のない範囲で始めてみましょう。

●ストレスマネジメント
髪の健康に過度なストレスは禁物です。ストレスは細胞や遺伝子を傷つける活性酸素を発生させ、栄養や老廃物のスムーズな循環を妨げてしまいます。さらに、ストレスがかかると不眠や食欲減退などの悪影響も。ストレス発散に運動を取り入れるのもよいでしょう。