おいしく・健康になる「間食」ライフ―ヘルシースナッキング実践ガイド1回目

エネルギー制限はもう古い? 時代に合った栄養指導を

普段の食事を軽めにして、間食を賢く取り入れることで食べすぎを防ぐという食習慣「ヘルシースナッキング」が注目されている。

ダイエット指導や食事指導の際「食事は規則正しく」「1日の摂取エネルギーを減らしましょう」といわれても、なかなか実践しにくいのが現状だ。

管理栄養士の足立香代子先生は、「これまでのエネルギー制限主体の食べ方はもう古い。

間食を上手にとることは、むしろ栄養バランスを整え、健康にしてくれます。ダイエットの味方にもなります」と話す。

からだのためになる間食指導とは、具体的にどのようなものなのか。

第1回目は、臨床栄養学の第一人者でもある足立先生に、肥満や糖尿病の一次予防を指導する管理栄養士さんに向けてアドバイスをいただいた。


足立香代子先生
一般社団法人臨床栄養実践協会 理事長、せんぽ東京高輪病院 名誉栄養管理室長。
長年の臨床経験を生かし、講演活動や管理栄養士の育成に力を注いでいる。医療現場での栄養管理の功績により、社会保険学会賞・日本栄養改善学会賞・厚生労働大臣賞、教育賞等を多数受賞。間食に関する著書も多数。『医師が信頼を寄せる栄養士の糖質を味方にするズルイ食べ方 - 人生を守る「足し算食べ」BEST100」(ワニブックス)』『太らない間食 最新の栄養学がすすめる「3食+おやつ」習慣』(文響社)『最新! 太らない食べ方―「食べないでやせる」は大間違い! 』(廣済堂健康人新書)などがある。

食と栄養の常識は大きく変わっている

これまでのダイエット法、健康法で推奨されてきたのが、「エネルギー制限」です。

あなたが、「太るから油を避けてノンオイルに」「糖尿病だから糖分の多い果物は食べないようにしましょう」「1日トータルで何kcalに抑えましょう」といった指導を行なっているとしたら、「もう古いですよ」といわざるを得ません。

あれはダメ、これはダメと制限ばかり強いられては、一般の方はストレスでいっぱいになってしまいます。

何を食べていいかわからなくなっている人も多いのではないでしょうか。

食事や栄養に関する情報は、時代によって大きく変わります。

私たち管理栄養士には、情報を常にアップデートすることが求められています。

エネルギー制限による食事指導が難しい理由の一つは長続きしづらいということです。

反動でドカ食いをしやすくなり、リバウンドもよく起きています。

二つ目としては、必要な栄養素がとれなくなること。

現代の食生活では、とかく手軽にとれる炭水化物(糖質)中心の献立が増え、「エネルギーは十分でも栄養失調」という状態になりがちです。

食事を1日のエネルギー内に収めればいいという食事指導では、筋肉や骨が弱り、健康な体を維持できなくなる可能性があります。

超高齢化が進む現代では、高齢者の筋力低下、サルコペニアやフレイルが問題になっています。

よって、メタボリックシンドロームや生活習慣病を予防するためであっても「体重はむやみに減らすべきではない」というのが最近の常識です。

エネルギーを制限したほうが良いのは、体重が増えすぎた人。

血糖値が高いからといって、エネルギー制限だけで血糖値が下がるという根拠も明確ではありません。

重要なのは、本人に適正な食事療法を考え、どのように健康的に食べさせるかという視点です。

そこで取り入れたいのが、間食を上手に取り入れる"ヘルシースナッキング"という食習慣です。

〝ガマン〟がもたらす肥満の悪循環怖いのは食後高血糖(血糖値スパイク)

では、健康になるための「間食」とはどのようなものでしょう。

間食を賢くとるために、無視できないのが「血糖値」です。

食事をすると血糖値が上昇するのは当然のことで、血糖値の上昇自体が悪いわけではありません。

血糖値が上がっても、インスリンの働きによって元に戻ります。

この食後の血糖値の変化が緩やかなことが理想です。

問題になるのは、食後の血糖値が乱高下する「食後高血糖(血糖値スパイク)」が起きたときです。

この状態になると、以下のような問題が生じます。

・ 急激なインスリンの分泌が、集中力の低下やだるさを招く
・ インスリンが、余分な糖を脂肪として溜め込む
・ 食後高血糖が続くと、インスリンがうまく分泌されなくなり、糖尿病や動脈硬化のリスクが高まる

また、急上昇した血糖値が急激に下がると低血糖のような症状が生じることがあります。

そうなるとお腹が空き、糖質の多いものから食べたくなり、次の食事を食べすぎるという悪循環が生じます。

つまり、「食後高血糖(血糖値スパイク)」が頻繁に起こるような生活が続けば、肥満につながるだけでなく、がん、脳卒中、心筋梗塞や認知症などのリスクも高まります。

わき起こる食欲を抑えるには間食が不可欠

健康な人でも、食べるものや食べ方に無頓着でいると、食後高血糖はよく起きています。

仕事をしている人であれば、12時ごろに昼食をとり、夕飯は20時ごろ、忙しい人ではもっと遅くなる人もいるのではないでしょうか。

昼食と夕食の間があけば、当然、お腹はペコペコになるはず。それが問題なのです。

例えば、12時に昼食をとり、ラーメンライスを食べたとしましょう。

糖質を多く含む食事は吸収が早く、血糖値は急激に上昇しますが、その後、夕食まで何も食べないでいると、夕食をとる頃には血糖値が下がり、このまま夕食まで何も食べないでいると、本能的に「血糖値をぐんとあげられる食べ物=炭水化物(糖質)」が欲しくてたまらなくなります。

しかも、低血糖状態では、頭がぼーっとしやすく、だるさなども感じやすい。

そんなときに、人は健康のため「野菜から食べよう」とか「ゆっくり噛んで食べよう」とは考えません。

結果、夕食にドカ食いしやすくなるのです。

速やかにエネルギーに変わる糖質は、摂りすぎると「体脂肪」に変わりやすいという性質を持っています。

そう、「夕食のドカ食い」こそ、太る一番の原因。

食べて寝るまでの時間が短いということを考えても夕食の過食を防ぐことがとても重要。

よって、長い間隔が空きがちな昼食と夕食との間に間食をとることは、ドカ食い防止、肥満予防に有効です。

間食は、食べるものをきちんと選べば、すでに血糖値が高めの人、糖尿病になってしまった人、太りやすい人にも勧められます。

むしろ間食を積極的に取り入れたほうが、1日の総摂取エネルギーも適量で満足を得られるようになります。

適正なエネルギーかどうかは適正体重かどうかで判断する

最後に、じゃあエネルギーだけでなくて何で見ればいいの?という疑問にお答えしましょう。

これからの栄養指導では、適正体重を維持できているかどうかで判断すべき、と私は考えています。

人にはそれぞれ個体差、年齢差があり、代謝量や日々の活動量も変わってきます。

ですから、その人のエネルギー量が適正かどうかは、適正体重であるかどうかで判断した方がいいのです。

目標のBMIは年代により異なり、18~49歳で18.5~24.9kg/m²、50~69歳で20.0~24.9kg/m²、70歳以上で21.5~24.9kg/m²。

高齢になるほど、フレイル予防のために痩せないことです。

この範囲内で、本人が「調子がいい」と思える体重、活動的に過ごせる体重が健康な状態です。

どれだけエネルギーをとっていようと、適正体重だったら問題ないと考えてよいでしょう。

取材・文/及川夕子