有酸素運動を取り入れることで疲れにくい体質に。疲労を回復させやすい体作りのコツ

有酸素運動を取り入れることで疲れにくい体質に。疲労を回復させやすい体作りのコツ 有酸素運動を取り入れることで疲れにくい体質に。疲労を回復させやすい体作りのコツ

一般的に、身体にとって負荷の比較的軽い運動は、筋肉を動かすエネルギーとして血糖や脂肪成分が空気中の酸素と一緒に使用されることから「有酸素運動」と呼ばれています。

一方で、例えば陸上の短距離走のように短時間で強い負荷がかかり運動強度が大きい運動の場合には、筋肉を動かすエネルギー源として酸素がほぼ用いられていないために「無酸素運動」と呼ばれています。

この両者は、いわゆる運動中に呼吸をしているかどうかという意味で区別されるわけではありません。通常の運動やスポーツというのはこれらの無酸素運動と有酸素運動がともに組み合わさって構成されています。例えばジョギングよりもウォーキングの方が運動強度の観点から負荷が小さい分、有酸素運動の割合がより高くなっていると言えます。

そして、この割合そのものが無酸素運動の際に出る疲労の原因物質と考えられている乳酸生産量に関与して、いわゆる運動時の疲労感の程度に繋がっていきます。今回は、有酸素運動を日常的に取り入れることで疲れにくい体質になるのか、そして疲労を回復させやすい体作りのコツに焦点を当てて説明していきます。

<監修>
甲斐沼孟
国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科。
救急診療のみならず、消化器外科や心臓血管外科、総合診療領域に精通しており、学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行う。

有酸素運動とはどのようなトレーニングを指すのか

有酸素運動とはどのようなトレーニングを指すのか 有酸素運動とはどのようなトレーニングを指すのか

通常のウォーキングやジョギング、あるいはエアロビクスやサイクリング、そして水泳など、一般的に長時間かけて継続して行う運動をされている方も多くいらっしゃるかと思います。

これらの運動は、運動している際に筋肉を収縮させるためのエネルギーであるアデノシン三リン酸(ATP)を体内の糖分や脂肪分から酸素を用いて作り出すことから「有酸素運動」と呼ばれます。

これらの有酸素運動に含まれるエクササイズとして、屋内や屋外、あるいは水中などで実施されるスポーツが多種多様に存在します。

例えば、室内で行われる代表例としてはエアロビクスダンス、エアロバイク、体操感覚を取り入れた太極拳などが挙げられます。

また、プールでの水泳、アクアビクス、アクアウォーキングなどもその範疇に入ります。

そして、屋外で行われる有酸素運動の中には、ジョギングやウォーキング、自転車に乗りながらのサイクリング、ハイキング、そしてクロスカントリースキーなどが代表格です。

有酸素運動で期待できる老廃物排出効果

さて、皆さんは有酸素運動のあとは身体の疲れが残りにくいかどうか御存知でしょうか。以下で有酸素運動と疲労に関連している老廃物の排出効果について紹介します。

多くの方は、心身に疲れが溜まった時にはゆっくりと静養を取った方がよいと思われているでしょう。しかし、実際には疲れた時こそ、逆に体を軽く動かす有酸素運動を行う事が望ましいとされる場合もあります。つまり、言い換えれば有酸素運動を行うことで、疲労が回復しやすいと考えられているのです。

これらの発想をアクティブレスト(日本語で言うと積極的休養)と呼んでおり、自身が感じた疲労を自ら前向きに動くことで緩和するというアイデアです。

有酸素運動というのは、軽度の負荷をかけ酸素を取り込みながら実践する運動であり、その際に筋肉を動かすと、自動的に全身の血流が促されて体内の血液循環がスムーズになり疲労物質や老廃物が排出されることに繋がります。

有酸素運動を実行することで身体中の血流が良くなると血中の乳酸産生物や不要な老廃物などが腎臓や肝臓などの臓器に運ばれて、そこで分解排出されて結果的に疲労が回復すると考えられています。

比較的負荷の軽い有酸素運動ならば筋肉に過度な負担がかかり過ぎて新たな乳酸物質が生成されるという心配も少ないのです。

これらの理由で、疲れた時にはただ単純に横になって安静にするよりも、有酸素運動を効率よく行うことで早く疲労回復が訪れると考えられます。

血圧も安定させ病気の予防にも効果的

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若年者のみならず高齢者の健康づくり運動には、いわゆる有酸素運動とレジスタンス運動(腕立て伏せなどのような連続した運動)の複合的なトレーニングが重要であり、これらの異なる運動をどのように組み合わせるのが安全かつ効果的かを検討する必要性が高いと言われています1)。

一般的に、有酸素運動というのは脂肪分を燃料として行いますので、血中の悪玉コレステロールや中性脂肪などを含む体脂肪の減少が期待出来ます。そして、有酸素運動を開始してから約20分程度経った時からエネルギー源として体脂肪を利用するようになると言われています。

ですから、内臓脂肪の減少を視野に入れたダイエットなどを目的とする場合には長い時間継続しやすい有酸素運動の比率が多いエクササイズなどを選択することが効果的です。

このようなことから、脂質異常症や動脈硬化がリスクとして関連している冠動脈疾患や高血圧などに効果があると考えられています。

また、運動することそのものの効果として心肺機能を鍛えることができますし、骨密度の改善や骨粗鬆症の予防などの効果があわせて期待できるでしょう。

激しい運動は要注意、疲労回復のための有酸素運動

次に、疲れが取れやすい身体や疲れにくい身体を作るためにはどうすればいいのかを説明していきます。

前述した通り、心身に疲労がたくさん溜まった時には、体を動かすと血流が良くなって体内の老廃物や疲労物質が排出されやすくなるために敢えて軽めの有酸素運動を実践するほうが疲労は回復しやすいと紹介しました。

そして、日頃から運動不足傾向になると相対的に筋力や体力が衰えて、日常的な慢性疲労感が強くなります。

逆に運動をやりすぎると筋肉疲労が強まって回復までに時間を要しますので、有酸素運動はやるなら1回30分程度、頻度的には週に2~4回位が適当であり、これらの有酸素運動を習慣化させることで慢性疲労が緩和すると考えられます。

日々の中で、軽めのジョギングや水泳などの有酸素運動を無理のない範囲でマイペースに継続させることが理想的だと言えるでしょう。

まとめ

普段から体を動かす習慣がないと、階段の昇り降りなど日々の社会生活のちょっとした動作にまで少なからず疲労感を自覚するようになってしまいます。

少し動くだけでも疲れが溜まるからといって余計に運動習慣から遠ざかってしまうと、筋肉がさらに衰えて普段の動作がどんどんときつく感じるという悪循環になりかねません。

日常的に感じる慢性的な疲労を緩和させるためにも、あるいは健康的な肉体を手に入れて病気を予防する為にも有効的な有酸素運動を自分の生活に積極的に取り入れることによって筋肉を鍛えて心肺機能を向上させ、体力や持久力をつけることをお勧めします。

【参考文献】
1)塩津陽子:健常な高齢者における有酸素運動とレジスタンス運動による複合トレーニングの順序性に関する研究.同志社大学学術リポジトリ.2018