女性特有の不眠とは?生理前や更年期にはなぜ眠りにくくなるの?

「眠れない」「眠りが浅く、すぐに目が覚めてしまう」など、不眠に悩む人は少なくないでしょう。女性の場合は特に、生理前や更年期などホルモンバランスに変化が生じる時期に不眠を感じることが多いかもしれません。女性特有の不眠はなぜ起きるのでしょうか。不眠の原因や、不眠の解決に向けたセルフケアについてお伝えします。

監修プロフィール
緑蔭診療所 はしぐち・れいこ 橋口 玲子 先生

1954年生まれ。東邦大学医学部卒業。医学博士。内科・小児科医、循環器専門医。神奈川県南足柄市にある緑蔭診療所で、西洋医学に漢方やアロマセラピー、ハーブを取り入れた診療を実践。セルフケアの指導も行う。著書に「補完・代替医療 ハーブ療法」(金芳堂)、「アロマ&ハーブセラピー手帖」(マイナビ出版)、「専門医が教える 体にやさしいハーブ生活」(幻冬舎)、「40歳からの幸せダイエット」(講談社)など。

女性特有の不眠や睡眠トラブルの原因となる「女性ホルモン」について知っておこう

女性特有の不眠や睡眠トラブルの原因となる「女性ホルモン」について知っておこう

不眠や睡眠のトラブルに限らず、女性の健康には「女性ホルモン」がかかわっています。特に大きく関与するのがエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という、2つの女性ホルモンです。それぞれ、下記のような働きがあります。


●エストロゲンの働き

エストロゲンは卵胞(らんほう)ホルモンとも呼ばれ、月経終了後から排卵日にかけて比較的多く分泌される女性ホルモンです。

妊娠に備えて卵巣内の卵胞を成熟させる、受精卵の着床に備えて子宮内膜を厚くする、肌のツヤをよくする、血管をしなやかに保つ、骨密度を維持するなど、様々な働きがあります。エストロゲンの影響によって月経後から排卵日までは、心身ともに快調に過ごせる傾向があります。


●プロゲステロンの働き

プロゲステロンは、黄体期と呼ばれる排卵日から月経開始前までの期間に多く分泌されることから、黄体ホルモンとも呼ばれます。女性の体を妊娠が成立しやすいように調整する働きがあり、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整える、体温を上げる、乳腺を発達させるといった体の変化を生じさせます。その他にむくみ、食欲の増進、眠気、イライラなどのやっかいな変化ももたらすため、プロゲステロンが優位になっている期間は、活動量が低下しがちです。

生理前に眠れないと感じるのはなぜ?

生理前に眠れないと感じるのはなぜ?

生理前は上記のようにプロゲステロンの分泌量が多い時期であることから、「眠くて仕方がない」という人が多い傾向にあると考えられます。しかし、中には「眠れない」という人もいます。眠くなりやすいはずの月経前に眠れなくなるのは、体内時計のずれが関係しているかもしれません。

体内時計の研究者の中には、月経の前は体内時計が後ろにずれやすくなるという説を唱えている人もいます。体内時計がずれると、眠くなる時間もその分、ずれていきます。その結果、普段とは違う時間帯に眠気が生じるため、眠るタイミングを逃してしまい「眠れない」と感じている可能性が考えられます。

その他にはプロゲステロンによる体温の上昇が快眠を妨げ、眠りにくくしていることもあるようです。

更年期の不眠の原因とは

女性ホルモン(エストロゲン)の変化

女性ホルモンと睡眠のかかわりでいえば、女性ホルモンの分泌量が大きく低下する更年期にも不眠に悩まされることが多々あります。

更年期の不眠の原因は主に、女性ホルモンの分泌量低下による自律神経の乱れと考えられます。更年期になると卵巣の機能が低下し、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が大きく低下します。特にエストロゲンの低下は著しく、ホルモン分泌の指令を出す脳の視床下部から「エストロゲンを分泌させて」という指令を受けても、出せるエストロゲンがないという状況になります。すると自律神経系の司令塔でもある視床下部も影響を受け、自律神経のコントロールがうまくいかなくなってホットフラッシュ(ほてりと発汗)が起こることがあります。ホットフラッシュが夜間何度も起きて熟睡できなかったり、同時に動悸や不安が起こって精神的にきつくなったりする場合は医師による治療を受けたほうがいいでしょう。


更年期の不眠の原因とは

日常生活に支障を来すほど激しい更年期の不調は、決して多いわけではないので、それほど怖がる必要はありません。ホットフラッシュがひどい場合は女性ホルモン製剤を投与するホルモン補充療法が効果的です。婦人科を受診し、相談してみましょう。ただし、気分の落ち込みや不安、不眠など、つらい精神症状が続く場合はホルモン補充療法だけでは改善が難しいので、精神科や心療内科を受診しましょう。

ストレスの緩和で、女性ホルモンの影響による不調を軽減

ストレスの緩和で、女性ホルモンの影響による不調を軽減

女性ホルモンの分泌をつかさどる脳の視床下部という部分は、心身両面のストレス反応にかかわる中枢でもあります。そのため、ストレスケアがうまくいかないと不調の度合いが重くなることも少なくありません。できるだけリラックスして過ごし、ストレスによる女性ホルモンの乱れや不眠などの不調の悪化を防ぎましょう。

時には考え方を変えて、ストレスをケアすることも大切です。例えば月経前に不眠だけではなく様々な不調が生じると、イライラが募りやすい時期であることも影響して、絶望的な気持ちになることがあるかもしれません。しかし、月経前に不調が生じるということはプロゲステロンが正しく優位になっているということで、すなわちホルモンの分泌が順調な証拠ともいえます。「調子が悪くて当然」な時期でもあるので、この時期は不調があっても開き直ることが、ストレスケアとしては有効かもしれません。

更年期も同様に、不眠や体調不良を抱えて当然の時期です。更年期の女性は自分自身の体調不良に加えて、子どもの自立や親の介護など、自分以外の問題も同時に抱えることが多々あります。悩みは一人で抱え込まず、家族や周囲の人に相談するなどして、少しでも軽減させていきましょう。

生理前や更年期の安眠におすすめのハーブ

生理前や更年期の安眠におすすめのハーブ

月経前や更年期に不眠で悩んだ時は、下記のようなハーブでリラックスしてみてはいかがでしょう。


●チャイニーズアンゼリカ

漢方の当帰(とうき)という生薬としても知られているチャイニーズアンゼリカは、アメリカではサプリメントとして人気です。日本では、当帰を含む漢方薬のエキス剤が保険適用で使えるため、あまり流通していませんが月経痛、月経前症候群(PMS)、更年期障害など月経に関する様々な不調に用いられる生薬です。漢方では当帰単独で用いることはありません。自分に向いているか気になる方は、漢方に詳しい医師や漢方薬局で相談してみましょう。


●パッションフラワー

精神を安定させ、安眠に導く作用をもつといわれるハーブです。寝つきが悪い人、ちょっとした音や光で目が覚めてしまうという人におすすめです。ハーブティーにすると、くせのない草木の香りが心地よい味わいをもたらしてくれます。依存性はありません。

女性ホルモンは女性の体に様々な影響を与え、中には不眠を生じさせることもあります。セルフケアを試したり、ハーブでリラックスをしてみたり、時には医療の力に頼ったりしながら、快眠を目指していきましょう。


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