神経伝達物質のセロトニンは、覚醒状態を調整したり、意欲や気力などに影響したりと、感情をコントロールすることから" 幸せホルモン" などと呼ばれています。脳で生成されるセロトニン(別名:幸せホルモン)は全身で生成されるセロトニンのうちのわずか5%ほどで、セロトニンの多くは腸でつくられています。
では、腸で生成されたセロトニンも "幸せホルモン"と呼べるのでしょうか。
神経伝達物質のセロトニンは、覚醒状態を調整したり、意欲や気力などに影響したりと、感情をコントロールすることから" 幸せホルモン" などと呼ばれています。脳で生成されるセロトニン(別名:幸せホルモン)は全身で生成されるセロトニンのうちのわずか5%ほどで、セロトニンの多くは腸でつくられています。
では、腸で生成されたセロトニンも "幸せホルモン"と呼べるのでしょうか。
監修
監修
九州大学大学院医学研究院心身医学教授/九州大学病院心療内科科長
須藤 信行先生
九州大学大学院医学研究院心身医学教授/九州大学病院心療内科科長
須藤 信行先生
1988年九州大学医学部卒業。九州大学大学院医学研究院心身医学准教授などを経て、2009年より教授。
日本心身医学会理事、日本心療内科学会理事などを務める。
1988年九州大学医学部卒業。九州大学大学院医学研究院心身医学准教授などを経て、2009年より教授。
日本心身医学会理事、日本心療内科学会理事などを務める。
総合監修
総合監修
自治医科大学 名誉教授
菅野 健太郎先生
自治医科大学 名誉教授
菅野 健太郎先生
1973年東京大学医学部医学科卒業。76年東京大学医学部第三内科に所属、アメリカ留学後、85年同大学医学部第三内科助手、91年東京大学保健センター助教授・副所長。98年自治医科大学消化器内科主任教授。2014年より同大学名誉教授。日本消化器関連学会機構理事長、アジア太平洋消化器学会機構理事長などを歴任。
消化管の細胞生物学的研究(消化管ホルモン、酸分泌機構、細菌と胃癌)ならびに消化管疾患の治療と予防に関する研究を行っている。
1973年東京大学医学部医学科卒業。76年東京大学医学部第三内科に所属、アメリカ留学後、85年同大学医学部第三内科助手、91年東京大学保健センター助教授・副所長。98年自治医科大学消化器内科主任教授。2014年より同大学名誉教授。日本消化器関連学会機構理事長、アジア太平洋消化器学会機構理事長などを歴任。
消化管の細胞生物学的研究(消化管ホルモン、酸分泌機構、細菌と胃癌)ならびに消化管疾患の治療と予防に関する研究を行っている。
腸でつくられたセロトニンは血液脳関門※によって脳内に入ることはできません。腸で作られたセロトニンは、脳でつくられるセロトニンとは異なり、腸のぜん動運動の促進や、血流にのって全身をめぐり骨形成などの役割を担っています。
※血液から脳組織への物質の移行を制限する仕組みのこと。
腸でつくられたセロトニンは血液脳関門※によって脳内に入ることはできません。腸で作られたセロトニンは、脳でつくられるセロトニンとは異なり、腸のぜん動運動の促進や、血流にのって全身をめぐり骨形成などの役割を担っています。
※血液から脳組織への物質の移行を制限する仕組みのこと。
セロトニンが腸の運動を促すことで便通改善につながれば、便秘で悩む人にはとても嬉しいこと。その意味で腸のセロトニンも" 幸せホルモン"といえるかもしれません。
腸でつくられたセロトニン自体は脳内に入ることはできませんが、脳内でセロトニンの生成に必要な物質(トリプトファン)は腸から脳へ送られます。このように腸が脳に及ぼす影響は他にもあり、反対に脳が腸に及ぼす影響もあります。脳と腸という別々の臓器でありながら、互いに情報を伝達し合い、双方向に影響を及ぼしあう関係にあることを「脳腸相関」といいます。具体的にどのような影響を及ぼしているのか確認しましょう。
セロトニンが腸の運動を促すことで便通改善につながれば、便秘で悩む人にはとても嬉しいこと。その意味で腸のセロトニンも" 幸せホルモン"といえるかもしれません。
腸でつくられたセロトニン自体は脳内に入ることはできませんが、脳内でセロトニンの生成に必要な物質(トリプトファン)は腸から脳へ送られます。このように腸が脳に及ぼす影響は他にもあり、反対に脳が腸に及ぼす影響もあります。脳と腸という別々の臓器でありながら、互いに情報を伝達し合い、双方向に影響を及ぼしあう関係にあることを「脳腸相関」といいます。具体的にどのような影響を及ぼしているのか確認しましょう。
●トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、食事で摂ったトリプトファンは腸で吸収され、それが脳に移行して脳内セロトニンとなります。
●神経系
自律神経などを介して腸から脳へ情報を伝達します。
●免疫系
腸には全身の7割にも及ぶ免疫細胞が存在しているといわれています。腸内細菌は免疫細胞の活性化を促す役割を果たしており、こうした免疫細胞を通じた炎症を抑える作用などが、脳でも働いているのではないかといわれています。
●短鎖脂肪酸
腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が脳内で働く免疫細胞の機能の調整に影響していると考えられています。
●トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、食事で摂ったトリプトファンは腸で吸収され、それが脳に移行して脳内セロトニンとなります。
●神経系
自律神経などを介して腸から脳へ情報を伝達します。
●免疫系
腸には全身の7割にも及ぶ免疫細胞が存在しているといわれています。腸内細菌は免疫細胞の活性化を促す役割を果たしており、こうした免疫細胞を通じた炎症を抑える作用などが、脳でも働いているのではないかといわれています。
●短鎖脂肪酸
腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が脳内で働く免疫細胞の機能の調整に影響していると考えられています。
※短鎖脂肪酸とは...短鎖脂肪酸は、食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌がエサとして食べることで産生する代謝物質の一つです。代表的なものに酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあり、体によい影響を与えます。腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が脳内で働く免疫細胞の機能の調整に影響していると考えられています。
※短鎖脂肪酸とは...短鎖脂肪酸は、食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌がエサとして食べることで産生する代謝物質の一つです。代表的なものに酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあり、体によい影響を与えます。腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が脳内で働く免疫細胞の機能の調整に影響していると考えられています。
ストレスを受けたり緊張状態が続いたりすると、脳と腸をつなぐ自律神経やホルモンの働きによって腸が機能異常を起こし、痛みや不快症状が起きやすくなります。
ストレスを受けたり緊張状態が続いたりすると、脳と腸をつなぐ自律神経やホルモンの働きによって腸が機能異常を起こし、痛みや不快症状が起きやすくなります。
脳-腸-腸内細菌相関と病気の関係
脳-腸-腸内細菌相関と
病気の関係
脳-腸-腸内細菌相関については世界中で研究が行われており、
【腸の病気】過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患
【心の病】うつ病や自閉症
【脳の病気】パーキンソン病、認知症
などと関係するといわれています。
これらの病気は、社会的な要因をはじめ様々なことが複雑に関連しているため、腸内環境を改善すれば病気の発症や進行を防ぐことができるというものではありません。
近い将来これらの病気との関係についても、科学的に解明されることが期待されます。
脳-腸-腸内細菌相関については世界中で研究が行われており、
【腸の病気】過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患
【心の病】うつ病や自閉症
【脳の病気】パーキンソン病、認知症
などと関係するといわれています。
これらの病気は、社会的な要因をはじめ様々なことが複雑に関連しているため、腸内環境を改善すれば病気の発症や進行を防ぐことができるというものではありません。
近い将来これらの病気との関係についても、科学的に解明されることが期待されます。